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生命保険を活用した相続税節税の3つのメリットと注意点

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更新日:2022年01月26日
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平成27年(2015年)1月1日より、相続税が改正され事実上の増税がスタートしています。

改正前の相続税は「金持ちに対する課税」であり、実際に相続税を支払うケースは全相続で4%程度しかなく、ほとんどの相続が基礎控除額の範囲内で納まっていました。

しかし、今回の改正により対象となる人が大幅に増え、相続税は「一般大衆に対する課税」となってしまいました。

今までは相続税なんて無関係と思ってきた人も対象になる可能性があるので、生命保険を活用した相続税の節税方法についても知っておきましょう。

1. 相続税改正のポイントを押さえておきましょう。

改正1 遺産に係る基礎控徐

○改正前よりも60%も基礎控除が下がりました。

改正前 5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
改正後 3000万円+(600万円×法定相続人の数)

(例)法定相続人が配偶者と子1人の場合

改正前 5000万円+(1000万円×2)=7000万円(遺産に係る基礎控除)
改正後 3000万円+(600万円×2)=4200万円

改正2 相続税の税率構造

○最高税率の引上げなど税率構造が変わりました。

相続税の速算表

改正3 税額控除

○未成年者控除の控除額が上がりました。

改正前 20歳までの1年につき 6万円
改正後 20歳までの1年につき10万円

○障害者控除の控除額が下がりました。

改正前 85歳までの1年につき6万円(特別障害者12万円)
改正後 85歳までの1年につき10万円(特別障害者20万円)

改正4 小規模宅地等の特例

被相続人(亡くなった方)又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます)の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等がある場合には一定の要件の下に、遺産である宅地等のうち限度面積までの部分について、相続税の課税価格に参入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。

○居住用の宅地等(特定居住用宅地)の限度面積が拡大されます。

改正前 限度面積240㎡(減額割合80%)
改正後 限度面積330㎡(減額割合80%)

○居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積が拡大されます。

改正前 特定居住用宅地等240㎡と特定事業用等宅地等400㎡の合計400㎡まで適用可能
改正後 特定居住用宅地等330㎡と特定事業用等宅地等400㎡の合計730㎡まで適用可能

今回の改正をトータルで考えてみると、わずかに控除や減額対象の拡大はあるものの、圧倒的に増税感を感じますよね。

2. 相続対策は3つしかない

それでは肝心の相続対策について触れていこうと思います。凄く複雑で高度な手法を想像されるかもしれませんが、実は相続対策は基本的に3つしかありません。

① 相続財産の圧縮

被相続人が所有する財産の相続評価額を、金融商品や税法をうまく活用し下げ、それにより相続税の金額を下げる対策。

② 納税資金準備

相続税は相続を知った日から10か月以内に、原則現金で納めなければいけませんので、その納税資金を現金でスムーズに準備する対策

③ 相続財産の分割

相続が争族にならない為に、相続財産をきっちりと分けておく対策。

3. 生命保険を活用する理由

それでは何故、相続対策に生命保険を活用するのか?

それは生命保険が、3つの相続対策の全てに効果を発揮することができるからです。

それでは具体的に見ていきましょう。

① 相続財産の圧縮に関して

生命保険の受取金は500万円×相続人の数の金額が非課税となります(相続税法12条)。

例えば相続税率が20%の場合、法定相続人が3人いれば納めるべき相続税の金額が300万円も下がりますので相続財産の圧縮に関して有効な手段と言えます。

② 納税資金準備に関して

被相続人を被保険者として生命保険に加入していれば、いざ相続が発生した時に保険金を簡単な手続きで受け取ることができます。

というのも、銀行・ゆうちょ・証券会社等の金融機関では、遺族が故人の口座から現金を引き出そうとすると、法定相続人全員の複数の公的書類と同意が必要で、一般的に手続きに数か月は掛かります。

