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虎ノ門の法曹界48年のベテラン弁護士安藤武久先生に、弁護士としての極意をきいてみた。

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更新日:2019年07月26日
虎ノ門の法曹界48年のベテラン弁護士安藤武久先生に、弁護士としての極意をきいてみた。のアイキャッチ


安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士

弁護士としてのキャリア48年を迎えた、安藤武久弁護士に今回インタビューをさせていただきました。

案件の大小に関わらず、一般の方の紛争や悩みを解決する。
安藤武久弁護士の言葉には重みがあります。

48年貫いてきた弁護士としての正義や、先生が大切にする信念をインタビュー記事を通して、お伝えできればと思います。

安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士

 

■安藤武久法律事務所に関して

---安藤先生の事務所の特色、強みを教えてください。

私は、いわゆるマチの弁護士ですから、特殊な事件をやっているわけではなくて、一般市民の間で起こっている紛争を解決しています。

特色といっても、ただ私は交通事故は弁護士になった時から加害者、被害者問わずやっていますし、今でもやっていますので、交通事故はそれなりに精通しているつもりです。
あとは私の手掛けている事件としては離婚、相続、債務整理とか自己破産、その他にも明渡しとかなど、一般的に私の事件で多いのは、交通事故、相続、離婚、債務整理、大体これが割合的には多いとは思います。
交通事故で被害者側、加害者側っていう保険会社の仕事を一手にやっているっていう事務所もありますけど。
私も前は交通が結構多かったですけどね。

---現在は先ほど仰っていた相談、案件が多いのですね。

相談が多いのは先程言った五本柱の交通事故、債務整理、離婚、相続関係、この四つぐらいが割合的には多いと思います。
金銭の貸借とかっていうのもありますが、私の主義でやらないのは金貸しの事件の貸したほうで、これはやらないです。

---なるほど。こちらの事務所は設立してどれぐらいになるんですか?

これは新築でできた当時から入ってますからもう11年目に入ったかな。

---その前事務所はどこだったのですか?

すぐ近くの弁護士ビルでした。
ここの虎ノ門法曹ビルは1階がクリニックなどがあり、2階から9階までが法律事務所で、その上がレジデンスになっているんですよ。

---住居棟になっているんですね。

その住居部分にも事務所があるみたいです。
なぜそういうふうにしたかと言うと、余計な話かもしれませんけども、これを造るために建築確認を下ろす時に、港区っていうのは昼間の人口が多いけど、夜の人口は少ないのです。
例えば住民税なんか入らないわけです。
今は違うと思いますけど、当時の建築確認の関係では、住居がないと確認が下りなかったらしいんですよ。

---そうだったのですね。

私がなぜここに事務所を開設したかというと、9階に虎ノ門法律経済事務所っていう大きな事務所の所長をやっている千賀さんという方がいるんですけど、私の同期生なんですよ。
千賀さんからお誘いをいただいて、このビルに事務所を構えたわけです。

安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士
安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士

 

■安藤武久弁護士について

---安藤先生が弁護士を目指した理由、キッカケって何ですか?

申し訳ないですけど、特別、人権だとか、そういうのは学生の時はあまりなかったです(笑)。
4年生になって、みんな友達は就職するんですけど、ただ私はサラリーマンにあまり向いていないんじゃないかと思っていたんです。
それで法学部でしたし、司法試験をやろうと思って、法律で人の役に立てればという動機はありました。

---意識し始めたのは、その大学の卒業の時なんですね。

4年生なので、私は遅いですよ。
入った時は別に司法試験なんか目指してやるなんて考えていなかったですし、本格的にやり出したのは3年の秋ごろじゃないかな……それか4年になったぐらいです。

ですから最初から法学部に入って司法試験を目指そうとか、そういう意識は残念ながらなかったです。
私の本当の大学の友人で弁護士になった人はいないですもんね。
みんなサラリーマンですよ。
それも昭和40年卒で、大学は早稲田なんですけども、みんなそれなりの一部上場の銀行だとか、保険会社だとか、そういった所に就職はしたと思います。
昭和40年と言ったら、日本の高度成長期ですよ。
オリンピックが終わって、こういう状態ですから経済も活況だし、給料は上がるし、確かにいい時期だと思いますよね。

---その当時だと、一般の就職はかなり良かった時期ですか?

