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争族を未然に防ぐ、遺言・遺贈とは?

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2016年10月06日 公開

「相続」をめぐり、親族間で起こる争いを「争族(争続)」と言います。そして、あなた自身の意志を残された家族に伝える手段として、この相続トラブルを未然に防ぐ手段である遺言書に、今、関心が集まっています。

遺言書にはどのような種類があり、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

遺言を残すことの意味

「遺言」とは当人が死んだ後のために、物事を言い残す・伝えることを指します。それを書面化したものを「遺言書」「遺言状」と言い、遺言書を残す人を「遺言人」と言います。

遺言を残さない場合、亡くなった方の遺産の処理は、誰が、どのような割合で、どの資産を相続するのか――など、さまざまな点について相続人同士が協議して決めることになります。しかし、こうした話し合いがスムーズにまとまる保証はどこにもありません。

身内の話し合いで決着がつかない場合、争いは裁判所に持ち込まれることになります。
遺産の処理に関して、最終的な意思を遺言というかたちで残した場合は、その遺言が亡くなった人の最終意思として尊重されます。たとえ、内容に不平不満を持つ者がいたとしても、適正に作成された遺言には法的な効力が伴いますので、原則的には遺言の内容に沿って遺産分割を進めていくことができるのです。

遺言を遺した方が良いケース

遺贈とは?

遺言にはさまざまな利用目的があります。例えば、ある人が長年世話になった長男の妻に財産を分けてやりたい、長年連れ添ったが入籍していない内縁の妻に財産を残してあげたいなどと考えたとします。しかし、長男の妻や内縁の妻は、法律で定められている法定相続人に該当しないため、このようなケースでは特に手を打たなければ、財産を残してあげることはできません。

このような場合、「遺贈」という民法の規定により、遺言で特定の人物に遺産の一部または全部を渡すことが認められています。複数いる子のうち、障害を持つ子により多くの遺産を残したいといった状況などがあった場合、「相続分の指定」というかたちで遺贈を活用するケースもあります。

似ているが異なる「遺贈」と「死因贈与」

「遺贈」は、相手が相続人であるかないかにかかわらず、遺言によって財産譲渡を可能にする行為で、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。一方、「死因贈与」とは、相続人の死亡によって効力が発生する贈与の契約を指し、遺言による必要はありません。

遺贈と死因贈与は、明確な違いはあるものの、被相続人の死亡によって効力が発生するという点で同じです。また、死因贈与は遺言によらない財産の受け渡し方法ですが、贈与者が死亡しているため相続として扱われ、基本的には遺贈に関する規定を準用するとされています(民法554条)。

この似て非なる遺贈と死因贈与について、一つ一つ見ていきましょう。

1.包括遺贈

「財産の○分の○を遺贈する」のように、与える遺産の割合を指定して遺贈する方法です。このとき、指定された割合でプラスの財産(資産)もマイナスの財産(債務)も受け継がなければならないということに注意せねばなりません。

包括的遺贈者は相続人と同じ扱いとなり、遺産分割協議にも参加する必要があります。放棄に関しても同様で、相続と同じく遺贈を放棄することも可能です。その場合、相続人と同様の手続きが必要になります。

2.特定遺贈

「○○不動産を遺贈する」のように、資産を特定して遺贈する方法です。この場合、受遺者は、○○不動産という特定の財産を受け継ぐだけで、マイナスの財産(債務)を負担する必要はありません。

放棄する場合も意思表示をするだけとなります。

3.死因贈与

「死因贈与」は、与える側(遺贈者)の一方的な意思表示である「遺贈」とは異なり、与える側(贈与者)と受け取る側(受贈者)双方の合意が必要な契約であり、贈与者の死亡により効力が発生します。受け取る側は、贈与者の生前に、「私(相続人)が死んだら○○を××に贈与する」といった死因贈与の内容を承諾している必要があるのです。

相続・遺贈・贈与の違いとは?

遺贈も死因贈与も、遺産相続における遺産の渡し方の一つです。以下に一つ一つ整理しておきましょう。

・相続とは?

死亡を原因として、法律で定められた相続人対し、亡くなった方(被相続人)の財産上の権利や義務を、包括的かつ一方的に移転することを言います。

・遺贈とは?

