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【弁護士監修】 会社社長の遺産相続ですべきこと、注意すべきこと

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年03月29日
 会社社長の遺産相続ですべきこと、注意すべきこと のアイキャッチ

父親が急に亡くなったため会社を継ぐことになった。あるいは経営者の父親ももういい年齢なので、引継ぎを真剣に考えたい。そのような時に注意すべきポイントがいくつかあります。正しい知識を知っておくことが大切です。

何が相続財産になるのか

 故人が会社を経営していた場合の相続ですが、その会社が個人事業であった場合と会社法人組織であった場合で大きく違います。
 法人であった場合、会社そのものを相続する、というわけではありません。会社そのものは法人の持ち物であり、故人の持ち物ではないからです。

 相続の対象となるのは故人の持っていた株式(株式会社の場合)や出資持分(有限会社の場合)と、会社とは関係のない個人的な資産です。代表取締役という役職は亡くなった時点で消滅しますので、引き継ぐことはできません。
 あとは会社への貸付金があれば、それも相続対象となります。

 個人事業であった場合、法的には一般的な相続と同じになります。すなわち事業に関する財産も、すべて個人の財産とカウントされるので相続対象となります。
 その場合、相続者間で話し合いをし、分配を決定するわけですが、この時、事業に必要な財産を分配してしまうと困ったことになってしまいます。分配された全員が事業に関わっているならともかく、普段かかわりのない人が相続した場合、たとえば会社のある土地を勝手に売ってしまった、なんてことにもなりかねません。

 事業を引き継いでいきたい場合は、事業に関わる財産を、後継者一人で相続するというのが一番スムーズなやり方です。
 しかし、相続者間で相続額に大きな差が出ると争いのもととなります。本当に事業を受け継いでいく気があるのかきちんと考えて、相続者間で納得のいくように話し合うことが何よりも大切です。

株式の相続

 株式を相続するということは会社の株主になるということです。株主は会社に対して強い発言権を持っており、会社が重要な決定をするためには株主総会が必要になります。代表取締役もこの株主総会で決定されるため、十分な株式を所有していなければ他人が代表取締役になってしまうこともあります。

 発言力の強さは、所有している株式の量により決まります。もし今後会社の方針に積極的に口を出したい、あるいは経営者になりたいというのであれば、他の財産をなげうってでも株式を受け取ることに重点を置くべきです。
 会社に関しては誰かに任せたい、正当な額の遺産がもらえればいいというのであれば、株式は他の相続者にまかせて、自分は同じ価値の他の財産を受け取るということもできますし、将来の値上がりを見越して株を確保しておくという考え方もあるでしょう。

 ただし、後継者でない人間が多くの株式を所有するということは、後継者の所有する株式が少なくなるということであり、発言力が弱くなるということです。
 遺言書で指定がない限り、遺産の相続は相続人の間で話し合って決めることになります。その時受け取る金額はもちろんのこと、会社の将来を見据えた分配をするよう心がけましょう。

貸付金の相続

 貸付金とは故人が会社に貸したお金のことです。本来は故人の資産であり、回収可能であると考えられるので、これも相続の対象になります。

相続税

 株式を相続する場合には、当然ですが相続税がかかります。そして相続税は相続する金額により変わります。株式の値段は毎日少しづつ変わるものです。その株式にいくらの価値があるのかきちんと把握しておかないと分配することもままなりません。きちんと把握しておきましょう。
 まずは上場株式なのか非上場株式なのかを確認しましょう。

 上場株式の場合、取引所での株価で評価します。
 ・評価する日の終値
 ・評価する月の終値の平均
 ・評価する月の前月の終値の平均
 ・評価する月の前々月の終値の平均
 この中で最も低い金額として評価します。

 非上場株式の場合はいくつかのやり方があるのですが、大体は3パターンにわかれます。
 ・類似業種批准方式:規模の大きな会社の場合は、業種の似ている上場会社の株価を参考にする。
 ・純資産価格方式:規模の小さい会社の場合、株主一人の分配額で評価する。
 ・併用方式:中規模の会社の場合、上記2つを一定割合で折衷する。

 また貸付金に関しても、同様に相続税がかかります。たとえ回収できる見込みがなくとも、回収可能なものとして計算され、課税されます。そのような場合には債権の放棄を考えた方がよいでしょう。これは相続の放棄とは違い、貸付金だけをなかったことにすることができます。帰ってこないお金のために税金を払うのは考え物です。

 こうして正しい評価を決定したのち、遺産分配となります。遺産分配は基本的に相続者間で話し合って決めるものですが、一応の基準というものもあります。
 これを法定相続分というのですが、それによると配偶者に1/2、残りを子供たちで等分となっています。これは「このように財産を分けるのが一番良い」という基準なのですが、あくまで基準にすぎないので、そうしなければいけないわけではありません。

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生前贈与という選択肢

 生前贈与にはいくつかのメリットがあります。

 一つ目は、後継者が明らかなことです。遺産分配で親族がもめる前に後継者に全部渡してしまえるわけです。

 二つ目は税金を抑えられるかもしれないという点です。贈与の際の株式の価値は相続する際と同じようになります。株価の低いときに贈与すればその分税金も低くなるということです。

 贈与税に関して言えば、年間110万円までは非課税ですし、税金を相続税で支払う相続時精算課税制度というものもあります。
 注意点としては、贈与したつもりでいても認められないケースがあるということです。贈与を行った記録をきっちりと残すこと、また贈与財産は受け取った側が管理することなどが大切です。

 たとえば、親が子供の名義で作った口座に毎年少しずつお金を入れていた場合、子供がその口座を知らなかったり、通帳や印鑑を持っていなかったりすることがあります。この場合、あくまで親が名義を借りていただけで親の財産であると見なされ、相続税がかかる場合があります。
 また、生前贈与を受け取ったうえで遺産も等分に分配では納得しない相続者も出てくることでしょう。トラブルを避けるために遺言状を残すなどして対処するべきです。

死亡退職金の扱い

 会社によっては死亡退職金を支払う制度があります。これは故人が在職期間中に亡くなった場合に支払われるお金のことで、退職手当金や功労金とする場合もあります。
 死亡退職金を支給する規則で、誰が請求できるのか、細かく決められている場合があります。そのような場合、その請求権は受取人の固有の権利とみなされるため、遺産分割の対象になりません。
 細かい取り決めがない場合は、その時々によって個人の権利とされる時もあれば、分割の対象とされる時もあります。話し合いで決まらなかった場合には専門家の判断を仰ぎましょう。
 また、どちらの場合にも相続税の課税対象となります。

まとめ

 会社法人なのであれば後継者に株式を集中させることを、個人事業であれば事業に必要な財産を一人の後継者に相続させることを念頭に置きましょう。
 猶予があるのであれば贈与などの節税も賢く取り入れるとなおよいです。

 また、事前に説得力のある遺言書を書いておくというのも効果的です。
 最終的には相続者の間で話し合って決めることになります。事業を継続するためにどうすればよいのか、真剣に考えてください。会社は単なる財産ではなく、そこで働いて生きている人がいるということを忘れてはいけません。

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