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自分が死んだらペットに相続させる「負担付遺贈」とは?

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更新日:2021年03月10日
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ペットに相続させるという選択肢はあるのか?

人と人であれば、遺産として財産を相続させることができます。しかし、人間ではないペットではどうでしょうか。

普通の相続というやり方では、そもそもペットに相続権がないので、遺産を個別に残すのは大変厳しいと言わざる負えないですね。

世間一般のイメージでも、ほとんどの方はペットに遺産相続なんて無理、と答えるのではないでしょうか。ですが、負担付遺贈という方法を取れば、家族同然に可愛がっているペットにも相続させることができます。

身寄りもない状況で唯一ペットだけが傍にいてくれたという境遇の方は、特に何としても遺産を残してあげたいと考えるはずです。自分の死後にペットの世話はどうなるのか、どんな環境で過ごすことになるのかなど、気になる点がたくさんあると思います。

そこで今回は負担付贈与でどのようにペットへ相続させる事ができるのかなど、気になる点をまとめてみました。場合によっては、遺産のみならず、ペットの世話まで死後に遺産として融通することができるので、飼い主の方必見の内容です。

負担付贈与とは、相続の一つの方法

そもそも負担付贈与とは、簡単に言ってしまえば遺言です。

遺贈=遺言のことであり、負担付と言葉が付いているように、条件付きで遺贈しますよ、ということになります。

よくある遺言のイメージでは、誰々にいくらを相続させるという文面が書いてありますね。そこに財産を残す代わりにペットの世話を見る、費用を出すという文言を盛り込むのです。

ある意味取引を行うような形で、ペットの世話を確約させる方法になります。

負担付贈与を受け取る人物を受遺者と言います。この人物が被相続人=亡くなった飼い主の死後、今後のペットの飼い主になる契約と捉えても良いかもしれません。

ただし、受遺者が遺贈の内容を承諾し、相続をしたとしても履行しなければならない範囲には限界が有ります。義務と置き換えると分かりやすいでしょうか。

例えば、ペットを世話をするという文言が盛り込まれた負担付遺贈で100万円の遺贈を受け取った際には、ペットを100万円以内の経費。費用が掛かる程度に世話しなければなりません。しかし、逆を言えば100万円を超えての世話は、法律上しなくてもよいということになります。

つまり、相続遺産の範囲以上に世話を見てもらうというのは、厳しい場合があるので、注意が必要です。

自分の死後にペットを快適に暮らさせるためには

それでは、相続面で自分の死後にペットを快適に暮らさせるためにはどのようにすれば良いのでしょうか。

生前に取れる方法としておすすめしたいのが、贈与を利用してペットと受遺者共に徐々に馴らす方法です。

両者が普段から接するような環境、お世話をしているのであれば良いですが、相続となって急に受け渡されたのでは、両者共にびっくりしてしまいます。当然、世話や扱いも慣れないですし。ペットにストレスも掛かってしまいます。

言ってしまえば、お試しとして、贈与としていくらかお金を渡し、数週間など面倒を見てもらうということです。こうしておけば負担付遺贈を行う際も安心できるかのではないでしょうか。

贈与は、年間110万円以内であれば、基礎控除額として贈与税は掛からないので、基礎控除額の範囲内で贈与をし、馴らすと良いと思います。また、そうすることでどれだけ受遺者にお金を残せば、どれくらいの世話をしてもらえるのかという目安も付けやすくなります。

被相続人=ペットの飼い主の方も普段から預けているのであれば、安心して遺贈できるというものです。

負担付贈与では、3つの注意点

最後に負担付贈与で気を付けておきたい3つの要素を紹介いたします。

注)1 完全な拘束力はない

まず、負担付贈与とは、あくまで被相続人の一方的な意思表示であり、完全な拘束力はないという点です。つまり、受遺者の方が内容に不服があり、相続したくないと放棄してしまえばそれまでということになります。

必ずしも遺言書に相続に伴うペットの世話を文言として盛り込んだからと言って、履行されるものではないという点に留意しましょう。このためにも普段から贈与をし、預けて馴らしておくという信頼と実績作りが大切です。

注)2 範囲以上の世話をしてもらうのは難しい

次に相続遺産の範囲(遺産額)以上に世話を見てもらうということは難しいという点です。例は他でも触れさせていただきましたので、割愛しますが、酷なことを言えば受遺者は本来の飼い主にはなり得ません。

被相続人本人が可愛がり、家族同然のように接していたとしても、相続人も同じ愛情を持つとは限らないのです。つまり、お金の切れ目が縁の切れ目になってしまわないように潤沢な内容の負担付遺贈が必要になります。

最低限の餌代、諸費用だけではなく、自分の代わりに世話をしてもらうことへのお礼としていくらかの心積もりを上乗せするなどです。そうしたプラスαがあれば、人の心情としては、ペットを存外に扱うということもし辛くなるのではないでしょうか。

注)3 他の家族や相続人を忘れてはいけない

そして、3つ目は、被相続人と受遺者の間でのみ完結するものではないということです。

負担付遺贈は、相続の一部であると説明しましたが、当然、他の相続人がいる場合も十分考えられます。基本的には法律上でも相続人への相続割合が高いはずです。そこを無視して、受遺者にすべての財産を譲るという遺言書は考慮されるものの、他の相続人には遺留分減殺請求などの権利もございますので、ほぼその通りに履行されない事でしょう。

分かりやすく言うと、法律で規定されている相続人(主に血縁者)への取り分とは別に、負担的遺贈を設定するというのが好ましいということです。

ペットの可愛さ故に無茶な内容を盛り込むことは、逆に悪影響を後々に及ぼしてしまう可能性があります。できれば相続人と受遺者の双方に許諾を得て相続内容などを決めると良いのではないでしょうか。

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相続相談弁護士ガイド 編集部

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