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【弁護士監修】ペットの相続について、生前対策やトラブルなどの具体例有り

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年04月03日
ペットの相続について、生前対策やトラブルなどの具体例有りのアイキャッチ

自分が亡くなった後のペットの行方に関して心配になる人も多いのではないでしょうか。
今回は、ペットの相続に焦点を当て、実際にあった相談事例と共にお伝えしていきます。

家族同様に暮らしているペットと相続について考えてみました

私達夫婦には子供がいませんでした。
長年連れ添った夫にも、昨年先立たれました。

そんな私達には、子供の変わりにペットの犬、猫、亀3匹の家族がいます。
夫を亡くし生活に支障が出るほど酷く落ち込んでいましたが、友人や親戚との交流や、ペット達のおかげで今は落ち着くことが出来ました。

正直、夫の後を追っかけたいとまで思っていた自分がいましたが、そんな時に、ペット達の存在が私を救ってくれたのだと思います。

さて、自分の時間が増えたため、自分の死後、ペット達の将来について考える様になりました。私も高齢者であり何時何があるか分かりません。

私には、相続人となる兄弟もいませんし両親は既に他界しております。その他の親戚や友人はいますが、ペットの面倒を頼むのは迷惑でしょうし、本当にその方がきちんと面倒をみてくれるのかも分かりません。

外国のニュースでは、ペットに財産を相続させたなんて言う話を思い出したりしますが、日本でもそんなことが出来るのでしょうか?

ペットと一緒に余生を楽しみはじめたところではありますが、この子達の将来を考えると不安にもなってきました。

ペットに相続させることは可能か

結果から申し上げると、ペットに財産を残すことは、残念ながらできません。
ペットは、法律上、権利義務の主体となれないからです。

ですから、日本ではペット名義の銀行口座を作ることができませんし、ペットが現金や不動産を管理することはできません。そのため、自分名義の口座に「ペットのための食費や病院代など」として積み立てをしていたとしても、相続財産として相続人に、それぞれの取り分ずつ分割されて相続されることになります。

仮に、ペットに財産の全部または一部を相続させるというような遺言を作成していたとしても、その遺言は法律上の効果を生じません。
ですから、上記以外の何か対策や方法を考えなければならないことになります。

残されたペットはどうなっちゃうの?

一般的に、自分の死後のペットのお世話については、相続人等の親族か、親しい他人(友人・知人等)などに頼まれている方がほとんどです。

しかし、口約束だけではきちんと面倒をみてくれるのか、正直不安だと言う方も多くいらっしゃいます。この場合の対策として、下記の4つの方法などが考えられます。

①死後の事務委任契約を締結する

相談者の信頼できる人A氏にペットの世話を委託する方法があります。
その際には、事務委任契約を結ぶようにしましょう。
お世話をお願いする相談者が委任者、お願いを受ける人A氏が受任者とて下記の様な委任契約を締結します。契約内容の一例を紹介します。

  1. 相談者のペットの飼育事務を相談者が委託し、A氏がこれを受託した。
  2. A氏はその生涯にわたり、誠意を持って飼育しなければならない。
  3. 費用の支払等については、契約時に上記事務を行う際の費用として現金◯◯万円を受任者に預託し、受任者はこれを受領した。
  4. 委任者は、本契約の報酬として、受任者に対して現金◯◯万円を支払い、受任者はこれを受領した。

上記のような、委任契約を生前に書面で結ぶ方法があります。

②負担付遺贈

財産を遺贈する代わりにペットの世話をみてもらいたい内容の遺言を残す方法です(民法1002条)。

「ペットのお世話をお願い致します」だけでは、受遺者(遺産をもらいペットのお世話をしてくれる人)は何をどのようにすべきか分かりません。例えば食事の回数や種類、持病のこと、散歩の回数、予防接種等について具体的な指示を伝えることが大切でしょう。

しかし、遺言は遺言者の一方的意思表示(単独行為)であり、負担付遺贈の受遺者は必ず負担付遺贈を受け入れなければならないわけではありませんので注意が必要です。
例えば、「ペットの面倒はみることができないので、財産も受け取りません」というように、負担付遺言を拒否することもできます。

ですから、遺言者は、受遺者の同意を得る必要はありませんが、死後の事務委任を円滑にやってもらうためにも、受遺者がペットの面倒をみてくれるかどうかについて、事前に意思確認をしたうえで、同意を得たうえで遺言を作成することをお勧めします。