そんなに悪くはなかったです。
私の友達でも就職にあぶれたとか、そういう人はいなかったです。
本当に第一希望の所に行ったかどうかは分からないけど、今つき合っている私の同級生なんかはそれなりの所へ行ったと思います。
メーカーに行った人もいないわけではありませんけど、多いのは銀行とか保険会社なんかの金融関係が多いです。
やっぱり仕事柄、堅いですからね。

---そのような当時、先生は就職ではなく弁護士を目指すことになったと思うのですが、そこで迷いはなかったんですか?

別に迷いはないです。
私はそれまで大学も浪人しなかったし、試験に落ちたことがないから。
難しい試験だろうなって思ったけど、受かるとは思っていたけどね。
だけど最初に4年生の時に受けたけど落ちてしまい、はっきり言ってショックでしたよね。
それで就職もしないでこれでいこうと。
私は4年生で受かっていないので、ストレートで受かっているんじゃないんですよ。
在学中に受かって卒業と同時に研修に行ったという、いわゆるエリートコースというか、そうではなくて挫折をしていますので。
私が試験に受かったのが昭和42年なんですよ。

---ということは卒業から2年後?

そうです。
最初の昭和40年の卒業の年は、いわゆる択一試験というのに落ちてしまい、択一試験というマル・バツの試験と、論文式試験と、最終的に口述試験の三段階があったんです。
昭和41年の時は択一試験には通ったんですけど論文で落ちてしまい、それで昭和42年の時に全部受かったんです。

今もそうだと思うんですけど秋に最終結果が出るので、その年の秋に試験に受かって、研修所で修習生になるのは翌年の4月からになるんです。
それで今の修習期間は1年間ですけど当時は2年間やって、それで昭和45年に2回試験という研修所を卒業する試験があって、それに通らないと次に進めないので、登録したのは昭和45年の4月です。

---卒業してから5年後に登録をしたということですね。

そうです。
在学中に受かったという、いわゆるそういうエリートじゃないですし、悔しい思いもしましたよ。
ただ、今もそうですけど当時の合格者の平均年齢からしたら、もちろん低いと思います。
当時の合格者の平均年齢は27~28歳になっていたと思います。

---大学4年の時だとかなり早いですね。

それは22歳ですから、弁護士の一番最短は、当時の修習は2年間だから24歳になりますよね。
大学も浪人しないで、研修所もストレートで出ると、24歳で裁判官になり、検事になり、弁護士になっています。
私がなったのは26か27の時かな。

---当時の試験はかなり難関でしたか?

難しかったですよ。
最終的に受かったのが、確か537人ですけど、受験者は2万5~6000人はいたと思います。
合格率は数パーセントですから、非常に難しいと思います。
今よりも全然難しい試験と言われていますね。

---先生がお仕事の中で、大切にしていること、気にすることってどんなところですか?

このホームページにも書いてあるんですけど、私は法的な知識のない人の法的な権利を実現するっていうこと、依頼者のためにやる、人のためになる、そういうのを心掛けているんです。
仕事を丁寧に、大きい事件とか小さい事件とか関係なく誠心誠意対応してやるというのが私の基本的な考えなんです。

ただ私は依頼者の要望とか、そういうものを実現しようと思いますけども、それには二通りあって、一つは法律的に実現できるもの、裁判とか交渉とかのものと、もう一つは依頼者の希望通りに法律では実現できないものがあると思うんです。
ですから、私はそれを住み分けることが大事だと思うんです。

これは法的には無理ですよと、完全に無理なものもあって、依頼者も無理なことを言ってくることもあります。
でも法的にいけるんじゃないかというんだったら、私はそのリスクも負いながら裁判とか、その人の希望に沿ってお勧めすることはあります。
裁判になってもそうで、本人が希望していること、こういうことを裁判所に聞いてほしいということは、なるべく書面に書いたりなんかはします。
法律的に全くむちゃなことは私はそんなのは正直認めませんけど、その辺の住み分けはきちんとするつもりなんです。
私の基本的なポリシーとしては、裁判を避けて話し合いで解決をしたいというのを考えてはいますけど、なかなか交渉でまとまらないものもありますよね?

