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【弁護士監修】【要チェック】不動産購入資金として生前贈与を受けていたときは?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2020年08月11日
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次のような事例のご相談をもらうことがございますので、相続と生前贈与の関係についてをテーマにいたします。

この度、父が亡くなりました。すでに母が他界しているので法定相続人は兄弟3人、相続財産の総額は2500万です。しかし、相続人の1人である長男は、自宅住居購入の際に頭金として父親から500万円出してもらっています。この場合のそれぞれの相続財産はいくらでしょうか?

まず長男が貰った500万円については

長男が父親からもらった住宅購入資金(500万円)については特別受益に該当します。そのため、相続財産から差し引かれます。

特別受益(制度)とは

故人から婚姻費用・事業資金の援助・住宅購入資金などの生前贈与を受けたり、故人から遺贈を受けたりした人がいる際に、その分を差し引いて相続分を計算することで、相続人の間での公平を図る制度を「特別受益制度」と言います。

しかしこの制度は、生前贈与されたり・遺贈受けたりした額が法定相続分より多くても返還請求することは出来ない点は注意が必要です。

ただし、遺留分(一定の相続人に必ず承継されるべきものとされる相続財産の一定割合)の侵害があった場合には、遺留分減殺請求することが出来ますが、特別受益とはまた別の問題となります。

どんな贈与が特別受益になるのか?

遺贈については、すべて特別受益となります。

生前贈与について全ての贈与が特別受益に当たるわけではありません。それでは、どのような形態の贈与が特別受益に該当するのでしょうか?

民法では「婚姻もしくは養子縁組のため、若しくは生計の資本としての贈与」(民法第903条1項)を特別受益としています。

この「婚姻もしくは養子縁組のための贈与」とは、例えば婚姻の際の持参金・支度金などが該当します。一方、結婚式の費用や結納の費用は一般的には特別受益に該当しないと考えられていますが、金額次第では特別受益になる可能性がございます。また、贈与の価額が少額で、通常の扶養義務の範囲内での支出が認められる場合には、特別受益に該当しないとされることもあります。

「生計の資本としての贈与」とは、自宅購入資金や居住用の不動産自体の贈与、事業等を始める際の開業資金などの生計の基礎として役立つような財産上の給付のことを指します。

生前贈与の有無と評価の仕方

生前贈与の有無は、贈与を受けた本人以外は判りにくいですが、家族内のことですから調べたり聞き出したりすれば事実は出てくることもあります。

特別受益に該当する生前贈与を相続財産に加える場合ですが、10年以上も前の贈与であれば贈与されたものの評価の点で、問題が発生する可能性があります。そこで評価では以下の現金の場合、土地・不動産や株式の場合で注意する必要があります。

例1 現金の場合

現金の贈与の場合、相続開始時でも同額で評価します。

例えば、現金500万円の生前贈与があった場合は、相続開始時も500万円として計算されます。

例2 土地や株式の場合

土地や不動産・株式については、贈与を受けた後で売却したとしても現物があるものとして相続開始時点での評価額や株価で計算することとなります。

生前贈与を特別受益として相続分から差引く

共同相続人の中に特別受益者がいるときは、相続開始時の遺産の価額に、生前贈与された価額を加えたものをみなし相続財産として、民法第900条から第902条までの規定により算出された相続分から、遺贈及び生前贈与を受けた価額を控除した金額が、その者の具体的な相続分とします。

今回の相談内容から考えると、相続財産は2500万円であるため、そこに長男が生前贈与を受けた500万円を加えた3000万円がみなし相続財産となります。

次に、この3000万円を相続人である兄弟三人が3分の1ずつ分別すると、一人1000万円ずつとなります。しかし、長男は500万円の特別受益(生前贈与)があるため、その分を差引きすると長男は、500万円の相続となります。

長男 (2500万円+500万円)×1/3-500万円=500万円

二男 (2500万円+500万円)×1/3=1000万円

三男 (2500万円+500万円)×1/3=1000万円

最後に

何が特別受益になるかは、過去の判例や生活の実態を見て判断することととなります。判断の難しいものもありますので、身に覚えがある方は、一度専門家にご確認した方が良いかと思います。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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