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経営権の円滑な承継をバックアップする有楽町の弁護士先生に注意すべき点を聞いてみた

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更新日:2019年07月26日
経営権の円滑な承継をバックアップする有楽町の弁護士先生に注意すべき点を聞いてみたのアイキャッチ


これからはCSR推進により中小企業の企業価値を高めることが大切という湊弁護士

 

湊総合法律事務所 湊信明弁護士
反社勢力がからむ10数億円規模の困難な交渉事件を解決。信頼を得て成長し有楽町の事務所に根を下ろす。東京弁護士会の副会長の他、多数の講演などの経験がある、湊総合法律事務所の湊信明弁護士にインタビュー

CSRの一環として、経営権の円滑な承継・相続スキームを組むことで会社の企業価値を高めることが重要であるという湊弁護士。その経験を含めインタビューをさせていただきました。
た。

 

湊総合法律事務所に関して

湊総合法律事務所 湊信明弁護士

---湊総合法律事務所を有楽町で設立した経緯を教えてください

独立する前、私はアクト法律事務所という事務所でパートナー弁護士をしておりました。
この事務所には大変お世話になりましたし、何の不満もありませんでしたが、企業法務を中心とする事務所を立ち上げてみたいなという気持ちがあり、独立をしました。
独立したときは、新宿の四谷二丁目に事務所を構えました。

それまでの経験の中で、日本では中小企業に対するリーガルサービスがまだまだ行き届いていないということを実感していました。
当時、先輩弁護士からは、「弁護士業界は、今はもう過当競争だよ」なんて言われていたんですが、全然そんなことはないなと思っていました。顧問弁護士がついていない中小企業は、東京都内にもたくさんあるということを肌感覚としてわかっていました。

四谷で独立した当時は、自分でできる限りの名刺を持って、事務所付近の半径500メートルぐらいにある会社をまわって、「設立しましたよ」って挨拶をしに行ったんです。多くの会社さんは受付の方が名刺だけ受け取って、追い返されたのですが、会って話してくれた会社は、大半が顧問弁護士はいなかったんです。その状況は今もそんなに変わっていないと感じています。
それから、四谷の事務所では、地方のクライアントの方から、やっぱり東京駅に近い方がありがたいとか、駐車場がなくて不便だとかご意見をいただいておりました。

また、ありがたいことに、開業後間もなく、本当にたくさんのご依頼をいただくようになり、四谷の事務所は20坪しかなかったこともあってすぐ手狭になってしまったので、どうせ移るんだったらもっと交通至便なところでいろんな方が集まれるところがいいなと、銀座にも近いのでアフター5も最高だということで(笑)、有楽町にしたということです。

---今、この湊総合法律事務所を設立して何年ぐらいでしょうか?

15年になります。

---先生の中で苦労話というのは、何かありますか

仕事で大変な思いをしたというのはありますね。
仕事で一番大変だったのは何かって言うと、まだ開業間もないころ、私が大変お世話になっていた方から、「折り入って」ということで連絡があり、「自分の知り合いが、老人ホーム関係の会社で働いていて、老人ホーム立ち上げのために取得した不動産のことでとても困っている。」ということで私を紹介してくれたんです。

話しを聞いてみると、ある地方の企業経営者が、これからは高齢化社会になっていくからということで、老人ホームを作るために東京に進出して、都内の物件を10億円で購入したらしいのです。ところが、この物件の売主の背後では、反社会的勢力が入り乱れて、それぞれ支配権争いをしていたのです。

この経営者は、きちんとした法人から購入したと思って安心していたのですが、支配権争いをしている他の反社勢力から、巧妙な理由を突きつけられて、土地の売買契約は無効であると主張されて大混乱に陥ってしまったのです。

払ったお金は持って行かれてしまっているし、「もう一回10億円払うんだったらいいけど、払わないんだったらこの土地は引き渡さないよ」っていう話になってしまって、銀行からも「こんな取り引きに巻き込まれて」って、融資とかも引き揚げられてしまって本当に大変な事になってしまったんです。
私は、当時、一人で事務所を経営していたので、代理人は私のみで、私自身も反社会勢力の人たちからいろいろ妨害を受けましたし、新聞記者からも付け回されたりしました。