遺言によって遺産の全部または一部を一方的に移転することを言います。そのうち、財産の1/3、1/4などと割合が指定されているものを「包括遺贈」、「この土地を○○さんへ譲る」などと特定の資産を特定の人に指定して譲るものを「特定遺贈」と言います。

遺贈によって財産を与える人を「遺贈者」、財産を与えられる人を「受遺者」と言い、法定相続人であるかどうかは問いません。

・贈与とは?

遺贈や相続が一方的な財産移転であるのに対して、贈与は「○○を差し上げます」のように、贈る側(贈与者)と贈られる側(受贈者)との間でなされる契約です。そのうち、贈与者の死亡が条件となって効力を発揮する贈与が「死亡贈与」です。「遺贈」と類似の扱いとなり、相続税法上、「相続」として扱われます。

遺贈と死因贈与はいずれも、贈与税ではなく相続税の対象となります。その点も注意が必要です。

遺言の種類に関して

遺言といっても、いろいろな方式、種類があります。法律的には大きく分けて、通常の場合に用いられる「普通方式」と、普通方式が困難な場合にも用いられる「特別方式」の2つになります。

普通方式の遺言にも、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があり、遺言者はいずれかの方法で作成しなければなりません。

特別方式の遺言は、遺言者が船上や遭難時、亡くなる寸前などの非常に特殊な状況に置かれたときに作成される方式で、遺言書の作成手続きを簡略化したものといえます。

普通方式

・自筆証書遺言

証人が必要なく、費用もかからず、自分1人で作成できる遺言です。紙とペンと印鑑さえあれば作成できるため、最も簡単な方式と言えます。

その反面、法律のプロが関与しないために方式不備で無効になったり、検認が必要であったり、偽造や改ざん、紛失の恐れが高く、表現にあいまいな箇所があった場合などは、かえってトラブルを招いてしまうなどのデメリットもあります。

パソコンでの作成や代筆は一切認められないので、手が不自由で自筆が不可能である場合には使えません。従って、そのような状況であれば「公正証書遺言」「秘密証書遺言」で作ることになりますので、注意が必要です。

・公正証書遺言

遺言者が口頭で述べた内容を、証人2名以上の立ち会いのもとで作成します。公証人が立ち会うことで、方式の不備や法的な不備を回避でき、偽造や隠ぺいなどのリスクも極めて低くなることがメリットです。

ただし、遺言内容を証人や公証人が知ることになるため、内容を事前に誰にも知られたくない場合には適しません。また、当然ながら費用もかかります。ちなみに、電子文書に対する公証業務なども開始されていますが、2017年5月末現在、公正証書遺言には電子公証制度が認められていません。電子版の公正証書遺言を作ることはできないことに注意しましょう。

・秘密証書遺言

遺言者自身が作成して封印し、遺言書を公証してもらう方式です。遺言書の内容を秘密にしたまま保管して、遺言書が存在することのみ証明するのに用いられます。

自筆の必要はないものの、家庭裁判所による調査(検認)が必要です。封印後の封開には、公証人により記載されるため改ざんの恐れがなく、公証人並びに2名以上の証人の署名が必要です。遺言内容を伏せたまま遺言の存在を明らかにできるメリットがあります。

しかし、作成に公証人は関与しないため、方式不備などの可能性があるというデメリットもあります。また、こちらも検認の費用がかかります。

普通方式による遺言の比較表

ポイント 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
証人の立ち会いが必要? 不要 2名以上必要 2名以上必要
費用は発生するか? 不要 必要 必要
誰が作成するのか? 遺言者本人 本人の口述をもとに公証人が作成 遺言者本人
PCの使用、代筆は可能か? 不可 公証人が作成
方式不備のリスク
検認手続きの必要は? 必要 不要 不要
遺言書の秘密性 保てる 第三者に内容が知られる恐れ 保てる
遺言が発見されないリスク 高い 低い 低い
偽造、隠ぺいのリスク 高い 低い 低い

特別方式

特別方式による遺言の比較表

一般危急時遺言 難船危急時遺言 一般隔絶地遺言 船舶隔絶地遺言
立ち会いは? 証人3人以上 証人2人以上 警察官1名と証人1名以上 船長か事務員1人と証人2人以上
認められるケース 病気などで死が迫っているとき 飛行機等の遭難で死が迫っているとき 伝染病で隔離されているとき 船内にいて一般の人と連絡が取れないとき
書く方は? 証人 証人 誰でも可能 誰でも可能
方式は? 遺言者の口述を証人が筆記→全員確認のうえで署名捺印 遺言者の口述を証人が筆記→証人全員が署名捺印 本人、筆記者、立会人、証人各自が署名・捺印する。 全員が各自署名・捺印
作成後の手続き 20日以内に家庭裁判所の確認が必要 すみやかに家庭裁判所の確認が必要 不要 不要

