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【弁護士監修】義両親の介護を頑張ったお嫁さんの救済制度「特別寄与料」!

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年04月18日
義両親の介護を頑張ったお嫁さんの救済制度「特別寄与料」!のアイキャッチ

相続法が平成30年7月に大きく改正されました。
 ここではその中に含まれる「特別寄与料」についてみていきます。
 義理の両親の介護をしている方は必見です!

大きく見直しされた相続法

 民法には誰が相続人になるのか、何が相続財産になるのかなど、相続に関するトラブルを防止するためのルールが定められています。
 民法の中の相続に関する規定の部分のことを「相続法」といいます。
 相続法は昭和55年の改正以来、このたび実に40年ぶりに大きく見直しがされましたが、その主な要因は高齢化によるものです。亡くなった方の配偶者が高齢である可能性が高く、残された配偶者を保護しなければならない必要性が高くなったことなどなどから改正に踏み切られました。

 相続法の主な改正内容には次のようなものがあります。
  ・配偶者居住権の創設
  ・遺産分割の見直し
  ・遺言制度の見直し(自筆遺言証書の書き方の緩和など)
  ・相続の効力等の見直し
  ・相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

 特別寄与料は「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」の中に含まれます。

特別寄与料とは?

 まず寄与分について触れておきましょう。
 寄与分とは民法第904条の2において、被相続人(亡くなった方)の生前に、その財産の維持や増加に影響するような特別な貢献をした相続人がいる場合、他の相続人と同じ相続分では不公平がありますので、その不公平を是正するために設けられた制度です。寄与分は遺産分割協議によって定められます。
 現行の相続法では寄与分を請求できるのは相続人だけです。相続人とは、被相続人の配偶者や子供、親、兄弟などです。そこには「子供の嫁」などは含まれていません。
 つまり、被相続人の子供のお嫁さんが、被相続人である舅さんや姑さんを介護していたとしても寄与分を求めることはできないということになります。
 それが、この度の相続法改正によって新設された「特別寄与料」によって寄与分を請求することができるようになりました。

 特別寄与料とは、①相続人以外の親族が②無償で③被相続人の療養・看護などを行ったことにより④被相続人の財産が維持又は増加した場合に、相続人に対し特別寄与者の寄与に応じた額の支払いを請求できるというものです。

 ①相続人以外の親族
親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。姻族とは婚姻関係による配偶者の血族または自分の血族の配偶者のことを指します。お嫁さんは子供の配偶者なので3親等内の姻族にあたります。
そして、内縁の妻や事実婚では認められないということになります。
また、相続の放棄をした者や相続欠格事由(被相続人に対して殺人・詐欺・強迫等を行った者)に該当するなど、その相続権を失った者は除かれます。

②無償
寄与分と同様に特別寄与料も同様に無償であることを求められます。寄与の対価をもらっている場合は、対価と特別寄与料を二重に取得することになりますので認められません。それが例えば介護に対する対価と言えないお小遣い程度のものであっても対価とみなされることがあります。

 ③被相続人の療養・看護
療養、看護その他の労務提供をしたことが要因となります。そのため被相続人の事業に出資したことなどは要件に含まれません。
また、介護の度合いについては、病院の送り迎え程度では認められないでしょう。要介護2(立ち上がり・歩行などが自力でできず、排泄や入浴、衣服の着脱などにほぼ全面的な介護が必要な状態)以上であることが目安の1つですので、介護が必要な状態だったが施設に入れずに自宅で介護をしていたなど、片手間でできないような介護であった必要があります。

 ④被相続人の財産が維持又は増加した場合
  ③での要件でみたように、施設に入れず自宅で介護するなど介護サービスを使わないことによって費用を浮かせていたという場合はこれに該当します。

現行法でも、被相続人のお嫁さんの介護による貢献などは子供の行為と同じであるとみなして、家庭裁判所では寄与分を認める考え方がありましたが、それには他の相続人の同意が必要でした。また、寄与料の支払いは被相続人の子供である夫になされていました。
それがこの度の改正によって、お嫁さん自身が特別寄与料を請求することができるようになったということです。

