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【弁護士監修】遺産相続で寄与分・特別受益・遺留分などで複雑に揉めている

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2018年12月29日
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妹から突然、遺産である全ての現金を請求された

少し長文となりますが、遺産相続問題としては、家族が豹変することが稀にあります。

今回は、そういった事例をご紹介させて頂きます。

父が亡くなりました。母と父は離縁しており、相続人は、姉(長女)と私(長男)、弟(二男)、妹(二女)の子供4人が相続人です。

父が脳梗塞を患い、1人で生活が出来なくなりました。しかし、私に比べれば比較的近く(車で30分圏内)に住んでいた他の姉弟らは、様々な理由で面倒を看ることは出来ないと断ったため、私は長年勤めていた仕事を辞めて、面倒を看ることを決めました。それにあたっては、実家は東北で、私は東京で生活を築き、家庭を持っていましたが、家族一同で移住することとなりました。しかし、自分の家族を説得するのは、本当に大変でした。一時は、一家離散になることを危惧して、眠れない日もありました。

結果的に、しぶしぶ家族も同意してくれ、移住することになりましたが、今度は移住先での新居を探すのも大変でした。将来を考えれば、やはり戸建を購入することを考えたのですが、東京の自宅の売却もなかなか決まらなかったため、ローンも組めず、私の子供たちも大学に進学するタイミングもあり、家計も火の車状態でした。

これから大変な思いをする父には相談できないと思い、父には一切相談をしていなかったのですが、私の様子がおかしかったのか、誰かに聞いたのかは、今も分かりませんが、突然父の方から、移住までしてきて、新居を探すのは大変だろうと気を使ってくれて、丁度父名義の空家があるので、古い家だが良かったら使ってくれと申出がありました。私たち家族は、その申出を受けることにしました。

それから新天地での生活がはじまり、父が亡くなるまで15年間面倒を看ました。父と同居することに家族も賛成していたのですが、父は頑なに拒んだことと、自分の死に場所はここに決めているとのことでしたので、父の意志を尊重し、父が意思判断出来なくなってからも施設に入れることなく、亡くなるその日まで、家族で協力し自宅から実家に通いながら看病もしました。

父は、意思判断が出来なくなる前に、私たちには、いくら感謝してもしきれないと、父名義の不動産を全て譲り受けました。その不動産のおかげで、今の私たちの生活が出来ていると言っても過言ではなく、決して裕福な生活ではありませんが、家族皆幸せに生活が出来ているのは父のおかげです。

ですが、父が意思判断出来なくなってから亡くなるまでの6年間は、身体的にも精神的にも大変苦労したのは正直な話です。

父の財産を勝手に触る訳にもいきませんから、意思判断が出来なくなってからは、父の口座から支払われるもの以外は、私が立て替えて支払う必要もありました。また夜間に徘徊し警察やご近所の方に迷惑をかけたり、奇声をあげる、奇行、暴力、暴言は毎日で、地獄のような日々でした。あまりの酷さに、私の妻は、一時期精神病を患い、病院通いをした程です。妻にも大変苦労をさせてしまいました。今でも介護に協力してくれたことには、頭が上がりません。

ですが、亡くなる直前に、父の「ありがとな」の一言で、私は苦労はしたけど、父を最後まで看取ることが出来たことは、本当に良かったと救われました。涙が止まらなかったことを、思い出します。

しかし、私たち家族の苦労はこれで終わりではありませんでした。

父が亡くなり、葬儀は私が喪主を務め、四十九日も無事に終わりました。ですから、父も天国で落ち着いた頃だろうと残った現金・預貯金を父に感謝しながら姉弟で平等に分けようと話し合うことにしました。

父も「残ったお金は平等に分けて、くれぐれ揉めないように」と、元気な頃から姉弟全員に言っていましたし、隠し事が嫌いな父でしたから、隠し事は一切したくなかったので、金庫を開けるのも姉弟全員揃ってから行ないました。

父は2000万円程を遺してくれていました。姉弟4人ですから、1人500万円で分けることが出来ます。全員で協力して銀行の解約手続き等を行い、相続人代表で私が現金を預かりました。