・一般危急時遺言

臨終の際、筆記できない状況下で行われる特例の遺言です。病気などで死が迫っているときなどに認められ、証人3人以上の立ち会いのもと、筆記者は証人に限ります。

満たすべき方式は、遺言者が口述したものを証人の1人が筆記し、本人と証人の前で読み上げるか閲覧させたうえで、証人全員の署名・捺印が必要です。法定の手続きとして、作成後20日以内に裁判所の確認が必要になります。

・難船危急時遺言

船や飛行機などが遭難し、死亡の危機に迫られた乗客が残す遺言です。立ち会いは2名以上で、筆記者は証人に限ります。

満たすべき方式は、遺言者が口述したものを証人の1人が筆記し、証人全員が署名・捺印します。署名・捺印できない者がいる場合、他の証人がその旨を記載します。作成後は、すみやかに裁判所の確認が必要になります。

・一般隔絶地遺言

伝染病などによって隔離されている人に認められる遺言です。警察官1名と証人1名以上の立ち会いが必要で、筆記者は誰でも可能です。

満たすべき方式は、本人、筆記者、立会人、証人が各自署名・捺印し、署名できない者がいる場合は、立会人、証人がその旨を記載します。法定の手続きとして、裁判所の確認が必要になります。

・船舶隔絶非地遺言

船上に長期滞在していて一般の人と連絡が取れないときに認められる遺言の方式です。船長か事務員のどちらか1人と証人2人以上の立ち会いのもと、本人、筆記者、立会人、証人が各自署名・捺印します。署名・捺印できない者がいる場合は、立会人証人がその旨を記載します。

法定の手続きは必要なく、裁判所の確認も不要です。

遺言によって“できる”こと「遺言事項」は大きく3つ

遺言にどのような内容を盛り込むかは故人の自由ですが、遺言として法的効力を持つものは限られます。遺言書に書かれていれば、どんなことでもその実現が法的に保障されるというわけではないのです。

この遺言によって成し得ること、つまり遺言により法律的な効力が生じる事項を「法定遺言事項」と言います。遺言事項は大きく「相続に関する事項」「財産に関する事項」「身分関係に関する事項」の3つに分けられます。

相続 ・相続分や財産分割の方法の指定
・特別受益分の持ち戻しの免除
・推定相続人の廃除やその取り消し
・遺言執行者の指定や委託など
①~⑧
財産処分 ・遺贈
・寄付行為
・信託の設定など
⑨~⑪
身分関係 ・子供の認知
・後見人や後見人監督人の指定など
⑫⑬

遺言事項の具体的な内容遺言事項となるのはこのようなもの

遺言事項には多くの種類があります。具体的にはどのようなものがあるのか、下記にまとめましたので確認しておくとよいでしょう。上の表に示したように、①~⑧は相続に、⑨~⑪は財産処分、⑫⑬は身分関係に関する遺言事項です。

①相続分の指定、指定の委託

法定相続分とは異なった相続を考えているのであれば、遺言書で各相続人の相続分を指定することができます。また、相続分の指定を第三者に委託することも可能ですが、遺留分の規定には注意する必要があります。
※遺留分に反した場合でも遺言が無効となるわけではなく、相続人による遺留分減殺請求の対象になるのみとされます。

②遺産分割方法の指定、指定の委託

例を挙げると、自宅は妻に、株式は長男にというように、それぞれの財産を誰に相続させるかを指定できます。そのような分割方法の指定を第三者に委託することもできます。

③遺産分割の一定期間禁止

相続開始から一定期間(5年以内)は、株式や不動産などの遺産分割を禁止することができます。

④推定相続人の廃除・廃除の取り消し

推定相続人の廃除や、過去に行った相続廃除を取り消したいときには、その請求を遺言書に盛り込むことができます。

一方、相続欠格は被相続人の意思で決定されるものではないため、たとえ遺言で相続欠格の撤回を被相続人の意思として表明しても、その者の相続欠格は撤回されません。また、相続欠格により受遺能力も失われるため、遺贈もかないません。そのような場合には、相続欠格者に生前贈与するか、代襲相続という方法を採ることになります。

