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国連機関で非常勤理事を務める、企業法務、国際離婚に知見のある渋谷の女性弁護士にインタビュー。

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更新日:2019年07月26日
国連機関で非常勤理事を務める、企業法務、国際離婚に知見のある渋谷の女性弁護士にインタビュー。のアイキャッチ


堀国際企業法務法律事務所 堀晴美 弁護士

国連機関であるUNRoDでは、東エルサレム周辺を含む、占領されたパレスチナ領土でイスラエルによる壁の建設により、被害を受けた人、土地などをクレームとして記録する作業を行っている機関である。
毎年記録されるクレームの件数は、何千件にも及ぶという。
後の賠償請求にむけて、2007年設立された機関であり、そのUNRoDで、活動を続ける一人の女性弁護士がいる。

今回は、堀国際企業法務法律事務所の堀晴美弁護士に会いに行きました。
堀先生は、法曹界のキャリアにおいて、検事、裁判官、弁護士を歴任してきた方で、国連機関のUNRoDで非常勤理事を務める弁護士先生だ。
インタビューでは国連機関UNRoDの活動を中心に、堀先生の人柄や、国際法務を中心に手掛ける先生のお仕事についてお話をお聞きしてきました。

 

■堀国際企業法務法律事務所に関して

---先生の事務所の特色、強みを教えてください。

国際関係の仕事に強いということです。
ですから、海外に進出したい企業とか、海外に進出してトラブってしまった企業とかのご相談に乗るということができます。

個人的な依頼では、それもやはり国際関係が絡むようなもので、中国人同士の離婚とか、イギリスでの離婚など結構あります。

---この渋谷に事務所を構えた理由とかって、何かあったりしますか?

私、表参道が好きだったので(笑)、そこから近い渋谷にしました。
いい場所で、好きなんですけどね。

---今先生が受けているだと事案の構成比率だと、企業と個人でどれぐらいの割合ですか?

半々ぐらいです。
今も、なぜかヨーロッパの会社とのトラブルを対応しています。
日本の企業さんから依頼されて、債務不存在確認訴訟を起こそうかっていう話になっているんですけれども、ギリシャの会社の商業登記簿謄本を取るのに手間取ってしまって、半年以上も無払いがあるんです。
今やっと送られて来たので、これで訴訟を起こせるかなと。

---やはり相手が海外になると、大変ですね。

そうなんですよ。
送達も海外だし、全然違いますからね。
企業の中では、そういう契約書とか、海外の企業とのやり取りの部分が多いかなっていうところですかね。
大体、契約書を作成してほしいとか、あるいは契約書が送られて来たんだけど、不利な点がないかチェックしてほしいとか、そういう依頼が多いです。

---そうすると業種など幅広く受けてらっしゃるのですか?

特にこの業種、この業界って決めてはいないので、幅広くやっています。
多いのは、ライセンス契約をしている会社さん、あるいは物品の展示をするのに、その物品を運ぶ海外の会社などですね。
個人なんかだと、例えば海外に口座を持っていて、ドーマント口座って言って、要するにずっと動かさないでおくと、これは動かない口座っていうことで国のほうに取られてしまうのです。
歯医者さんの方がいらして、ハワイに口座を持っていて、ずっと動かしていなかったらドーマント口座ということでお金を取られてしまったと、返してほしいというので、その手続きを取るのに、メールでやっていたのでは埒が明かないので、もう直接電話をして手続きはどうすればいいのかを聞いて、それでハワイの銀行とハワイの行政機関の両方に電話でやり取りをして、何とかお金を返してもらったというケースもあります。
「国際」って付くと何でも入ってくるので、事案も様々です。

堀国際企業法務法律事務所 堀晴美 弁護士
堀国際企業法務法律事務所 堀晴美 弁護士

 

■堀晴美弁護士について

---堀先生は、弁護士を目指した理由、キッカケって何ですか?

