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【弁護士監修】生前贈与された財産は相続税の課税対象になる?ならない?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2023年01月31日
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Q:生前贈与された財産は相続税の課税対象にならないのですか?

A:相続開始前3年以内の贈与財産や相続時精算課税の贈与財産は課税対象になるので、相続税の計算で足し戻す必要があります。

相続財産額の計算の流れ

相続税がかかるか否かは遺産総額が基礎控除を上回るかどうかで判断します。遺産総額が基礎控除を上回れば課税対象となり、基礎控除以下なら対象になりません。また、相続財産のうち親の自宅の敷地については小規模宅地の評価減の特例を使う前の評価額を使うことができます。相続税の計算の大きな流れを把握するには、まず以上のことをしっかり頭に入れてください。ただ、相続税ではこのほかにぜひ知っておきたいことがあります。それは「遺産総額」を計算するまでの流れです。

これまでは計算の大きな流れをつかむために基礎控除を差し引いた後の「課税遺産総額」からの相続税の計算の仕方を説明しましたが、ここでは基礎控除を差し引く前の「遺産総額(課税価格)」の計算の仕方を説明します。

遺産総額は正式には「課税価格」と言います。これを算出するには相続で取得した財産額を合計するだけでは終わりません。相続財産とみなされるものを足したり、非課税とされる財産を差し引いたりしなければなりません。

具体的には課税価格を算出するには、死亡保険金など「みなし相続財産」と一定の贈与財産を加え、非課税財産や被相続人の債務、葬儀費用を差し引く必要があります。

生前贈与も相続財産に加える

特に注意したいのが贈与財産です。被相続人から生前に贈与された財産額の一部を加えるからです。相続税は被相続人の死亡時点で現に残っている相続額だけが対象ではないわけです。

課税価格を計算するために相続財産に加えるのは「相続開始前3年以内の贈与財産」と「相続時精算課税の贈与財産」です。

相続税の課税対象となる財産を減らすために、被相続人が生前に財産を相続人に贈与する「生前贈与」が活発に行われています。例えば、贈与税がかからない年間110万円の基礎控除の範囲内で毎年贈与しているケースは多いですし、基礎控除を上回り多少の贈与税を支払っても相続税の負担よりは有利だとして生前贈与をしている資産家も目立ちます。

しかし、そうした生前贈与していても、相続開始前3年以内の贈与財産は相続税の計算上、相続財産に加えなければなりません。相続人ごとの税額を算出した後、過去に支払った贈与税額を相続税額から差し引く「贈与税額控除」という仕組みがあるので、相続税と贈与税の二重課税にはなりませんが、相続税の申告ではいったん加える必要があるので面倒です。

相続時精算課税の贈与財産も相続財産に足し戻す必要があります。相続時精算課税とは、2500万円までの特別控除額の範囲内ならば何回贈与しても贈与税を課さない仕組みですが、これによる贈与財産も相続財産に加える必要があります。相続時精算課税では、2500万円を超える贈与については超える部分に20パーセントの贈与税がかかり、その分は相続税額から差し引かれるので二重課税にはなりませんが、過去の贈与分を申告するというのはやはり面倒です。

しかし、面倒だからといって申告しないと、後々税務署に指摘されたり税務調査の対象になったりしかねませんから注意が必要です。

贈与財産の一定部分を相続税でも申告させるのは、生前贈与を使った相続税の課税流れや申告漏れを防ぐためです。例えば、死期が迫っている被相続人の財産を引き出して相続財産からはずそうとしても、相続開始前3年以内の贈与財産が相続財産に加えられるので、申告漏れを防ぐ牽制効果があります。贈与財産で相続財産に加えなくてすむのは、教育資金の一括贈与の特例住宅取得資金の贈与の特例を使った場合などに限定されます。

課税遺産総額を計算

①相続または遺贈、死因贈与で取得した財産

②みなし相続財産(死亡保険金や死亡退職金)

③相続時精算課税で贈与された財産

④非課税財産(死亡保険金の一定枠、墓地や墓石など)

⑤債務、葬儀費用

⑥相続開始前3年以内に贈与された財産

⑦基礎控除→課税遺産相続

※ ①+②+③-④-⑤+⑥=⑦(課税遺産総額)になります。

相続税の総額を計算

課税遺産総額



課税遺産総額を仮に法定相続分に分ける



各法定相続人の税額を計算して合計



相続税の総額

各相続人の税額を計算

相続税の総額



相続税の総額を各相続人の相続分の割合で案分



配偶者の税額軽減など



各相続人の税額

相続税の速算

相続税の速算表

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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