相続欠陥・相続廃除とは?⇒

⑤特別受益分の持戻しの免除

生前に行った贈与を相続財産から調整することを「特別受益分の持戻し」と言い、この調整の免除を遺言で意思表示することができます。ただし、遺留分の規定に注意する必要があります。

これは、現在の裁判所では、特別受益分の持戻し免除によって相続人の遺留分が侵害された場合は、遺言による免除を考慮せず、贈与などの特別受益分を遺留分算定の基礎となる財産に含めるという判断が出されているためです。場合によっては、たとえ被相続人による免除の意思表明があったとしても、その遺言が効力を持つとは限りません。

特別受益とは?⇒

⑥相続人相互の担保責任の指定

財産の分割後にその財産に欠陥があって損害を受けた場合、相続人同士は互いの相続分に応じて保証し合うことが義務付けられています。これを「相続人相互の担保責任」と言い、遺言でその義務を軽減したり、重くしたりすることが可能です。

⑦祭祀継承者の指定

先祖の墓や仏壇などの継承者を指定できます。遺言でなく生前の指定も可能です。

⑧遺言執行者の指定、指定の委託

遺言の内容を実行してもらう人を「遺言執行者」と言い、これを誰に依頼するか指定できます。他の相続人の協力を得られにくいといった場合には、遺言執行者の存在が重要になるため、信頼のおける人を選任しましょう。また、その指定を第三者に委託することも可能です。

⑨遺贈の指定

内縁関係にある者や、特別に貢献してくれた者など、相続人以外に財産を贈与したいときには、遺言で特定の人物に財産を譲り渡す「遺贈」という方法が求められます。遺贈の割合を指定する「包括遺贈」、譲り渡す財産を具体的に特定する「特定遺贈」のいずれかの方法で指定します。

⑩寄付行為

財団法人を設立するために財産を提供するなど、寄付の意志を示すことも可能です。

⑪信託の設定

信託銀行などに財遺産を信託し、管理運用してもらいたいときには、信託の指定が可能です。受託者・受益者・信託財産の記載に加え、条件や手続きなども必要になります。条件を満たしていなかったり、必要事項の漏れなどがあれば、遺言書に記載があっても実現できない可能性も高いため、専門家に相談するとよいでしょう。

⑫後見人や後見監督の指定

未成年者や障害のある子がおり、親権者がいない場合には、後見人や後見監督人を指定できます。

⑬認知

事実婚などの相手との間に胎児を含む子がいる場合、遺言で認知することができます。また、この認知によって、該当の婚外子は相続人となります。

⑭遺贈に関する遺留分減殺請求方法の指定

遺贈により遺留分が侵害された場合、複数ある遺贈はそれぞれの価格の割合に応じて減殺されるという民法の定めを変更できます。

例えば、複数の遺贈に対して減債する順番を指定したり、割合ではなく同額ずつ減債、もしくは、各遺贈ごとに減債額を指定するといった方法が考えられます。

これら14項目は遺言に記載すると法的効力が生まれる事項ですが、全てが必要というわけではありません。自身の事情に合わせて、必要と考えられる事項を記載しましょう。

遺言書に記載をしても効力がないもの

遺言は自分の死後、親類に遺産相続に関する指示を出すことができる最後の意思表示です。残された家族にあなたの思いや考えを伝えたいと考えるのも無理はありません。

けれども例えば、葬儀や埋葬の仕方、相続人の結婚や離婚の指定、家訓(借金の禁止など)、ペットの世話、臓器の提供、養子縁組(死後の届けは不可)などの希望を遺言事項と同列に盛り込んだとしても、このような事柄は「遺言事項」には当てはまらないため、法的効力は発生しないのです。

とはいえ、遺言事項以外の記載があったからといって、遺言書自体が無効になるわけではありません。あくまで遺言事項以外は法的効力を持たないというだけです。

このような遺言事項以外の内容を遺言書に盛り込みたいときに採られるのが「付言事項」です。全ての法定遺言事項を書き記した後、「付言事項」であることを明記したうえで、まとめて記載します。

よく書かれるのが、親族への感謝の思いや葬儀に関する希望、遺品処分に関することなどでしょう。故人の希望が明確であれば、法的効力はなくとも遺族が決定しやすくなる内容は案外多いものです。