私は元裁判官だったんですけど、ただ3年ごとに転勤しなきゃならないというのがどうしても納得がいかなくて、自分の住む所は自分で決めたいということで、そうなるともう弁護士しかないかなと。
ただ、弁護士と裁判官の違いで言うと、裁判官だとお給料が毎月きちんと入ってくるのでありがたいっていうのと、弁護士はそうではなくて保証がないから厳しいというところはあります。
ただ、裁判所に上がってくる事件というのは、その前の交渉段階がありますから、どうにも動かなくなったものが多く、弁護士同士がなんとか交渉して、上澄みになった部分だけが裁判所に入ってくるんですよ。
弁護士の場合は、その最初の交渉から関わるから、仕事の幅が全然違います。

---裁判官、弁護士の仕事の幅でいうと弁護士のほうが広いのですね。

広いですね。
契約書のチェック、作成は、そもそも裁判官なら全然関係ないですから。

---法曹界のキャリアとしては、裁判官からスタートしておりますが、そのキッカケは何ですか?

裁判官にならないかというお誘いがあり、そこが一番大きい理由かもしれません。
司法修習生は司法研修所で修習するのですけども、その中で司法教官は、裁判所から来ている教官と、検察庁から来ている教官と、弁護士の教官がいるんですよ。
弁護士は特にないんですけれども、裁判官と検事は、どんなに本人が希望しても裁判教官と検事教官が引っ張ってくれないとなれないんですよ。
私の場合、実は最初は検事になったのです。
検察と裁判所の教官の両方から「なれ、なれ」って言われて、すごく迷ったのですけれども、最初検事になって、やはり取り調べについては苦手だと感じたので、訟務検事を3年間やりました。
訟務検事というのは、国の弁護士で国の指定代理人なんです。
要するに国が訴えられた場合に弁護士のような役割をする仕事でして、それを3年間やって、それから裁判官になったんです。

---検事、裁判官、弁護士全て経験のある経歴の人は、あまりいないですよね?

このような経歴の人は、まずいないと思います。
珍しいと思います。
その中で良かったなと思う、一番楽しかったのは訟務検事です。
今でも、やれって言われたら私やりますよ(笑)。

---それはなぜですか?

まず扱う案件が大きいんです。
国が訴えられるっていう感じですから、事案自体が複雑で大きいんです。
例えば、横田基地のケースとか、水俣とか、従軍慰安婦とか、国立大学の医療事件とか。
そのような事案は、必ず担当の官庁の部署が付くんですけど、その役人との交渉等もいい経験になりました。

---やはり、とてもやりがいがあるっという点ですかね。逆に一番大変だなと感じるところは何ですか?

一番大変だなって思ったのは、検事の取り調べです。
もう全然できなかったです(笑)。
最後に説教を垂れなきゃなんないんですよ。
私はそんなに偉そうに説教できる立場にはないなと思って、すごく嫌だったんです。

---それぞれの違いってありますか?

検事が扱うのは刑事事件だけですから、それと警察との関係がなかなか難しいです。
テレビでやっているようなドラマなどありますけど、全く事実とは違うんです。
実際に出て行って事件を捜査するっていうことは、まずないですから。

---そうすると、やはり弁護士っていうのが幅は広いですか?

扱う仕事の幅は一番広いと思います。
私のキャリアでいうと経歴として一番長いのは弁護士です。
弁護士歴だと7年ぐらいですかね。
検事1年で、訟務検事3年、裁判官4年やって、そのあと裁判官を辞めてイギリスに留学して6年間勉強をして、それでこっちに戻って来ました。

---話は変わりますが、先生の趣味、今先生がはまっていることは何かありますか?

今一番はまっているのはバレエです。
完全にハマっています。
もう3年ぐらいになるかな。
小さい頃にバレリーナになりたかったんですよ。
ずっとやりたかったの(笑)。

堀国際企業法務法律事務所 堀晴美 弁護士

---休日など空いた時間に通ってるのですか?

お仕事が終わってから大人向けのバレエ教室に通っています。
週に4日。
踊るのが楽しいんですよね。
気分転換にもなりますし、友達の幅も広がりますしだから、いろんな友達ができるからいいですね。

---では運動にもなりそうなので、いいですよね。

体を動かすのは毎朝ジムに行っています。
毎朝7時からジムに行って体を動かしています。

---ジムに行って、そこから仕事をして、そのあと仕事が終わってからバレエに行っているんですか?

そうです。
それなのに今年の1月に急性心不全になっちゃったんです(笑)。

---えっ、そうなんですか?大丈夫だったんですか?