私は、弁護士会で業務妨害対策委員会の活動をしておりまして、今でしたら、こうした事件は決して一人で受けるようなことはせず、複数の事務所で受任すると心得ているのですが、当時は、一人で解決しなければと意気込んでいて、1人だけで寝る暇もなく、猛烈にたくさんの書類を全部自分で作って、睡眠をほとんど取る時間なんてない状態でした。反社対応がからむ複雑でマンパワーが必要な事件と、その他のたくさんの事件をすべて自分で解決していくということは本当に大変でした。
その大変な期間は、1年半ぐらいは掛かったと思います。

でも今から思うと、その期間が、私の事務所が大きくなる大きな転機だったと思います。

---その転機の細かい理由を教えてください

この反社が絡む不動産事件は、私に依頼する前に、複数の弁護士に依頼を打診していたらしいのですが、みんな「こんなアブナイ事件は自分にはできない。」と言って、受任を拒否するか、受任してもすぐに辞められてしまったらしいのです。そんなことは、私がもう引くに引けなくなってから依頼者の経営者から聞かされて、驚いたことがありました。

でも、この不動産には、今は反社勢力が巣くっているけれども、これが解決できれば後々は老人ホームが建つのです。ですから、解決するまでの間には、地域住民、大手建設会社、行政関係者、金融機関などなど、本当にたくさんの関係者にお会いすることになりました。そのお一人お一人が、私がどのようにこの事件を解決するのかを注視していると感じました。

はじめは、私よりもずっと先輩の弁護士が受任もせず、あるいは撤退した事件を、「あんな若造の弁護士ができるのか?」、「どうせまた駄目に決まっている。」と思っていたのだと思いますが、いろいろな方々の協力をいただきながら、徐々に徐々に解決方向への向かうにつれて、大きな期待に変わっていったのを今でも覚えています。

---10億円の不動産事件は解決できたのですか?

はい。反社勢力は撤退し、きれいな土地になり、老人ホームも建設できました。
今も、その経営者が立派にこのホームを経営しています。

この事件を解決することができたのは、私だけの力ではなくて、さまざまな方々の協力があったからです。それでも、解決直後から、建設会社とか、不動産会社、不動産問題で困っている企業や個人などから、ウワーッと想像を絶するほどの事件の依頼が来て大変でした。
それが、また1人で大変だったっていう・・・(笑)
あまりに大変だったので、勤務弁護士をどんどん採用して、事務所も一気に拡大することになり・・・、そんなこともあって、有楽町に移ってきたんです。

---事案の構成比率としては企業法務中心ですか?

意図的に企業法務は75~80パーセントぐらいにして、一般民事も必ず受任するようにしています。

---リスクヘッジも含めてなんですか?

いえ、違います。
私の事務所には、現在、10名の勤務弁護士がいます。弁護士として育っていく上で、企業法務だけをやっていたのではいけないと思うのです。

企業法務専門の事務所の中には、いわゆる一般民事事件は受けないというところもありますが、やはり弁護士の基本は、一般民事にあって、そういう事件を汗みどろになって解決していった経験を積むということが大事だと思うのです。「離婚事件で、こんなことになっているけどどうやったらいいの?」とか、「交通事故事件で、保険会社との交渉はどうやるの?」とか、「消費者事件になって、こんな大変な人たちをどうやって救済するの?」っていうことが、それぞれ弁護士になって5年間ぐらいの間に全部経験することって、弁護士の一生として凄く大事なことだと思うんです。

専門性を磨きたいという人たちもたくさんいるし、それはそれで間違ってはないと思いますが、やっぱり市民社会で発生している事件についてはちゃんと解決できるようになっていないと、いくら専門性を磨いたって、ダメなのではないかなぁと思ってしまうんです。