また、遺言書に指定された人が贈与された財産のみを受け取り、遺言書の内容通りにペットのお世話をしてくれないかもしれません。そのため、受遺者が、ペッ トのお世話をみてくれるように、遺言執行者を遺言で指定し、遺言執行者により受遺者がペットの面倒をきちんとしているかチェックさせるようにしておくことも大切でしょう(民法1006条)。

③負担付死因贈与

親族や第三者など世話をしていただく人との間で、もし自分が死んだら、ペットの世話をしてもらう代わりに財産を贈与するという契約をする方法です(民法553条、554条)。

死因贈与は、委託者(ペットに遺産を遺す飼い主)の死亡によって効力を生ずる贈与です。負担付死因贈与は相手方との契約ですから双方でよく話し合い、ペットの世話をする方法について納得のいく内容を取り決めることができます。双方の合意があって初めて成り立つものですから、相手の承諾が得られるなら遺言よりも確実なものとも言えるでしょう。

この場合、合意内容について上記で説明した委任契約と同様に、書面にしておくことが重要です。また、負担付死因贈与は、双方の合意に基づく契約ですから、原則として取消しや一方的な破棄はできません。

負担付死因贈与契約の場合も、本人の死後、受贈者が財産だけもらって飼い主の期待に沿うペットの面倒を見てくれないという危険性がありますので、執行者を負担付死因贈与契約に明記して、ペットの飼育がきちんと行われているか、信頼できる執行者にチェックしてもらえるようにすることが大切です。
(※死因贈与ではなく生前に負担付贈与契約を結ぶ方法もあります。)

④信託制度の利用

信託とは、委託者が信託行為(例えば、信託契約、遺言等)により、その信頼できる人(委託者)に対して財産を譲渡し、受託者は委託者が設定した信託目的にしたがって受益者のために、その財産(信託財産)の管理・処分する制度です(信託法2条1項)。

本件では、自分の遺産をペットに活用する方法として、この信託制度を利用する方法があります。ペットに遺産を残したいと考えている相談者が委託者となり、受託者(信託銀行など)に自分の代わりに財産を預け、ペットのために遺産を管理・運用・処分してもらうことが可能です。

実際には、受託者である信託銀行等が世話をするわけではなく、通常は遺言の中でペットのお世話をしてもらう人(受益者である世話人)を指定しておきます。指定を受けた世話人は、信託銀行等からペットのエサ代等飼育に関する費用や報酬を定期的にもらうことにより、ペットの世話を確実にさせる方法です。

世話人の飼養が適切かチェックを行い、信託を確実に履行するために、信頼できる第三者を信託監督人として置くことも可能で、動物愛護団体などを信託監督人に指定するなどの例もあります。

その他、目的信託といって、受益者を定めず、ペットの飼養と残った遺産の使用目的を定める信託を設定する方法もあります。この場合、委託者が、ペットを世話する人を直接指定するのではなく、信託管理人を指定して、信託管理人に誰にペットの飼養を依頼するのかを一任することになります。

その点、信託の場合は、きちんとペットの世話をしているかどうかという監視もありますし、信託したお金は相続財産ではないのでトラブルが起き難いこともあり、きちんとペットのために使われるという点がメリットと考えます。

その他

親族や友人などに頼むことが出来ない方は、例えば動物病院、犬舎、ブリーダーなどでは、迷子や捨て犬猫だけでなく、主人を亡くしたペットの情報を善意で収集し、次の飼い主探しを積極的に行っているところもありますので相談してみましょう。その他、同じペットを飼っている方などのネットワークから主人を亡くしたペットについて信頼して任せられる法人や個人の情報を得ることも重要でしょう。

どの様な対策をとるにしても、ペットに関する情報をまとめて残しておくことが必要です。
(例)鑑札(番号・登録など)、通院歴、病歴、予防接種歴・証明、食事の回数や種類(好き嫌い・アレルギー)、保険についての詳細・資料、血統書、かかりつけの動物病院の情報、散歩の回数、トリミング等。

特に飼育条件などが特殊なペットになればなるほど、事前にこういった情報を集めることや残しておくことが大切です。

最後に

日本ではペットに財産を直接相続させることは出来ません。ペットのためにもしっかりとした対策をしておくことが重要となります。
そのためには、きちんとした書面・遺言の作成などが必要になってきますので、ペットのためにも専門家に相談することも大切かと思料します。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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