---全部が全部そうとは限らないですもんね。

残念ながら、そうなんです。
それは法的な手続き、いわゆる裁判とか調停とか、そういうものを選択せざるを得ないということはあります。
その選択も私がサッサと独断で決めるんじゃなくて、依頼者に丁寧に説明して、了解を得て決めるんです。

弁護士は依頼者の了解を得ないとできませんから。
受任の範囲内ならいいですけど、そうじゃない場合は当然、依頼者に説明して、依頼者が納得した上でどういう法的手続きを取るかっていうことを決めるっていうのは基本的な考えですから。
これは非常に抽象的ですけど、私はそういうつもりで依頼者のためにやっています。

安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士

---とてもシンプルでいい理念ですね。

本当にシンプルですよ。
そのようにして依頼者の信頼を得て来たと思っていて、それの積み重ねで来ているわけです。
みんな大きな事件をやりたいですよ。

でも私の付いた先生が「安藤君ね、来た事件は大きい、小さいっていうのは考えないで、小さい事件でも一生懸命やってそれなりの成果を出せば、それがいつか大きな事件で紹介されるとかっていうことが必ず来るよ」ということを言われて、現にそういうこともありました。
最初にやった事件は小さくても、後から信頼されるというのはありました。

そういう意味では、私の所へいろんな紹介で来た人が、それなりのことをやって、その後の問題を別の弁護士に頼むっていうことは普通はしていないと思うんですよ(笑)。
依頼者だって誰を選んだって別に構わないわけですよ。
「今回は安藤先生はやめてA先生に」となっても、「ああ、それはどうぞ、どうぞ」って言うんですけど、そういうことはないんじゃないかというぐらいの自負はあります。
自慢じゃありませんけどね。

それともう一つは、若い弁護士にも言うんですけど、裁判でもやるべきことをやらないと判決が出た後で、ああいうことをやっておけば良かったとか、それが認められるかどうかは別として、悔いのないように、例えば出すべき証拠を忘れたということがないように、出すべき証拠は出すと。
弁護士の仕事は厳しいですよ。

駄目な事件は駄目ですけど、でも結果に対しては残念ながらそれなりの批判は受けざるを得ないですよ。
私だって、やった事件は全部勝っているとは言えませんし、残念ながら、くやしい思いをして負けた事件もあります。
ですが、負けても自分なりにやれば依頼者は評価してくれると思うんですよ。
そういう人はいて、「そこまでやってくれて駄目なら、これは日本の法律制度だから諦めます」という人もいます。

だから、当たり前のことですけど、やっぱり勝つべき事件は勝つし、負けるべき事件は、やっぱり負けるわけです。
お金を借りたことが間違いなければ、返さないといけないじゃないですか(笑)。
弁護士に頼んだから何でもうまくいくと思っている人もいるんだから。
そうじゃなくて、それは時効とかは別ですけど、借りたことが間違いなければ返さなくちゃならないというのは、どんな弁護士でやったって当たり前なんです。
問題は返し方なんですよ。
いっぺんに返せないって言うんだったら、じゃあ和解に持ち込んで分割で返すとか、一括を3割カットして話を付けるとか、そういうことだと私は思います。

---言葉に重みがあります、ありがとうございます。話題を変えて、先生の趣味はなんですか?