最初、救急患者で行ったんですけど、「すぐに入院しろ」って言われて、「ちょっと入院は避けたいから帰らせてくれ」って言ったら、「このまま帰したら、いつ死んでもおかしくない」って言われて、それでやむなく1週間入院しました。
今は治りましたけどね。

 

■お仕事に関して

---今度はお仕事に関して。先生がお仕事の中で一番大切にしていること、ポリシーって何ですか?

どうすれば一番クライアントにとって幸せかなっということを考えることです。
それをイメージする、常に考えていると。

---他の弁護士に負けないところとか、差別化できるポイントって何かありますか?

今まで検事、裁判官、弁護士をやってきた経験があるところは一つですね。
弁護士からの見方だけではなく、裁判官だったらどう考えるかとか、いろんな目線、見方ができるところがとりえかなとは思います。

---次に、現在先生が参加されている国連の活動UNRoDについてで、その活動するキッカケって何だったのですか?

元々、私は国際機関で働くことに興味を持っていまして、外務省で活動したい人が履歴書を登録しておく「ロスター登録制度」っていうのがあるんですよ。
それでロスター登録で、そこに自分の経歴書を上げていたんです。
そうしたらある日突然、外務省から電話がかかってきて、「UNRoDで非常勤で各国で1名の応募者を出すように」って言われていると、それで「応募しませんか?」って言われたので、
「もちろん喜んで応募します」ということで応募して、それで選出されたんです。

--- UNRoDでの活動はどれぐらいになるんですか?

もう10年になります。

---具体的にどのような活動をしているのか教えてください。

要するに、パレスチナの占領自治区のパレスチナ人が住んでいる所に、イスラエルが勝手に壁を作っちゃったんですよ。
その壁を作ったことによって、例えば自分の農地に行けなくなっちゃったとか、建物が壊されちゃったとか、仕事がうまくいかなくなっちゃったとか、そういう損害が生じるんですよ。
それでその損害を、「このような損害があります」ということを記録しておく登記所のことなのです。
どのような損害があるのかというのを、それぞれ一人一人クレームって言うのですけれども、一つ一つクレームを見て、これはクレームとして認めるべきだとか、これはクレームとしては認められないとか、それを判断する仕事なんです。

---そこで弁護士として、そのような活動をしていると。

そうですね。
他の国の理事も法曹関係の方ですからね。
全部で3名いまして、フィンランドの非常勤理事は憲法裁判所の裁判官で、アメリカの理事は元国務省の高官でした。

---年間でどのぐらい海外出張されているのですか?

年間4回、それぞれ1週間です。
3月、6月、9月、12月って決まっているんですけれども、それで1週間滞在してクレームのチェックをするんです。
元々、クレームチームっていうのはいて、クレームの表を作って、より分けてあるのを、それが間違いがないかどうかっていうのをチェックするんです。

堀国際企業法務法律事務所 堀晴美 弁護士

---やはり件数は毎回多いんですか?

毎回1200件ぐらいあるので、それを10パーセントのサンプリングでやるので120件、それを3人の理事で手分けしてやるっていう感じです。
でも、一件一件がとても半端ではないので、結構大変です。
それを海外滞在時の1週間のうちにやらなきゃいけないということですよね。

---実際にそのクレームを解決するっていう作業も先生方はされるのですか?

いえ、クレームを登記しておくだけなんです。
ですから、第一段階として、これはクレームですと認めて、それを登記しておくのが私たちの仕事で、次の仕事はエバリュエーションって言って「評価」することになるんです。
このクレームの損害は、これぐらいの金額にして、幾らぐらいの損害だというのをエバリュエーションするんですが、それが第二段階になります。
それで第三段階で補償するということになります。
その第一段階の、損害がありますよっていう登記をする段階の仕事なんです。
毎回、千何百件を1週間のうちにチェックをして登記する作業なのです。
もう10年やっていますけど、まだまだエルサレムに到達しないので、あと10年はかかるかなっていう感じです。

---これから10年っていうことですか?