また法定相続人の中で、海外にいて連絡がつかない人がいる場合や、病気等で意思の疎通ができない方がいる場合、いつまでも当該金融機関での相続の手続きができません。

③ 相続財産の分割に関して

お金に名前を付けることはできませんが、保険に加入した際に相続人を受取人に指定することでお金に名前を付けることができます。法定相続とは異なる割合でも問題ありませんので遺したい方に遺したい金額を遺すことができます。※ただし他の法定相続人の遺留分の考慮は必要。

といった具合に、オールマイティな効果を発揮してくれる生命保険ですが気を付けなければいけない点もあります。

4. 生命保険における注意点

① 契約者、被保険者、受取人を誰にするかで税金の種類が変わる

契約者 被保険者 受取人 税金種類
妻、子 相続税
所得税
贈与税

上図のように被保険者や受取人が家族の間で少し変わるだけで税金の種類が変わってしまいます。該当する税の種類で支払う金額が大きく変わってくるので加入時にしっかりと確認することが必要です。

② 相続発生時はいつか分からない

人は必ず最期の時を迎えますが、それがいつかを正確に知っている人はいません。それが何故ゆえに問題かというと、将来の相続発生時にはどのような相続税法になっているか誰にもわからないということです。例えば相続税が香港のように0%になってるかも知れませんし、逆に100%近くになっていて生きているうちに全て使っておけばと悔やんでしまうことになるかも知れません。

この問題については対応不可能かというと、実は良い解決方法があるのです。

5. 相続を毎年、完結させていく

その解決方法とは贈与税の非課税枠の110万円(暦年課税制度)を活用し、毎年、生前贈与で資産を遺したい方々へ移していく方法です。

メリットとして、法定相続人以外の方にも贈与できる、将来の相続と違い、毎年、資産の移動を完結できる点などがありますが、ネガティブな面もあります。

  1. 現金で渡すと無駄使いをされてしまう
  2. 生前贈与と税務当局に認められない
  3. 相続発生時には3年間は遡られ相続財産とみなされる
  4. 110万円ずつだと資金の移動に時間がかかる。

という部分です。

しかし生命保険を活用するとそれらの問題も、すべてではないですが解決することができます。

具体例

・被相続人Aさんが、毎年310万円を遺したい人Bさんに現金で贈与する。

※非課税枠110万円を超えた200万円が贈与税の対象となるが税率は贈与税で最低の10%で

贈与税は20万円

・贈与された資金で終身保険を契約(契約者Bさん、被保険者Aさん、受取人Bさん)する。

解決する問題点

①現金で渡すと無駄使いをされてしまう

※保険契約という形になっており、Aさんの同意無しにはBさんは勝手に資金を動かせない

②生前贈与と税務当局に認められない

・生前贈与と認められるには以下が必要となります。

  1. 贈与する人だけでなく贈与される側がきちんと贈与だと認識する。
  2. 贈与された資金は贈与された人が管理する(通帳と印鑑の管理)。
  3. 毎年の贈与であれば毎年、贈与契約書を双方で作成し税務申告する。

※上記に関しては保険契約という形の方がより認められやすいと思います。

③相続発生時には3年間は遡られ相続財産とみなされる

※できるだけ早く始めた方が効果的ですね。

④110万円ずつだと資金の移動に時間がかかる

※贈与税の最低税率の非課税超過分200万円を追加していますし、

複数人で、このスキームを使えばより効果的です。

まとめ

生命保険には税法上のメリットや商品の特性を生かした活用法があります。

今回は相続でしたが、ライフサイクルの様々な場面で保険の活躍場所があると思います。

まずはご自身のニーズをきっちりと把握して、生命保険と上手に付き合っていってください。

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この記事の著者

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工藤将太郎 (保険関係)株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

2011年に株式会社クレア・ライフ・パートナーズを創業する(2012年法人設立)。 従来の“保険の提案だけ”のファイナンシャルプランナーとは異なり、「効率の良い資産配分」「早期対策の有効性」「行動することの必要性」をプランニングに組み込み、20代30代...

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