しょっちゅうやっているわけではないですけど、私はゴルフをやるんです。
でもゴルフぐらいで、あんまり私は趣味ってないんです。
ここ半年ぐらいは、どういうわけか昔の西部劇のDVDを買ってきて見ているんですよ。

ここ半年ぐらいは、どういうわけか昔の西部劇を買ってきて見ているんですよ。

---それは先生の最近の楽しみですか?

最近の楽しみです。
昔のマカロニ・ウェスタンっていうイタリア製西部劇なんです。
マカロニ・ウェスタン聞いたことない?
年代が古いですが、イタリア製西部劇なんです。

普通西部劇っていうのはアメリカなんですよ。
ジョン・ウェインとかゲイリー・クーパーとか、もちろんそういうのも見ますよ。
イタリアのマカロニで、マカロニ・ウェスタンって一時はやったんです。
それをどういうわけか、半年ほど前から見るようになって。

---先生はこの前、大きい病気をしないでこれまでやってきたと仰っていたかと思いますが、体調管理などかなり気をつけているのですか?

いや、実はあんまりしないんですけど、ただサプリメントとかそういうものは飲んでいます。
私は仕事に生きがいというか、意欲を持ってやってきたっていうことはあると思うのです。
特別、健康のために何かやる、例えば毎朝歩くとか、体操をするとか、ジムに行くとか、そういうことは全然していませんので。

---体調管理も気持ち、メンタルの部分が大切だということですか?

そうです。
やはりこの仕事は人と会ったり、裁判とかで常に緊張状態でストレスがたまるんです。
最近、時々若い弁護士でもうつになったりして不祥事を起こすっていう人もいるんですよ。
何が原因かはよく分からないですけど、家庭のことじゃないと思うのでたぶん仕事のことだと思うんですけど。

---職業柄、精神的に大変な場面が多いお仕事だと思うんですけど、切り替えなど何かしているんですか?

切り替えというか、弁護士の仕事は夜中だってやりますし、キリがないんですよ。
だから夜も遅いですけど、でも、どこかで今日はここまでとか、メリハリをもってやっているつもりです。
ただ、やはり家に帰っても気になる事件はあるんですよ(笑)。
あなたも仕事上あると思うし、人間誰でもあるけど、家に帰っても気になる事件はありますよ。
それは、もう弁護士ならしょうがないなと思って、宿命ですよ。

---それは逆に割り切っている部分もある感じですかね。

そうです。
こういう例を一つ出すと、例えば離婚事件なんか今でもやっていますけど、離婚訴訟っていうのは戦争ですから相手の悪口を当然言うわけで、そうすると悪口に対して反論が来るじゃないですか?
それをまた書かなくちゃいけないんですけど、それは事実だから私たちは分からないんですよ。
それは依頼者から聞かないと、夫婦でケンカしたとかなんとかって、そういうのを準備書面に書くわけです。
忙しい時は、しょうがないから家で夜中にその離婚事件の書面を書くわけですけど、そうすると、夫婦の相手の悪口は必ず出るんですよ。

例えば向こうから来た書面を依頼者に見せると、「とんでもない、こんなことを言って」とか、反論をしたいわけですよ。
そうすると代理人だからそういうのを書くわけですけど、時々「なんでこんな夫婦の関係を夜中に俺が仕事とはいえ書いているのか」と思うわけです(笑)。
でもそれが弁護士の仕事だからしょうがないですよ。
それで私が悔しがったりなんか家でもするわけです。
うちの妻に、「お父さん、なんで、そんな人のために悔しがったりするのよ?」と、言われたこともあるんです。
なんで依頼者は、私がここまでやっているのに分かってくれないんだっていうことがあるんです。

私が良かれと思って言ったことを依頼者が理解していないっていうことで、そういう時につい夫婦だからいろんな会話をしたり愚痴をこぼすと、「なんでそんな人のために」と言われたり、のめり込むクセがあるんです。
弁護士は依頼者のためにやるというのはいいんだけど、ある意味では第三者だから客観的なものの見方もしなくちゃいけないということは、それなりに心得ているつもりなんですけど、私はつい依頼者に情が移っちゃって、悔しい思いをしたり、依頼者が理解してくれないっていうことで、悔しいことは多々ありますね。
そういうことを妻は分からないからね。