だから、私は、弁護士になって少なくとも最初の5年間は全てのことをやるべきだと思うんです。

それから、もう一つ理由があります。私たちの事務所では、企業の顧問がたくさんあるのですが、企業顧問をしていると、社長や役員、従業員とその家族の個人的な相談を受けることがよくあるんです。その時にちゃんと回答できるということが、非常に大切なリーガルサービスだと思うのです。
だから、企業法務以外の案件も、25パーセントぐらいは常に受任するようにして、きちんとした品質の仕事ができるようにしたいと思っているのです。

---現在、どれぐらい中小企業の顧問先があるのですか?

湊総合法律事務所 湊信明弁護士

今、顧問先は190数社です。
業種は様々で、不動産会社、飲食、学校法人、病院、金融機関、IT系のプロバイダー、建設会社とかが多いのと、それに最近のトレンドとしては、新電力関係の会社からの依頼もいただいております。そのほかにも、広告会社、建築士事務所、宗教団体など様々あります。

---企業法務中心の相談の特徴で増えてきているものはありしますか?

リーガルチェックと債権の回収は通常通りだと思いますけれども、やっぱり雇用問題など人が関わる仕事が増えていると思います。問題社員対策もありますし、残業代の請求を受けたとか、最近はパワハラ等のメンタルヘルス関係の相談は非常に多いです。

最近の電通事件にも見られますように、法改正が行われ、海外からの影響などもあって、労働者の権利意識が向上し、働き方も変化してきているなど、社会そのものが変わってきている中で、経営者サイドのほうに対応の遅れがあって、問題化しているケースも見受けられるように思えます。

特に中小企業の経営者の意識のほうが、まだまだ追いついていない部分があるので、経営者の皆さまに状況をよくご説明して、会社をどうやっていい状態に持って行くか、そういうお手伝いをさせていただく仕事が増えているように思います。

湊信明弁護士先生に関して

湊総合法律事務所 湊信明弁護士

---弁護士を志した理由は何だったのでしょうか?

私の父が、私が14歳の時に医療事故の疑いで亡くなったというのがきっかけとなっています。
父は、事故で病院に運び込まれたのですが、当時は、CTもMRIもない時代で、血管に造影剤を注入して撮影する手法が採られていました。当時も造影剤のミスによる事故っていうのは結構多発していて、私の父も造影剤の事故で亡くなったことが強く疑われるのです。

私は、当時は中学2年生で、母も私もどうしたら良いかわかりませんでした。母はどのような書面かも理解しないままに病院側から示された書類にサインをとられて、証拠もなにも残らない状態になって遺体が戻されてきたような状況でした。今では考えられませんけれども、当時はそんな時代だったんだと思います。

ちょうどそのころ、テレビで田宮二郎が主演をしていた「白い巨塔」という番組を見ました。医療事故を題材とするドラマだったのですが、少し前に亡くなられた児玉清が、被害者側の弁護士役をやっていまして、大学病院に対して証拠保全という手続を行って病院から証拠関係を引き出させることができるということを知りました。

あれを見て、「ああ、大学病院に対しても、法律の手続を使うと、証拠を出させることができるんだ!」、「法律って凄いものだな~」と素直に感じたんです。

当時、自分は中学生で無力でしたし、相手は凄く大きい病院だったので、まさにあんな白い巨塔に太刀打ちなんかできないなと思っていたんだけれども、きちんとした書類を整理して裁判所に提出すれば、裁判所が病院の証拠を保全して裁判を進めることができるのかと、非常に感銘しました。

私はそのドラマを見るまでは、父の死に接して、医者になろうかなと思っていたんですけど、そうではなくて弁護士の立場から、患者を守る、あるいは医療を良くする仕事をしてみたいと感ずるようになりました。
そうしたことが、私が弁護士になろうと思った原点になっていると思います。

---ご自身の中で大切にされていることは?

依頼者に寄り添いつつ事件を解決していくということです。

---それは依頼者ファーストということですか?