私にも孫が生まれ、丁度お金も入用でしたので、天国の父にまた感謝しなければと思っていました。

それから一週間も経たないある日、1通の内容証明郵便という聞きなれない手紙が、これまた○○○法律事務所という全く縁のないところから我が家に届きました。恐る恐る開封してみると、何と妹が依頼した弁護士からの手紙だったのです。

内容は、遺産の現金2000万円は妹が全て相続するので、指定する口座に振り込んでほしいという様な内容でした。

更に間髪いれずに、遺産分割協議書という物が送られてきました。上記の内容に合意されるなら、署名・実印による押印をするようにと書いてありました。

目眩がしました。しかし、何度読み直しても上記の内容で間違いありませんでしたので、もちろん納得がいかず、弁護士に、なぜ、このようなことを妹が主張しているのか問い合わせました。

妹の主張はこうです。

『既に姉、私、弟は生前に相当財産を貰っている。その為、何も貰っていない妹は不公平なので、残った遺産を全て相続する権利がある』ということです。

信じられませんでした。なぜなら実のところ、正直姉弟の中でも妹は、父と一番仲が悪く、面倒を看る話をした際も早く逝けばいいのにと言わんばかりの言動で私と大喧嘩した程でしたし、幼少の頃からやんちゃをしており、両親にも迷惑をかけ、家族の中で一番手がかかったと言われていました。

そんな妹でしたが、父の言葉のとおり、揉めないように平等に、文句の1つ私は言わずに、分けると言ったはずなのに、手の平を返してきたのです。

憤怒した私は、弁護士に書面を突き返して、思いの丈をビシッと伝えてやりましたが、弁護士は「貴方も弁護士に依頼するなり、納得出来ないのであれば裁判でも結構ですよ。」と、全く動じませんでした。

それどころか、数日後、他の姉弟は、上記の協議書に署名・押印をしてしまったのです。どこかで相談したところ、妹と争っても勝ち目はないと言うのです。

私は、到底納得出来ません。そんな馬鹿な話がありますか!

父が残してくれたこの大事な現金を渡す訳にはいきません。そうこうしていると、弁護士から逆に裁判を起こしますとまで言って来ました。私は、間違っているのでしょうか?!

弁護士からのアドバイス

遺産分割協議

遺産をどうように分けるか話し合うことを、遺産分割協議と言いますが、本件のように意見が対立することも珍しくありません。

協議をしていくうえで、下記の『特別受益』と『寄与分』などの、法的なポイントを解説したいと思います。

特別受益

共同相続人の中に、故人から婚姻費用や事業資金の援助、住宅購入資金などについて生前贈与を受けたり、被相続人から遺贈を受けたりした者がいる場合に、これをまったく考慮せずに相続分を計算すると、相続人間で不公平が生じることになってしまいます。

そこで、相続分を計算する際に、故人から生前贈与や遺贈を受けた分を考慮することによって、相続人間での公平を図る制度を「特別受益制度」といいます。

しかしながら、この制度は、生前贈与されたり、遺贈を受けたりした額が、法定相続分より多くても返還を請求することは出来ないことには注意が必要です。

ただし、遺留分の侵害があった場合には、遺留分減殺請求することができますが、本件のような特別受益とは別の問題となります(因みに、遺留分とは故人の財産のうち、一定の相続人に必ず承継されるべきものとされる相続財産の一定割合の事をいいます)

寄与分

相続人の中に、故人に対して特別な貢献をしたり、故人が代表を務めていた会社経営を手伝ったり、故人の財産の維持又は増加に特別な貢献をした相続人がいた場合、それを考慮せずに遺産分割を行なうと不公平が生じてしまうこともあるかと思います。

そこで相続人間の実質的な公平を図る観点から、遺産分割協議を行なうに際し、特別な貢献をした相続人については、本来の相続分に加えて、その貢献した程度に応じた分だけ多く財産の分割を受けることが認められています。その貢献した相続人が、多く取得できた分を『寄与分』といいます。

民法では、寄与分が認められるためには、以下の要件をクリアする必要があると定めています(民法第904条の2)。

① 相続人であること

上記の例で説明すると、相談者は相続人になりますが、仮に故人に兄弟姉妹が存在し、兄弟姉妹が故人の療養・介護を負担されていたとしても、現時点では相続人にならないため、どれだけ故人の財産の増加に寄与したとしても、兄弟姉妹には寄与分は認められません。