はい。
登記が終わって、今度はエバリュエーションになるんでしょうけど、それは別の機関を作ってエバリュエーションをすることになると思います。
う~ん……10年で終わるかな(笑)。
次の段階エバリュエーションに移る時は、また新しい機関を作って、新しい人たちを入れてやると思うんですけどね。
今の理事が繰り上がってなるかもしれないし、それはちょっと先の話なので分からないですけど。

---今まで先生がやってきた登記の分は、並行して違う方がエバリュエーションとかってしていないんですか?

まだ登記だけなんです。
全部、登記をし終わってからエバリュエーションなので。
まずはその登記を終わらせないと次に進めません。

クレームのというのは例えば、家を壊されたとか、商業だと、買い物客が来てくれなくなったとか。
普通に農地に行けなくなったというクレームは、だいぶやり尽くしてきたんですけれども、
例えば環境被害とか、そういうのはまだ出てきていないのですが、そのようなクレームがでてきたらこれは大変かなと思っています。
果たして、壁によって環境被害が起こり得るのかっていうのは疑問ですけど。

---あと10年以上と考えると、先が遠いですね。

作り終わっていないんですよ。
まだ壁作っているのです。
ですから、そうすると、まだまだ損害が発生してくることになるから。
また損害が発生してくるから、いたちごっこみたいなものです。

---その壁を作るのを辞めさせるという手段はないのですか?

それはイスラエルが納得しないだろうし。

---そっか。国の問題になるんですね。なぜこの活動を先生は10年以上続けているのですか?じ

給料は安いですけど、やはり役に立ちたいという気持ちです。
大変ですが、やりがいはあります。

---先生のこれから関心のある分野って何かありますか?

国際関連の独禁法とかに今は関心があって、インターナショナル・バー・アソシエーションっていう団体があるんですけれども、
そこがやっているコンペティション・ロー・カンファランスなんか顔を出したりして、またそれで海外出張は増えるんですけど(笑)。
海外カンファランスに、どういうものかなと顔を出して、要はお勉強ですね。
そのカンファランスは独禁法もあるし、M&Aのカンファランスもあるし、それをセレクトして出ているんですけど、各国、世界中から来ているので面白いですよね。

堀国際企業法務法律事務所 堀晴美 弁護士

 

■最後に

---法曹歴14年を向かえて、裁判官、検事、弁護士、国連の活動をやってきて、振り返ってみていかがですか?

最初に検事になったのはマズかったなと(笑)。
でも、そこから「裁判官になりたい」って言ったんで、訟務検事をやらせてもらったから、そこは楽しかったかなとは思いますけどね。
国連の活動とかもやらせてもらっているので、今が一番楽しいです。

---国連のUNRoDでの活動と日本での弁護士業とのギャップってありますか?

とてもあるように感じます。
違いとしては、UNRoDの仕事は割とアカデミックな議論をする場なんですよ。
それで日本に帰って来て扱う仕事って、アカデミックに研究するっていう部分はほとんどなくで、人間関係が多いですからね。
あとは、自分の体の管理とかっていうのも大変ですよね(笑)。

---今後の堀先生のビジョン、方向性を教えてください。

方向性は、もうちょっと国際企業法務のほうを伸ばしたいなと思っています。
UNRoDは年4回で、1週間ですから、そんなに大きくはないですよね。
国際企業法務だと、特に分野はないですけど、今は、コンペティション・ロー(独禁法)に興味を持っているので、それに関連した事案があればやっていきたいですね。

---最後に、記事を見てくれた方とか、相談に来られる方に一言メッセージをお願いします。

メッセージとしては、ご相談に来られる方々が、どうしたら一番幸せになれるかということを考えてアドバイスさせていただきます。

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堀 晴美 (東京弁護士会所属 / 堀国際企業法務法律事務所)

国連機関の活動を通じて、国際離婚、国際企業法務など、国外にかかわる個人・法人の事件、案件を得意としております。 国をまたぐ家族問題、離婚、相続関係、海外企業とのやりとり、契約書のチェック、債権の回収など国際関係の案件は多岐に及び、これまで様々な案件を対応してきた実績がございます。 国際化が進む中で、日常でおこるトラブル、ちょっとした問題も、国をまたぐと手続き、時間がかかるなど少しやっかいな場合もありますので、まずはご相談いただき、早期解決のためにご尽力させて頂きたいと思います。

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