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【弁護士監修】死亡した親の預金は勝手に引き出しても良いのか?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年02月21日
死亡した親の預金は勝手に引き出しても良いのか?のアイキャッチ

遺産の貯金を引き出したり、預貯金を使用することが可能なのか、今回は実際にあった相談を元に記事を作成しております。
近年相続法の改正により様々な改正が行われておりますが、それに関してはこの記事の中盤でも触れておりますので、ぜひ最後まで読んで
わからないことがある場合は、弁護士に相談してみてください。

※以下実際にあった相談内容です。

Q:死亡した親の預金を引き出したいのですが問題はありますか?また、死亡保険金は使って構いませんか?

A:死亡保険金は受取人の固有の権利として相続財産に含まれませんので使っても指し支えありませんが、預金は難しそうです。

預金を引き出すことはできるのか

被相続人(死亡した人)の保有していた不動産や有価証券などの財産は、死亡と同時に相続人の共有財産となります。

被相続人の遺言があれば、基本的にそれに沿って分けていくことになり、遺言がなければ相続人による遺産分割協議を経て分けることになります。

いずれにしても時間がかかりますが、どの財産を、どの人が、どのくらい相続するか決まるまでは、被相続人の財産は基本的に保全しておかなければなりません。相続人の1人が財産を勝手に売却したりすることは揉めごとの原因を作っているようなものです。

ただ、被相続人の配偶者や子供の当面の生活費や被相続人の生前の医療費、介護費、葬儀費用などに急にまとまった資金が必要となる場合があります。この場合、被相続人の預貯金を引き出そうとする向きもありますが、そうなのでしょうか。

預金など分割可能な金銭債権は厳密には共有財産ではありません。最高裁判所の判例では、具体的な相続分が決まっていなくても、法定相続分は引き出せるとしていますが、相続人全員の合意があれば遺産分割の対象にできるともなっており、現実には遺産分割を公平にする上で調整しやすい財産として不動産などとともに分割対象になっています。

したがって、法律上は相続人が被相続人の財産を処分しようとすることは一定限度までは問題がないとも言えますが、他の相続人との関係や銀行などとの関係を考えると、権利ばかり主張するのは得策ではありません。

そもそも被相続人の死亡を金融機関が知ると、金融機関は被相続人の口座の取引を遺産分割などがすむまで停止します。現実には、銀行は遺産分割が完了しないと引き出しには応じません。

相続法の改正により一部変更がありました

相続法の改正により、遺産分割協議前に被相続人の預貯金債権の一部払戻制度が創設されました。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。

死亡保険金は使っても差し支えない

その点、生命保険は別です。死亡保険金は被相続人の死亡を原因として支払われますから、一見、相続財産に含まれるように見えますが、受取人は保険契約で指定されているので共有財産には原則として含まれません。このことは最高裁の判例などでも明確に示されています。

在職中の退職金や死亡退職金

会社員や公務員が在職中に死亡した場合に支給される退職金(死亡退職金)も、受給者の固有財産として遺産分割の対象にならないことが多いと言えます。公務員の場合は死亡退職金の受給者が法律や条例などで、また民間企業の場合も就業規則により、実際の受給者を民法上の相続人と異なった決め方をするケースが多いからです。

受取人が誰なのか

もらう人が特定された生命保険金や死亡退職金は相続人の遺留分減殺請求の対象にもなりません。遺留分とは、法定相続人に認められた最低限の権利で、それを侵害されている人が侵害している人に一定の財産を渡すよう求めるのが減殺請求です。生命保険金、死亡退職金は相続財産ではないので減殺請求できません。したがって、死亡保険金などを受け取ったら基本的に使ってしまって差し支えないでしょう。

ただ、死亡保険金の受取人が被相続人本人の場合は相続財産に含まれます。また、特定の相続人が受取人として受け取る死亡保険金の金額が、被相続人が死亡した際に現に残っていた相続財産に比べて著しく多い場合は、それを加味して遺産分割協議を行う場合があります。

例えば、特定の相続人が受け取った保険金が1億円で、現金で残っていた相続財産が1000万円の場合は相続人の間に著しい不公平感が残ります。相続財産と比べて多いなどバランスを欠く場合は遺産分割協議に含めることもやむをえない場合もあり、弁護士ら専門家に相談してみるといいでしょう。

いずれにしても、当座に必要なお金を被相続人の財産から支出するためには遺産分割を早くすませるのが一番です。

被相続人のために当座支払った医療費や葬儀費用などは、誰かが負担して、後で具体的な相続分に応じて求償するといった対応が必要かもしれません。当座の資金をあらかじめ信託して使える状態にしておく商品も登場しました。事情を話して、相続人の間で費用負担を分担するなど現実的な解決策を図ることが大切と言えます。

補足

財産の種類と遺産分割の関係

遺産分割の対象になる→不動産、動産、現金、株式、ゴルフ会員権など

遺産分割の対象ではない→受取人が指定された生命保険金や死亡退職金

→預金などの金銭債権(相続人全員が合意すれば対象になる)

死亡保険金の税

①保険料の負担者→夫

被保険者   →夫

保険金の受取人→妻

税金の種類  →相続税

②保険料の負担者→夫

被保険者   →妻

保険金の受取人→夫

税金の種類  →所得税・住民税

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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