② 「特別」の寄与であったこと

民法では、夫婦間の協力及び扶助の義務(民法第752条)、直系血族(親子間)及び兄弟姉妹の扶養義務(同第877条)、直系血族及び同居の親族の相互扶養義務(同第730条)が定められており、その扶養義務の範囲内の行為であれば、寄与分とは認められません。ここでいう「特別」の寄与とは、身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献でなければならないと考えられます。

寄与分に該当する行為として、故人の事業に関して労務を提供したこと、財産上の給付をしたこと、故人に対する療養看護、などが挙げられています。そして、それらの寄与行為が「特別」の寄与行為であることが必要になります。

例えば、故人の行っていた事業に、無報酬若しくはそれに近い状況で労務を提供したり、故人に代わって債務の返済等を行ったり、故人の療養看護にあたり医療費等の支出を抑えたり、本来複数の相続人が負担すべきであった扶養義務を一手に担うなどして、財産維持に貢献した場合などが、特別の寄与行為に当たるとされています。

故人の事業に従事していたとしても、従業員として相応の給料を受け取っていたり、給料として支給されている額が少額であっても、生活全般が故人の収入等で賄われていたり、故人所有の不動産に無償で生活していたりするなどの事情があると、寄与と認められないこともあるようです。

③ 故人の財産の「維持」又は「増加」があること

相続人による貢献が寄与分として認められるためには、その貢献によって被相続人の財産が維持又は増加したことが必要となります。相続人による寄与行為と故人の財産の維持増加との間に因果関係が認められなければならないのです。

まとめ

以上のポイントを踏まえて、一旦冷静に、本件の遺産分割について考えてみましょう。

今回の内容では、

特別受益

被相続人である故人(父)から、“生前”に長女・長男・二男は不動産の贈与を受けています。これは、上記で説明した特別受益にあたると考えられます。

寄与分

相談者は被相続人の介護のために“長年勤めていた”仕事を辞めてまで遠方の秋田に移住をしました。この相談者は、退職前の会社では役職が就いており、そのまま勤めていれば、多くの退職金を貰えることが予想されました。故人の介護の必要がなければ、安定していた生活を激変させることもなかったと思われます。また、被相続人の意思判断が出来なくなってから“被相続人にかかる費用を立て替えて”います。

寄与分の説明からすると、認められるのは難しく感じますが、上記の事情を考慮すれば、寄与分も考慮してほしいと主張するべきだと考えます。

生前贈与

今回のご相談者は不動産を生前に贈与されています。この不動産の価値も遺産の計算にいれた際に、上記の寄与分を考慮したとしても、長女・長男・二男が法定相続分以上のものを既に貰っていたとすれば、厳しい回答になりますが、妹の主張が認められる可能性は高いと考えられます。

介護の苦労や、それぞれのご家庭の事情などは当事者にしか分からないですし、とても表現できるものではありません。

ですから、数字でお話するのは無粋かと思いますが、前向きに考えるならば、ご相談者の父は、法律の観点でみても、長女・長男・二男に対して、不動産の価値によっては、相当と考えられる財産を生前贈与で前渡しをしていてくれたとも言えるのかもしれません。

もし父がそうしていなかったら、また遺言書もなければ、妹には、不動産も含めた全ての遺産に対して4分の1を相続すると主張されていたかもしれません。

皆さんそれぞれにお考えがあるとは思いますが、妹にも相続する権利は認められているのです。

最後に

相続人間での協議は、感情的な問題も発生し、何時までも決着が着かないケースは珍しくありません。そういった場合は、第三者である弁護士が代理人として介入することにより、スムーズに解決に至ることがあります。

また今回のような相談事例では、もし父や相談者から生前にご相談を頂ければ、妹に対しても遺留分相当の財産を渡してあげる、また公正証書遺言を作成するなど、出来る限り相続発生時に法的に揉めないような方法をご提案できたかもしれません。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

相続は、どなたにも身近で起きる出来事です、しかし、感情で揉めてしまったり話し合いで解決出来ないことも少なくありません。 相続時には色々なトラブル・悩みが発生するものです、私の40年間という弁護士経験のを元に事例や状況に沿って対処法を電話でも解説可能...

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