安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士

---なるほど。その点も弁護士の仕事で大変な部分ですかね。

私はやはり裁判は残念ながら戦争だと思うんですよ。
だから嫌々というわけにはいかないわけで、それなりの戦闘態勢に入らないと、要するに代理だから、依頼者の前にいて、鉄砲玉の当たる前線に出て行くっていうのが私の考えですから。

今日もやってきましたけど、もちろん裁判で和解をするということもありますよ。
ただ、よく当事務所の若い弁護士にも言うんだけど、和解っていうのは条件なんですよ。
和解って言うのは、一方的に和解っていうのはなかなか難しいので、やっぱり譲歩をお互いにする、歩み寄るということが大事なんです。
それで和解っていうのはやっぱり条件によるわけです。

いい条件で和解したいっていうのは当たり前のことで、そのいい条件で和解するにはどうしたらいいかって言うと簡単なんですよ。
その事件の和解の条件っていうのは勝訴、敗訴の可能性で決まるんですよ。

つまり勝つということになる人は強気に出るわけで、負けるという人は全面敗訴よりも少し譲歩してもらって和解したほうがいいということがあるわけだから、和解をすること自体は私は悪いことではないと思うんですが、和解は条件なんです。
その条件っていうのは、勝訴、敗訴の可能性、確率で条件が原則的には決まるわけです。
そうすると、勝つための訴訟活動をし、勝つという前提でやらないと駄目なんですよ。

---そこでもいい和解に落ちたとしても、いい条件で取れないっていうことですね。

そうです。
例えば、お金を借りたけど返せないので、返せっていう訴訟が来たという場合がありますよね?
確かに借りたことは間違いないけど返してないっていうんだったら、判決だったら返せっていう判決がでるわけですけど、でも、いっぺんには返せないっていう人もいるわけです。
さっきの話なら、分割なら返せるとかいう場合なら和解に持ち込んで「いっぺんには返せないけど分割にしてくださいよ」と言って、分割で話がまとまれば依頼者も納得して安心するわけです。
あとは、例えば分割じゃなくて「どこかから調達していっぺんに返すから、3割まけてくださいよ」とか、こういうやり方もあるんです。
そうすると分割の支払が不履行になるリスクがなくなるわけです。
いつか、どこかで返さなくなったらおしまいだから、だったら少しまけても今一括でもらったほうがいいという依頼者もいますから、そういう希望があればそのようにやることもあります。

 

■お仕事に関して

---今まで多くの事件をうけてこられて、先生の中で印象に残っている事件は何ですか?

これは昭和52年ごろとなっているのかな。
その頃なのかな、弁護士になって10年も経っていないですね。
法律のひろばっていう本にも載せたんですけど。
これは私が実際に担当した事件です。

どういう事件かと言うと、神田駅から歩いて数分の所に土地を借りていて、建物を建ててそこで料理屋やっていたんです。
その建物の所有者っていうのが大手のデパートの課長さんで、その人が借地人で建物の所有者なんです。

でも、実際にその料理屋をやっていたのがお母さんなんですよ。
そのお母さんっていう人は商売っ気のない人で、料理屋をやっていたんだけど、それが傾いてきちゃって、それで借金をつくっちゃったんです。
商売がうまくいかなくて、お母さんがね。
借地だから地代は払わないといけないわけで、上下が50坪ぐらいあったかな。
当時、神田駅はサラリーマンが多いので、サラリーマン向けだったら結構人が来るんだけど、そうじゃなくて昔からの古いお客さんを大事にしていたんです。
それでおかしくなっちゃって、それで金融機関に2~3000万円の借金をこしらえちゃったんです。
そこへ乗り込んで来たのがいて、ある韓国人で近くで飲食店を何店舗か持っている人なんですけど、その彼は傷害の前科十何犯というやつだったのです。
その韓国人が無断で増築なんかをしているので、地主から建物収去土地明渡の訴訟を起こされちゃたんです。