だいたい同じなんですが、ちょっと違います。
依頼者は、依頼される当初は、孤独だったり、追い込まれたりしていて、救済しなければならない状況にありますから、私たちが、依頼者の利益を第一に考えて行動するというのは当然のことです。ですから、そういう意味で依頼者ファーストということにはまったく異論はありません。

ですが、依頼者ファーストという言葉の中には、どうしても「依頼者がよければそれで良い。」というようなニュアンスを含むように思うので、それがちょっと違うかなと思うのです。

事件の中には、依頼者の方にも問題があって、それが原因で事件が発生しているとか、悪い方向に進んでいるなんてことが結構あるんです。依頼者が間違っているのに、依頼者ファーストを貫くなんてことは許されませんよね。そういうものは絶対に正さなければいけないんです。

---では先生の言う「依頼者に寄り添う」とは?

まず、依頼者が、他人から被害に遭っていたり、不当な扱いを受けていたりするときは、依頼者の被害回復を図り、また、防波堤となって励まして、問題に立ち向かえるようにすること、それが第一です。

しかし、問題が発生したときに、全部が全部、相手が悪いかというと、そうでもないことがあります。むしろ、その原因を作っているのは、依頼者本人だったりすることがあります。
でも、依頼者は、自分に原因があることに気が付いていなくて、自分が正しいと思っていることがあるのです。そういうときに、弁護士が、あたまから、「あなた、間違ってますよ。」と言ってしまったら、依頼者は、非常に落ち込むか、逆に、弁護士に対して、「あんたは、なんで、私の状況を理解できないんだ!それでも弁護士か!!」と怒りをぶちまけられることになります。

弁護士としては正しいことを言っているのですが、依頼者にそれを理解していただけないときは、かえって事件を混乱させてしまったり、解決から遠ざからせてしまうということがあるんです。

----依頼者に間違っている部分があるときはどうするのですか?

依頼者のほうにも問題があって事件が発生しているのに、依頼者がそのことに気が付いていないという場合、依頼者は、依頼者なりの判断基準というか判断構造を持っていて、それに基づいて、自分の正当性を基礎づけています。
ですから、その依頼者の頭と心の中にある、依頼者なりの判断基準、判断構造に変革をもたらさない限り、依頼者が自分の判断や行動の誤りに気が付くということはありません。
弁護士の役割は、その判断基準、判断構造を変革していく過程にかかわっていくことなんです。

それは一瞬でできることではなくて、依頼者とのかかわりの時間をしっかりともって、相当な時間をかけて、一緒に歩んでいくしかないんです。
相手方と交渉し、調停を行い、訴訟を行っていく過程の中で、依頼者とさまざまな対話を行い、交流し、相手方から示された主張や証拠を一緒に分析し、対応していく中で、徐々に、少しずつ、依頼者に気づきをもってもらえる機会を作っていくことが大事だと思っています。
それが私がいう「依頼者に寄り添う」ということです。

----依頼者に寄り添っていく上で大切なことは何ですか?

弁護士は、依頼者にアドバイスや助言をする前に、依頼者の痛みに「共感すること」です。

依頼者は、痛みがあるから弁護士のところにいらっしゃってますので、何が痛みなのかということを共感しないと、絶対に弁護士は依頼者から信頼していただけません。

ですから、私は、自分の痛みを弁護士がしっかりと理解してくれていると、依頼者に認識してもらえない限り、弁護士は軽はずみなアドバイスはしてはいけないと思っています。依頼者の問題点を指摘するときは、その前に必ず、依頼者の痛みを共感し、そのことを依頼者に理解していただくことが不可欠なのです。その段階を経てはじめて、「この弁護士は、自分の苦しみを理解してくれているのに、それでも、自分の問題点を指摘しようとしているのか。もしかしたら自分にも問題があったのかもしれないな。」と、自分の判断基準や判断構造の変革をし始めてくれることになるんです。

弁護士が、依頼者の痛みに共感し、共有して、ともに歩んでいくこと、それが寄り添うということで、それこそが依頼者ファーストなのではないかと思います。

---企業がトラブルを起こさないようにするにはどうしたら良いと思いますか?