また、法定相続とは異なった相続を遺言で指示する場合、その肯定的な理由を付言事項として残すことで不要な相続トラブルを避けられることもありますし、そもそも遺言書を書くに至った経緯を明示しておくのもよいでしょう。

付言事項の内容を実行するかどうかは、遺族の判断に委ねられます。強制力はありませんが、遺族があなたの意志を汲んでくれる可能性と遺族の負担を減らすという意味では、遺言というかたちで伝えることは有意義と言えます。

トラブルを生まない遺言書を心掛ける

一方、遺言者の意志として法律で有効であっても、自身の主張が強過ぎる場合は、新たなトラブルを生んでしまうこともあります。

法定相続以外の指定をしたい、あるいは特定の団体に寄付したいといった希望を遺言とする場合は、親族一人ひとりに対しても十分な配慮をすることはもちろんのこと、あらかじめ親族の理解を求めておくことが必要です。

遺言書で一方的に自身の考えを押し付けるのは、好ましくありません。遺留分に対する配慮も大切です。

仮に、明らかにそうすべきと納得できる状況がなく、親族の同意もないままに「全財産を長男に渡す」という指示が遺言書にあったとします。この場合、他の相続人は長男に対して遺留分を取り戻す減殺請求ができます。そして、これがもとで家族に争いが生まれ、解決したとしても関係に溝ができるなどは十分に考えられることでしょう。

特に遺留分を侵害するような指定は、新たなトラブルを生みだす火種になりかねません。遺言の書き方には十分な注意が必要です。

自筆証書遺言をする

先にも簡単に述べましたが、「自室証書遺言」は自身で遺言書を書き、自分で管理する方式です。書き方には一定のルールがあるので注意しましょう。

正式な遺言書と見なされるには、遺言事項が書面でまとめられている必要があります。たとえ、闘病中であるため家族に口頭で伝えた、あるいは、録音や録画で残した場合に、遺言としての法的効力は持たないのです。

自宅などでペンと紙さえあれば自分1人でお金もかけずに作成できる自筆証書遺言は、最も手軽な遺言書と言えます。

作成の注意点・ルールに関して

公証人など、法律に精通した人が関わっているわけではないため、以下の3点に注意して作成をしましょう。条件を満たしていない遺言書は、せっかく作成しても無効となるため注意が必要です。

自筆証書遺言書を作る時のポイント

  1. 法律で定められている一定の方式にのっとっているか。
  2. 相続人の遺留分を侵害していないか。
  3. 遺言が無効になる作成方法、記載の仕方をしていないか。
  4. 自筆できない場合、公正証書遺言もしくは秘密証書遺言を選択する。
  5. 必ず年月日を入れる
  6. 必ず署名・捺印をする

遺言書の内容の訂正の仕方にもルールがある。

作成の途中で誤りに気付いた場合は、改ざん防止のため、契約書などと同様の訂正方法を用います。

まず変更箇所を明らかにするために、遺言書の最後や欄外に次のような一文を追加し、署名します。

・本遺言書○行目中○○の○文字を削除
・本遺言書○行目中○○の○文字を加入

そのうえで、訂正箇所に訂正印を押しましょう。この訂正方法を採らない場合、遺言書自体は無効になりませんが、変更がされていないとして扱われます。

相続_こんな自筆証書遺言書は無効になる

公正証書遺言をする

公正証書遺言は、全国にある公証役場で「公証人」が作成する遺言書です。公証人は、国の公務である公証事務を担当する専門家で、実務経験を有する法律実務家の中から法務大臣が任命する公務員です。

公証人が作成するため、不備なく遺言書を作成でき、作成後も遺言書の原本が公証人役場に保管されます。費用はかかりますが、紛失や偽造、改ざんといった危険性が極めて少なく、何より裁判所での検認も必要ないという点もメリットです。

内容をしっかりと整理し、立会を依頼しましょう。

まず、どのような内容の遺言にしたいのか整理し、自筆証書遺言を書くつもりでまとめておきましょう。証人2名以上の立ち会いが必要になるため、証人になってくれる方には早目に依頼することをお勧めします。下記の条件に合致する人物は、法律の規定で証人になれませんので注意しましょう。これらの人物を証人とした場合、遺言書が無効になる可能性は大いにあります。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人
  3. 公証人の配偶者
  4. 親等の親族、書記、雇い主
  5. 文字を書けない人など