それは私は担当はしていないんですけど。
その時に、その地主さんと、いずれ私の依頼者になる人との間で和解ができたんですが、それがどういう和解かというと、建物を取り壊して更地にすれば、当時のお金で二千数百万を払うというものだったんです。
昭和50年ぐらいの2000万円だと大変なお金ですよ。

---当時だとかなりの大金ですね。

確か2500万円だったかな、とりあえず手付みたいなのを2200万円、だから300万円を払ったっていう、そういう和解ができているんです。
ところが、その韓国人がそこを占拠して商売をやっているから、更地にならないんです。
更地にするっていうのが条件なので。
更地にしてビルでも建てるんじゃないですかね。
そういう時に、私がある人から相談を受けて、これを何としても追い出したいと。

---要は立ち退きになるんですか?

そうです。
それで、たしかその人と建物の賃貸借をしていたんですけど、賃料も払っていないと。
それで私が「家賃を払わないなら契約を解除して、立ち退きをすればいいんじゃないの?」って言ったんだけど、要するに大変な人だと、こういうことを言われたわけです。

私も家族がいるから、えらい人になっちゃったなと思ったんですけど、頼まれたから明渡しをやったんです。
それで裁判所に来たら本人が来て、それでワーワー、ワーワー言っているんです(笑)。
もちろん私は一緒に帰らないですよ。
一緒に帰って刺されたりしたら大変だから、終わってそのまま法廷にいて待って、帰った頃に帰ると(笑)。
そのうちに来なくなって、「明け渡せ」っていう判決が出たんです。
それで滞納している賃料が200万円ぐらいあったのかな。

それで、いわゆる強制執行をすることになったんだけど、私の依頼者である建物の所有者が「いや先生、ちょっと待ってください。今はできません」と、「おふくろが働いているので、強制執行をするとおふくろに危害が加えられる恐れがあるから、ちょっと今はやらないでくれ」と、こういうふうに言われたから、依頼者がやらないって言うんだったらしょうがないと思って、待って、それからその判決を持ったまま1年かな、2年かな……。

---かなり長期化した事件だったのですね。

そうです。
そうしてたら、また電話がかかってきて「おふくろが倒れて入院しちゃっている」と、「このままじゃ地代は払うわ、家賃は入って来ないわ、建物の税金はかかるわでは敵わないから、私も覚悟を決めたから強制執行をしてくれ」って頼まれたんです。
その時に、その韓国人が強制執行に来た年寄りの弁護士を刺して刑務所に行ったっていうことも私は聞いているんですよ。

それで依頼者が「私も覚悟を決めた」と言うから、私も危害を加えられたりとか、家族もいるしと思ったけど、依頼者がそう言っている以上、私はやりませんっていうわけにはいかないじゃないですか?
本件を受任する前に最初の和解をした訴訟の代理人がいるので、最初、私が頼まれた時に「その地主との間の訴訟をやった弁護士が事情もよく知っているんだから、その人に頼めばいいんじゃないの?」って言ったんですよ。

これが今でも一番というか、とても印象に残っています。
でも結局、出て行ったので、たぶん最後はきれいにしてお金を依頼者にあげたと思いますよ。

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---では、それで解決はしたんですか?

解決はしました。
それが今までで印象に残っている事件です。
普通の事件ですけど、怖かったですよ。

---それは確かに。

あなたも知っていると思いますけど、一弁の元会長の岡村勲先生っていう、被害者の会をつくった人の奥さんが殺されたんですよ。
岡村勲先生って有名な先生だから、もう80過ぎの先生ですけど、あの先生は一弁の会長までやった立派な先生で、証券会社の顧問かなんかをやっていたんです。
その殺人の犯人が証券会社になんか文句を付けては、証券会社は金で解決していたらしいですけど、岡村先生はそんなお金を払うなと、こういうふうに止めたらしいんです。
それを逆恨みして、岡村先生の家に刃物を持って行ったらしいんです。
それで岡村先生はいなくて、奥さんが出て殺されてしまったんです。
そういう事件があったんですよ。