CSR、つまり企業の社会的責任をしっかりと理解して、自社の利害関係者(ステークホルダー)が誰なのかを分析し、ステークホルダーに「貢献をすること」を第一課題として、そのことを通じて企業価値を高める努力をすることが大切なのではないかなと思っています。

CSRというと、「木を植えましょう」、「学校を建てましょう」、「発展途上国の子供たちを支援しましょう」、「難民支援をしましょう」などということをイメージしますよね。それはとても大切なことで、そういうことに取り組んでいる企業というのは本当に素晴らしいと思います。もっと中小企業も含めて企業がそういうことをやらなければいけないと思います。

でも、それも大事だけれども、各企業は、もっと自社の足元を見つめて、日ごろ密接に関係している利害関係者(ステークホルダー)に貢献することを考えるべきではないか?というのが、私たちの事務所の考え方なんです。

いま、CSRの世界的標準として、ISO26000というものが定められています。これは通常のISOとは異なって拘束性のあるものではなく、ガイドラインなのですが、中小企業が経営を考える際にも非常に有益な考え方です。
---他の出版社からも取材を受けている、企業の社会的責任ISO26000とは?

湊総合法律事務所 湊信明弁護士

ISO(国際標準化機構:本部ジュネーブ)が2010年11月1日に発行した、組織の社会的責任に関する国際規格のことです。ISO26000では、組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者に関する課題、コミュニティ参画および発展という、7つの中核課題を定めています。

環境問題が据えられていることはもちろんですが、ここで注目していただきたいことは、労働問題とか、消費者課題とか、取引先といった、自分の会社の礎となっている利害関係人(ステークホルダー)の問題がCSRの課題とされているということです。

つまり、自分の会社で働いてくれている従業員に対して、自分の会社の製品やサービスを購入してくれている消費者に対して、自社の製品の製造やサービスの提供にあたって契約を締結している取引先に対して、自社が抱えている課題を分析して、それを解決して、これらの利害関係者(ステークホルダー)に貢献していくということが求められているということです。

---CSRを重視する経営をするとどうしてトラブルが減り、企業価値が高まるのですか?

まず、当然のことですが、従業員を守っていくには、労働基準法その他の労働法制を遵守しなければなりません。消費者に対しては、消費者契約法、特商法等の法律を遵守しなければなりませんし、取引先に対して、会社法、下請法等の法律を守っていかなければなりません。
CSR経営をしていくということは、第一に、自社の利害関係者(ステークホルダー)と密接にかかわる法律を遵守することが基本となります。

ですから、会社経営の主軸にCSR経営を目指すということを据えれば、自ずと法律を遵守した経営をすることになります。したがって、トラブルが減るということにつながってくるわけです。

---なるほど。では企業価値が高まるというのは?

CSRの基本は、単に法律を守るということだけではありません。それを超えて、「利害関係者(ステークホルダー)に対していかに貢献するか」ということにもっとも重要な価値があります。

たとえば、近時の若者たちは、企業に対して、自分の出世などよりも、残業が少ないことや、福利厚生の充実を求める傾向が強いらしいのです。そうだとすると、自分の会社が、サービス残業を強いるような会社、つまりブラック企業というのでは、若い人たちは、絶対にそんな企業の採用に応募することはしないでしょう。

企業は、労働基準法などの法律を守ることは当然のこととして、さらに、福利厚生を充実させたり、従業員のライフスタイルに合った働き方を工夫したりしていくことにより、若くて優秀な社員に入社してもらえることになっていくわけです。若くて優秀な社員が集まる会社と、ブラックで誰も寄りつかない会社とでは、その企業価値に差があるのは当然のことです。
ですから、CSR経営に力を入れていくことにより、企業価値が高まることになっていくわけです。

---相続ではどんな場面がCSRと関係してくるのですか?

