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【弁護士監修】住宅購入資金・結婚式費用など生前贈与は相続財産に含まれるのか?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2024年02月19日
住宅購入資金・結婚式費用など生前贈与は相続財産に含まれるのか?のアイキャッチ

遺産分割協議を行う中で、一部の相続人が、故人から、生前、もしくは遺贈によって現金や不動産等の贈与を受けていた場合、その生前贈与が争点になることがあります。例えば、親から住宅購入時を出してもらっていたり、学費などを出してもらっている場合です。

そこで、今回はそのような「生前贈与が相続財産として扱われるのか」について触れていきます。

生前贈与を受けていた場合の相続分

まず、被相続人(故人)から生前贈与を受けた相続人がいた場合、相続分の計算方法について、民法では以下のように定めています。

「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」(民法第903条第1項)

簡単にご説明すると、「亡くなった方から生前に、現金・不動産などを無償でもらっていたり、結婚・養子縁組での費用、住宅購入資金や学費などの生活援助として贈与を受けていた場合、その贈与を相続財産とみなし相続分から差し引いて考える」ということです。

ここで言う遺贈」「婚姻もしくは養子縁組のため」「生計の資本」としての贈与を受けているときの利益のことを「特別受益」と言います。この民法903条は、特別受益を受けていない相続人との間の不公平を調整するために定められています。

特別受益が認められる場合には、その受けた利益分を具体的相続分の算定にあたって考慮して計算することとなりますが、この受けた利益分を考慮することを「特別受益の持ち戻し」といいます。

それでは、具体的にどのような贈与が特別受益に該当するのでしょうか。以下に一例を挙げてみます。

特別受益になる生前贈与は大きく3つに分類される

・婚姻もしくは養子縁組としての生前贈与

主に結婚するときの持参金や支度金といったものがこれに該当するとされていますが、結婚式の挙式費用は特別受益には含まれないというのが一般的です。

・生計の資本としての生前贈与

住宅購入資金の援助や学費といったものが、これに該当するとされています。しかしながら、新築祝い等、親族間の付き合いによるものは含まれないというのが一般的です。

・特定の相続人が遺言によって受けた遺贈

遺言書により「遺贈を特別受益には含まない」旨の指示がなければ、遺贈によって受けた財産は、すべて特別受益として扱われることになっています。

特別受益の計算方法(3ステップ)

特別受益がある場合の具体的な相続分の算定方法については、上記民法903条1項で規定されていますが、具体的には以下のとおり算定することとなります。

手順1:みなし相続財産を計算する

みなし相続財産=(相続開始時に有していた財産)+(生前贈与)

被相続人が相続開始の時(亡くなったタイミング)に所有している相続財産に、特別受益者(特別受益を受けた人)が得た生前贈与の金額を加算します。なお、遺贈の場合には、亡くなったタイミングでは故人の相続財産に遺贈された財産も含まれているので、別個に加算する必要はありません。

手順2:本来の相続分を計算する

本来の相続分=(みなし相続財産)×(法定相続分率または指定相続分率)

みなし相続財産を基礎として、各相続人の法定相続分の割合(または指定相続分の割合)を乗じて、各相続人の本来の相続分を算出します。

手順3:具体的相続分を計算する

具体的相続分=(本来の相続分)-(生前贈与または遺贈の資産額)

本来の相続分から、特別受益者が受けた生前贈与または遺贈の金額・資産額を控除して具体的相続分を算出します。

計算例

被相続人Xの相続人は、配偶者A及び子B・C・Dの合計4人です。

Xの相続開始時の相続財産は6000万円でしたが、CはXより600万円の生前贈与を受けており、Dは800万円の遺贈を受けています。各相続人の具体的な相続分はどうなりますか。

・A (6000万円+600万円)×1/2=3300万円

・B (6000万円+600万円)×1/2×1/3=1100万円

・C (6000万円+600万円)×1/2×1/3-600万円=500万円

・D (6000万円+600万円)×1/2×1/3-800万円=300万円

持ち戻しの免除

「特別受益の持ち戻し」については、共同相続人間の公平さを保ち争いを防ぐ意味合いと、被相続人(亡くなった方)の意思を推測する材料の1つになっています。

そのため、被相続人は、相続開始までの間に、「特別受益分を相続財産に持ち戻す必要がない」と意思表示をすることができ、これを「持ち戻し免除の意思表示」と言います。

民法第903条第3項で次のように定めています。

「被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。」

したがって、被相続人が持ち戻し免除の意思表示をしたときは、その意志に従って持ち戻しはしないで、特別受益を受けた受贈者(生前贈与を受けた人)及び受遺者(遺贈を受けた人)は、そのまま特別の利益を保持することとなります。

また、上記民法903条3項では「遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する」としていますが、仮に遺留分を侵害していたとしても、持ち戻し免除の意思表示が当然に無効になるわけではなく、遺留分を侵害された相続人から、遺留分減殺請求がされなければ、持ち戻し免除の意思表示のとおりとなります。

持ち戻し免除は、生前贈与や遺贈によって、特定の相続人に利益を与えようとする被相続人の意思を尊重するための制度であり、被相続人の意思が共同相続人間の公平よりも優先することとなります。

持ち戻し免除の意思表示の方法

生前贈与に関する持ち戻し免除の意思表示の方法

特に規定が設けられているわけではないので、特別の方式を用いなくとも行うことができるとされています。したがって、生前行為・遺言のいずれの方法でも可能であり、また贈与と同時でなくてもすることができます。

また、意思表示は明示である必要はなく、黙示であってもよいとされていますが、黙示の意思表示が認められるかどうかが問題となる事例も多いため、公正証書遺言などできちんとした意思表示をしておく方がいいでしょう。

遺贈に関する持ち戻し免除の意思表示の方法

遺贈自体が遺言でされる行為であるため、持ち戻し免除の意思表示についても、「遺言によってされる必要があるという考え方」「遺贈と生前贈与を区別しない」という考え方があります。

以上のとおり、生前贈与については、事案によって複雑になるケースもあり、たとえば、法定相続分以上に生前贈与を受けていたり、負債を相続したりする場合などは計算が複雑になります。

また、相続税の申告に際しても生前贈与は検討しなければならず、「相続により財産を取得した者が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から、死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その者の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算する」との規定もありますので注意が必要です。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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