---そうなんですね。

それで、その事件の傍聴に毎回行っていたらしいんです。
私は岡村先生の講演とかも聞いたけど、要するに刑事事件っていうのは、検察官と弁護人とか被告人との争いであって、被害者は全く蚊帳の外というか、参考人に過ぎないんです。

これは話しに聞いたことですけど、さっき私が言ったように、岡村先生は自分の仕事で危害を加えられるのは、ある程度しょうがないんだけど、全く何にも関係のない妻が、自分がこういう仕事をやっているために殺されたというので、すごいショックと申し訳なさで自殺もしかけたらしいんですが、娘さんに止められたらしいんです。
そういう経緯もあって、毎回裁判に出ていたんです。
そうしたらショッキングなことがあって、それは岡村先生が涙ながらに話したことがあるんです。
傍聴席にいて、当たり前だけど傍聴人は何もしゃべれないんですよ。
傍聴人がワーワー言ったら、裁判所から退廷させられますから。

そうしたら、その被告人が「奥さんが自分のほうに跳びかかって来たから俺はやったんだ」というようなことを言ったらしいんです。
自分の妻はそんな他人に跳びかかるような人じゃないと、とんでもないことを言っていると思ったんだけど、柵の外の傍聴席では一言も言えないんですよ。

---言えないですよね。

被害者はそれに対して全く何も言えないというのはおかしいじゃないかと。
そういうことがあったので、被害者の会をつくって、被害者って参考人ですから、被害者が法廷の柵の中に入って意見を言ったりする被害者参加制度という、これは法律で作らないと駄目なので、この立法運動を、その遺族を集めた会をつくってやったんです。
それで今は、その被害者参加制度っていうのはできているんです。

だから被害者の遺族は、参加人と言って、法廷の検察官の横に座って、質問もできるし、「死刑にしてくれ」とか、そういう意見も言えるんですよ。
そういう制度を作ったというのは、岡村先生や、その仲間の弁護士のような被害者側をやっている弁護士がいるわけですよ。

逆に加害者側をやっている人もいますし、死刑廃止論者もいれば、いろいろありますけどね。
それはあくまでも、岡村先生は、全然そういうことに関係のない奥さんが、自分がこういう仕事をやっているために、そういう被害があったということで大変申し訳ないと。
自分が被害に遭うのはある程度は覚悟しているんだけど、全く関係のない一専業主婦の奥さんが、自分がこの仕事をやっているために命を絶たれたっていうので、大変申し訳ないという念があったんでしょうね。

そういう事件もあったんです。
だから、私がさっき言った脅迫もそうですよ。
私もある程度覚悟していますから。
変なやつだということは承知で、そんなの正義が許さないとか(笑)、今だったらやりませんよ。

私は、そういうことを死んだおふくろに言ったら、怒られたんです。
「武久、そんな仕事やっちゃ駄目だよ。もし家族や子どもが被害に遭ったらどうすんのよ」って言われて、「いや、だけどおふくろ、俺は正義のために」とかって言って、「正義も何もないでしょ」って(笑)。

---基本的な考えとして、そういうことですよね。

やはり判決を取ったら、その法に従って強制執行もできるわけだから、それが法ですよ。
法がなければできませんよ。
私がいきなり行って、「明け渡せ」なんて言ったって話にならないじゃないですか?
やっぱり法の力を借りて、強制執行という判決の執行力によって、依頼者の権利を確保するということになるでしょうし。

安藤武久法律事務所 安藤武久 弁護士

■最後に

---弁護士歴48年をむかえ、これまでの弁護士生活を振り返ってみてどうですか?