湊総合法律事務所 湊信明弁護士

それはとても良い質問だと思います。

私は、経営権の相続についても、企業のCSRとしても非常に重要だと考えています。
中小企業の経営者の中で、事業承継についてしっかりとした対策を講じているという人は、実はとても少ないんです。事業承継対策をしているとしても、相続税をいかに減らすかということばかりに関心があって、自分の経営権の承継により、企業の利害関係者(ステークホルダー)にいかなる影響があるかというようなことには関心を払っていないということがほとんどです。

しかし、円滑に事業承継が行われ、経営権の相続が行われないと、困るのは、その会社で働いている従業員です。また、永年にわたって取引をしてきた取引先にも重大な影響を与えることになるでしょう。

企業経営者は、会社という社会の公器を扱う以上、自分や家族の利益のみを考えるのではなく、事業承継・経営権の相続の際に、自社をとりまく利害関係者(ステークホルダー)にいかなる影響があるかを分析し、どのような貢献をすることができるのかをよく考える必要があると思います。

---そういった経営者にはどのようなアドバイスをするのですか?

たとえば、経営者の方から遺言書作成のご依頼をいただいたときにも、単に、経営者の方の相続人のことをお聞きするのではなく、後日、その経営者がお亡くなりになって、遺言が執行されることにより、自分の会社の従業員や、取引先にどのような影響があるか、ということを経営者の方と一緒に具体的に考えて作成するようにしています。

---要は、自分の家族とか、そういったところだけを考える承継ではなく、会社をとりまく関係者のことも考えていかないと駄目という事ですね。

そうです。
2代目に承継させていくときには、できる限り、株式を散逸させずに、2代目経営者に集中させることが重要なのですが、単に株式の承継だけを考えてしてしまうと、例えば、その経営者の長男が大企業に行っていたような場合に、その大企業を辞めさせて落下傘的にポッと自社に入社させてしまうと、その長男が取引先をすぐ切って他のところに切り替えてしまったり、従業員との間で問題を起こしたりということになってしまうことがあるのです。

ですから、事業の承継・経営権の相続を考えていくときには、株式の承継のみならず、承継する者に、会社の利害関係者(ステークホルダ-)が誰で、それに対して、会社がどのような社会的責任を負っていて、具体的にどのような貢献をしていくことが求められているのかということをしっかりと理解させていくというステップが必要となるのです。

---単に数字やルールよりもマインドの承継だっていうところが強いと

そうです、その両方。

---東京弁護士会の副会長・講演などの経験があり、合間を縫って業務をされている?

私は合間を縫っているという気持ちは全くなくて、その弁護士会の仕事がものすごく重要だと思うからやっているんです。

私は、社会のなかでトラブルの発生を未然に防ぎ、あるいは発生したトラブルを解決していく上で、弁護士や弁護士会が果たす役割は非常に重要だと思っているのですが、そのことが市民の皆さまに十分に浸透していないので、そのことをいち早く改善する必要があると思っています。そして、そのためには、私個人の力だけではどうしようもないので、弁護士会という組織を動かして改善していく必要があると思っています。

そういう趣旨で、私は、弁護士会の活動に携わるということは、仕事の合間を縫ってというより、本業と同様に重要なことだと考えているのです。

---そんなに弁護士や弁護士会のことが知られていないのですか?

たとえば、市民の方で、法律相談センターを利用した経験がある人って日本の人口の中の1.6パーセント、法律事務所に相談をした経験のある人も6パーセントに過ぎず、将来、法律事務所に相談するかもしれないと思っている人でも13パーセントに過ぎないという数字があります。残りの80数パーセントは弁護士会の法律相談センターも、弁護士も利用する気がまったくないということになります。

ちょっと前ですが2008年か2009年に日弁連で中小企業全国調査というものをやったんです。
その中で、企業経営者のなかで、弁護士を利用した経験のある人が東京でも49.9パーセントで、半分が利用したことがないんです。また、法律問題だということを認識している企業の経営者が相談している先は、56パーセントが税理士に、31パーセントが社会保険労務士に相談していて、弁護士に法律問題を相談していませんでした。