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特別寄与料のリスク

 しかし、この特別寄与料にはリスクがあります。
 介護をしていたお嫁さんからしたら、自分の時間を犠牲にしてまで夫の両親の介護を行った対価として相続財産をもらうのは当然のことですが、相続財産が請求されるのは相続人、つまり夫の親や兄弟です。お嫁さんから特別寄与料を請求されることによって、夫・親・兄弟の遺産の取り分が減ってしまうというわけです。
 相続人が納得して特別寄与料を支払ってくれればよいのですが、中には絶対に取り分を減らされたくないという方もいるでしょう。そうなると、親族間でトラブルになってしまいます。

 トラブルを避けるために、やっておくべきことがあります。
 それは
  ①記録を残しておくこと
  ②介護の状況を共有しておくこと
 などです。
 この2つについて詳しくみていきましょう。

特別寄与をした証明をできるようにしておく

特別寄与の証拠
 ①記録を残しておくこと
  特別寄与料を請求する際の証拠となるように、しっかりと記録を取っておきましょう。例えば介護日記などをつけて、どれぐらいの期間や時間、どれぐらいの介護をしたのかをまとめておくことが大切です。仕事をしている場合は、介護をするために仕事を休んだ日付や欠勤によって減収した分を記録しておきましょう。
  また、通院に使ったタクシー代や介護に使用したおむつ代・薬代などのレシートを保管しておきましょう。
  このレシートなどの保管は、特別寄与料の請求はもちろんですが、介護のために夫の両親のお金を使った場合に、親族に使い込みを疑われないためにもとても重要です。

  仕事を辞めてまで介護をしたという場合は、本来仕事をしていればもらえるはずだった金額を算出する為に、働いていた時の源泉徴収票も残しておきましょう。
  被相続人の状態がわかるものも用意しておいた方がよいでしょう。
  医師の診断書や介護認定書、ヘルパーとの連絡ノートなども資料になりますのでこちらも残しておきましょう。

 ②介護の状況を共有しておくこと
  被相続人が亡くなった後、本当に介護をしていたのかと相続人と揉めてしまうケースもあります。金銭目当てではないのかと疑われてしまったらショックですよね。
  今はスマホなどで簡単に動画を撮れますので、証拠として動画を残すだけではなく、夫の両親がどのような状態なのかを相続人に伝えることや、どのような介護をしているのかを伝える手段として動画を使いましょう。
  相続人たちは両親の状況がわかりますし、介護の状況を伝えることもできます。

特別寄与料の金額と請求期間

特別寄与料の請求をするには、まずは特別寄与者が相続人と協議した上、相続人が遺産分割協議をしなければなりません。(遺産分割協議が煩雑になるのを防ぐため、特別寄与者は遺産分割協議には参加できません。特別寄与者ができるのは、特別寄与料の請求だけです。)
特別寄与料は「療養介護の日当額×療養・看護を行った日数」で計算した額が目安となります。大体数百万円程度となるでしょう。
相続人が遺産分割協議を行った結果、相続人全員の了承を得られた金額の特別寄与料を受け取ることができます。
もしも、遺産分割協議を行っても話し合いがまとまらない場合は、裁判所に審判の申立をすることができます。
  
特別寄与料の請求権は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは権利を行使できなくなります。
相続が始まったら、出来るだけ早く請求を考えておきましょう。

相続トラブルになったら弁護士に相談

 相続に関するトラブルが起こってしまった場合は、法律のプロである弁護士に相談しましょう。遺産分割協議から、裁判までサポートしてくれます。
 無料相談を行っている弁護士事務所もありますので、トラブルが大きくなってしまう前に早めに相談すると良いでしょう。

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まとめ

 今まで保護されていなかったお嫁さんの介護に対する寄与分が、特別寄与料として認められるようになったのはとても素晴らしいことだと思います。
 しかし、やはり遺産がからんでくると家族内でも“遺産争族”などと言われて揉めてしまいますので、お嫁さんとなると余計に目くじらを立ててくる人もいるでしょう。
 そうなると揉めてしまうことは避けられません。
 大変だった介護の時間を無駄にしないためにも、特別寄与料を認めてもらうために証拠をきっちりと残して、相続人たちとの情報共有をして、それでも納得してもらえないなら弁護士に依頼しましょう。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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