証人になった人は遺言の中身を把握することになりますので、証人には口の堅い人がふさわしいでしょう。もし、適切な人物を見つけられないようであれば、弁護士や司法書士に依頼することをお勧めします。

事前の打ち合わせは綿密に

依頼する公証人を決めたら、公証人役場に連絡を取り、遺言内容を事前に郵便やFAXなどで送っておくとよいでしょう。公証人のアドバイスや必要書類の指示などがもらえますので、打ち合わせ時間の削減にもなります。日時が決まったら、それまでに必要な書類をそろえましょう。

●必要な書類

  • 自身の実印(シャチハタ不可)
  • 自身の印鑑証明書(3カ月以内の発行)
  • 遺言者と相続者の関係が分か戸籍謄本(3カ月以内の発行)
  • 受遺者の住民票(※遺贈がある場合)
  • 不動産登記簿謄本(※不動産がある場合)
  • 固定資産税評価証明書または固定資産税納税通知書(※不動産がある場合)
  • 証人の確認資料(住所・氏名・職業・生年月日が分かるもの)
  • 遺言執行者の特定資料(※相続人または受遺者以外を遺言執行者とする場合)

公正証書遺言の作成の進め方

公正証書遺言は、遺言者が遺言の趣旨を口述し、それを公証人が書き取って文書にしていきます。このとき、遺言者本人が障害などにより口述できない場合は、手話通訳または筆記でも作成できるようになっています。また、遺言者本人が病床にあるなどの理由で公証役場に出向けない場合は、公証人が出張し遺言書を作成することも可能です。

公証人は、遺言書を読み上げるか閲覧により確認を求めます。内容に相違がなければ、遺言者本人と証人が署名・捺印します。もし、遺言者本人が署名できない状態であれば、公証人がその事由を付記し、署名に代えることができます。最後に、公証人が法律上に定められた方式に従って、遺言書が作成された旨を付記し、署名・捺印をして完了です。

作成された遺言書は、遺言者本人に正本が渡され、原本は公証人役場で保管されます、保管される期間は20年間もしくは遺言者が100歳に達するまでの期間でのうち長いほうです。ただし、最近の実務においてはより長い期間、保管されています。

作成費用は、遺言により相続または遺贈する財産の価額によって変わりますが、通常は1万~10万円前後で作成可能です。

秘密証書遺言をする

遺言の中見はあくまで秘密とするが、遺言の存在を明らかにしておきたいというときに採る遺言の方式です。

自身で作成・封印した遺言書が秘密証書遺言であることを、公証人と証人に認めてもらうもので、自筆証書遺言と公正証書遺言の両メリットを併せ持つ方式となります。自身で作成するため、公正証書遺言のように遺言の内容が公証人や証人に知られることはなく、証人2名以上の立ち会いが必要となるため、遺言が存在している事実は遺族に伝えられます。

反面、自筆証書遺言と同様に公証人の関与なしで作成するため、法的な不備があり無効になるといったケースもあり、注意が必要です。

秘密証書遺言では、公証人役場に遺言を作成したという記録が残るだけです。作成した遺言書は自身で保管する必要があり、破棄・改ざん・焼失などのリスクを消すことはできないことに注意しましょう。

秘密証書遺言が他の2種類の遺言書と大きく違うのは、署名を自署さえすれば、遺言書の本文をパソコンや代筆で作成することが可能な点です。例えば、障害により自筆がかなわないケースでも、署名さえ自分で書くことができれば秘密証書遺言書は作成できます。

秘密証書遺言の作成の進め方

遺言書を自分で書きます。書く方式、注意点に関しては自筆証書遺言と同じです。日付を記入し、署名・捺印してから封筒に入れ、封印をします、このとき、遺言書に捺印したものと同じ印鑑を使って封をします。

次に2名以上の証人を手配します。証人になれない人物は、公正証書遺言のときと同じです。証人を決めたら公証人役場に連絡を取り、日時や必要なものなどを確認しておきます。
公証の日時が決定したら、封書を持参して公証人役場に出向き、公証人と2名以上の証人の前で、それが「遺言者自身の遺言書である」ということと、自身の住所・氏名を申し述べます。

公証人は、年月日と遺言者の伝えた情報を封書に記載します。最後に、遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名・捺印して完了です。秘密証書遺言にかかる費用は、公証役場で1万1000円、判所での開封・検認手続きにも遺言書1通に対して800円が必要となります。

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