一言で言うと、私は非常に生きがいも感じているし、この職業を選んだという選択は間違ってはいなかったと思います。

それはなぜかと言うと、当初は裁判官とか検事も考えていたんです。
なぜ弁護士を選んだかと言うと、裁判官の仕事も大事な仕事ですけど、裁判官っていうのは法廷に現れた証拠、事実しか分からないんですよ。
ところが事件っていうのは、法廷に現れないこういう話とか、そういう事件もあるわけです。
だから裁判官っていうのは法廷に現れたものを交通整理して結論を出すという仕事で、これも大事な仕事だと思うんですよね。

ところが、弁護士はそうじゃなくて、検事もその点は弁護士と同じなんですけど、まず生の事実を聞いて、それを自分が法律構成して、それに見合う証拠を集めるわけです。
自分の頭で、この事件はこういう法律構成にしよう、これについてはこういう証拠を集めようという感じでやって、それは検事も同じだと思うんですよ。

そこが全然違うんです。
だから裁判に現れたものが、全部、生の事実ではないんですよ。
特に私は社会に出て働いたっていうことがないですし、人間的にも幅の狭い性格だから、正直言って、今後、裁判官や検事では、それはそれなりの仕事ですけど、人間的に成長もしないんじゃないかと思ったんです。
ところが弁護士は、いろんな人と接するわけで、中には、お金が有り余っている人もいますし、明日の飯も食えないっていう人もいて、本当にいろんな人がいるんですよ。
そういう人と私は接したほうが、人間としても幅が広くなるんじゃないかということと、それから、さっき言った仕事の中身で選びました。

私は人と話をするのが嫌いなほうではないですし、人を相手にするわけだから。

それで人のためになるという、法律的に無知だって言うと言葉が悪いかもしれないですけど、法の知識でそういう人の権利を実現すると、そういうのがいいんじゃないかと思ったんです。
私は確かに社会経験がなかったから、裁判官の生活なんていうのは、裁判所と官舎の往復だし、検事もそんな感じですけど、弁護士はそうではないわけですよ。

そういう意味で、自分は社会経験がなくて、性格的に幅の狭い性格だし、もっといろんな人と話をして、人間的になかなか大きくなれないんですけど、なるのは弁護士が向いていると思って、それで三つのうち弁護士を選んだんです。
それは今、考えると間違いではなかったと私は思っていますし、もちろん後悔もしていません。
それで、やっぱり困っている人、いろんな人の事件をそれなりに解決すると、非常に感謝されるわけですよ。
そういうのはお金には代えられない、やりがいですかね。

---48年のキャリア、すごいですね。先生の今後のお考えをお聞きしても宜しいでしょうか?

私は依頼者があるので、パッと辞めることができないから、頭が利いて、人さまの役に立つ限りは、たぶん仕事が少なくなってもこのままやると思います。
明日から定年で事務所を畳むとか、人に譲るとか、そういう考えはないです。

少なくとも、自分を頼ってくれて、人の役に立つ限りは、仕事が減ってきても、やっぱり自分ができるんだったらやると、ところが依頼者に迷惑を掛けるようになったら私はやりませんし、それはもう辞めざるを得ないというわけです。
その辺の見極めを、何ともつけないとね。

---最後にインタビューの記事を見た方や、相談に来られる方に一言だけメッセージをいただければと思います。

私の事務所に来る人は縁があって来るので、紹介者が多いですけど、紹介者じゃない人なら絶対にやらないということはしないんです。
そういう縁は大事にしたいと思っています。

だから、何かの縁で私の所に来たら、私はその人のために法的な知識を駆使して、その人たちの権利を実現するために誠心誠意やりますし、「依頼者のためにやる」と、これが私のモットーなんです。
まずは、悩み、法律的に相談があるのであれば、お気軽にご相談ください。

12094の画像

安藤 武久 (東京弁護士会所属 / 安藤武久法律事務所)

当職はどのような事案でも、誠心誠意対応させていただきます。 事件に大きい、小さいというものはありません。 一般の方の間で起こる紛争の解決に力を入れておりますので、何かお悩みやトラブルがありましたら、お気軽にご相談ください。 長年の弁護士としての経験を活かし、ご依頼者様の解決にお力添えいたします。

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