私たちが業務を行っていると、なんでこんなにも問題が大きくなるまで相談に来なかったんだろうと疑問に思ってしまうような案件が多々あります。
それは、確かに一面においてはその方本人の自己責任なのではありますけれども、もう一面において、私たち弁護士や弁護士会が、市民の皆さまに対して、弁護士や弁護士会に、どのような問題をいつどのように相談し、利用すれば良いかという啓蒙活動を行ってこなかったことが原因であると思うのです。だから、弁護士会が一丸となってそうした啓蒙活動を展開していくということが大事だと思うのです。

---これからの先生のビジョンは何ですか?

CSRを経営の主軸においた経営者を強力に支援していきたいと思っています。
そのために、志を同じくする税理士や、会計士、社会保険労務士などの隣接士業の先生方と協働し、ともに強みを活かして、企業支援を展開できたらと考えています。

さらに、中小企業経営者の方々は、銀行や信金から融資を受ける際や、自治体窓口などで、法的な事項を含む相談をされることも多いので、銀行や信金、あるいは自治体とも連携して、中小企業経営者の皆さまに対する法律支援ができるようにしていきたいと考えています。
平成29年4月からは、私は、東京弁護士会の中小企業法律支援センターの本部長代行に就任しましたが、弁護士会をあげてそのような取り組みを展開して行くことができればと願っています。

最後に

湊総合法律事務所 湊信明弁護士

---事務所と設立して15年ということで、振り返って見ていかがでしたか?

あっという間はあっという間ですけどね。
やらなければいけないことばっかりなので、あんまり振り返ったことはありません。
やりたいというか、やらなければいけないことがいっぱいあり過ぎるので、先ほどのCSRの話とか、各企業に対する啓蒙活動はどうするのかとか、そういうことに関心があって、振り返ってどうかという意識はありません。

もっとあーすれば良かったとかということもありますが、後悔先に立たず、考えないようにしています。

---経営権の相続について相談に来られる方へメッセージをお願いします。

相続というのは親から子へどんどん引き継いでいくもので、ゆくゆくは自分の子どもにも伝わっていくことです。

中小企業の経営で言えば、その経営権が先代から自分の代へと、そこには財産的な承継と共にマインドの承継とかいろんなことが絡み合っています。

そして、すでにお話ししましたように、企業経営をするということは、従業員や取引先、消費者など、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)の方々の利益と関係しています。
事業承継・経営権の相続というのは、自分だけの財産を処分するような単純な話しではなく、自分だけのことを考えて解決できるような簡単なものではありません。

自分の人生のことだけだって、ままならないことがたくさんあるのに、これだけたくさんの利害が絡まっている経営権の相続を考えるときには、やはり経営者の皆さまには、早い段階から、自分に寄り添って伴走してくれるアドバイザーを求めていただきたいと思っています。
そのためには、法務面では弁護士、税務面では税理士や会計士が必要になってくると思います。
事業承継に関するご相談にいらっしゃる方は、かなりのお年になられている方が多いのですが、きちんとした承継をしていくには、法的にも税務的にも時間がかかるものです。
また、見落とされがちではあるけれど、とても大切なことである利害関係者(ステークホルダー)に関する貢献を考えての承継についても、時間と労力もかかります。専門知識も必要となります。

ですから、事業承継・経営権の相続を考える際には、遅くとも経営者が50歳になったら、一人で検討するのではなくて、早い内から信頼できる伴走者を見つけて共に走っていただきたいなというように思いますね。

私たちの事務所もそういう存在でありたいと思っています。ご依頼いただけたら何よりうれしく思いますね。

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湊 信明 (東京弁護士会所属 / 湊総合法律事務所)

湊総合法律事務所は各分野において専門性の高い弁護士がチームを組みクライアント様の利益の最大化を目指します。

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