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「紀州のドン・ファンが残した遺言状」有効なのか、妻への遺産はどうなるのか…

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2018年08月17日 公開
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 つい最近までテレビでよく取り上げられていた「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さんですが、その野崎さんが遺言書を残していたことが先日明らかになったそうです。

 野崎さんが残した遺言書がどのようなものだったのか、またその遺言書によって周りの人にどのような影響があるのかなど、みていきましょう。

「紀州のドン・ファンの遺言状とは」

 2018年5月24日に急性覚醒剤中毒で亡くなった野崎幸助さんが、2013年に遺言書を知人男性に預けていたことが明らかになったそうです。

 その遺言書には「全財産を田辺市に寄付する」という内容が自筆で書かれていたということです。そして、野崎さん本人の署名と捺印もきちんとなされていたそうです。

 この遺言書は果たして有効なものなのでしょうか?

今回の遺言書は自筆証書遺言に該当するのでは?

 遺言書には自筆証書遺言書・公正証書遺言書・秘密証書遺言書の三つの種類がありますが、この度見つかった野崎さんの遺言書は「自筆証書遺言書」に該当するのではないかと思われます。

 自筆証書遺言書と認められるためには、次の内容を全て自筆で記入する必要がります。
・遺言の内容
・遺言書の作成年月日(〇年〇月吉日など作成日がわからない場合は無効となる)
・遺言者の氏名(戸籍通りのフルネームが望ましい)
・押印(認印や三文判でも良いが、実印が望ましい。氏名の下に押印する)

 記載後は封筒に入れて保管します。

 野崎さんの遺言書は、
  ・A4用紙にひらがなで「いごん」と書かれていた。
  ・「私、野崎幸助は」で始まる文面には「自身と会社の全財産を田辺市に寄付する」という内容が明確に書かれていた。
  ・日付は2013年の某日。
  ・野崎さん本人の署名と捺印がされている。
 という内容であったと報道されています。

 この遺言書が全て自筆で、「某日」となっている日付がきちんとした日付が書かれていた場合は、自筆証書遺言書として認められるのではないでしょうか。

 この遺言書は現在、野崎さんと交友のあった弁護士が、家庭裁判所で「検認」の手続きをしているそうです。「検認」とは一体何のことでしょうか。

現在行っている遺言書の検認とは?

 検認とは、相続人立ち合いのもと家庭裁判所で遺言書を開封し遺言書の内容について形式が整っているかどうかだけを判断するものです。遺言書の効力を証明するものではありません。

 検認が終わったら、遺言書の内容によっては遺産分割協議を行います。
 例えば遺産の配分が具体的に示されておらず、割合で指定されていた場合などは遺産分割協議を行わなければなりません。

遺言書が有効だと22歳妻は1円も貰えないのか

 さて、この遺言書の内容は「自身と会社の全財産を田辺市に寄付する」ということでしたが、そうなると数億円の遺産を受け取れるはずだった22歳の奥さんや、4,000万円もらえるという話になっていた家政婦さんは1円ももらえなくなってしまうのでしょうか?
 
 まず家政婦さんについてですが、家政婦さんはおそらく1円ももらえないでしょう。
 法定相続人(※)以外の者が遺産をもらうには「遺贈」といって、遺言によって被相続人が財産を分け与えれば遺産を受け取ることが可能です。
 ですが、今回の野崎さんの遺言書にはその旨が記載されていません。
 
 また、特別寄与者と言って被相続人に対して特別の奉仕をしてきた人が負担度や貢献度に応じて相続財産を取得することができることもありますが、家政婦さんはその対象外です。

 ※法律の規定によって相続人となる人のことを言います。被相続人(亡くなった方)の配偶者と子、または親や兄弟姉妹を指します

 では、22歳の奥さんはどうでしょうか。
 奥さんについては「遺留分」が認められますので、遺留分についてはもらうことができます。ではその遺留分とはいったいどのようなものなのでしょうか。

22歳妻は遺産の半分を受け取ることができる!?法律上で決まっている遺留分とは!

 遺留分とは、一定の範囲の法定相続人残されるべき遺産の取得分のことです。
 遺留分が認められているのは、配偶者・子・親です。したがって22歳の奥さんには遺留分が認められます。
 
 野崎さんには子供がおらず、77歳で亡くなったとのことでしたのでご両親もいらっしゃらないと推定した場合、奥さんだけに遺留分が認められますので遺留分の割合は1/2となります。(兄弟がいらっしゃるという事ですが、兄弟には遺留分は認められません。)
 不動産なども含めて約50億円の遺産があるとのことですので(そんなに無いとの報道もありますが)、奥さんは約25億円の遺留分が認められるということですね。

 ただし、野崎さんが亡くなった原因は急性覚醒剤中毒です。
 あまり考えたくないですが、この奥さんが野崎さんの死亡に関して次のような条件に当てはまってしまった場合、相続欠格者となってしまいますので一切の相続権を失い遺留分も認められなくなってしまいます。

①被相続人の生命を侵害するような行為(例えば被相続人を殺害・殺害未遂など)をして、刑に処された相続人。

②被相続人が殺害されたことを知っていて、その犯人を知りながら告発や告訴しなかった相続人。ただし、その相続人が良し悪しの区別がつかない場合や、殺害した者がその相続人の配偶者や子・親であった場合は除かれます。

③詐欺・強迫によって被相続人が相続に関する遺言をし、撤回・取り消し・変更することを妨げた相続人。

④詐欺・強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回・取り消し・変更させた相続人。

⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した相続人。

奥さんがどれにも当てはまらないことを願うばかりです。

ちなみに遺留分を確保するためには、遺留分減殺請求をする必要があります。
遺留分減殺請求は遺留分の権利者が請求するのですが、相続開始または自分の遺留分が侵害されていることを知った日から1年、または相続開始の日から10年を過ぎると時効により請求できなくなってしまいます。
 

今後の展開として予想できること

 そもそも遺言書が見つからなかった場合は、奥さんの相続分は3/4でした、つまり50億円の遺産があったとしたら約37億円以上の遺産が手に入ったという事です。
 それがこの度見つかった遺言書によって10億円以上もらえる遺産が減ってしまいます。納得がいくかどうかが問題です。
 またもらえるはずだった4,000万円がもらえなくなった家政婦さん、遺留分が認められないため全く遺産がもらえなくなった野崎さんの兄弟(本来であれば奥さんが相続した残りの1/4の相続分を、兄弟で分け合えるはずだった)なども、黙っていないかもしれません。

 検認の結果次第で遺言書が有効と認められた場合に、内容に納得がいかなければ遺産分割協議を行う事となるでしょう。ただし、遺言書に決められた内容に沿わない遺産分割を行う場合は全員の合意が必要です。果たして全員の合意が得られるのか…。今後が気になりますね。

まとめ

 相続人のために遺言書を残すことはとてもいいことだと思いますが、相続人に配分がないものや他の人に相続させる旨の記載をした場合は逆に揉めてしまう結果になってしまいますね。特に資産家など、お金持ちだった場合なおさらです。
 野崎さんが残した多額の遺産はどのように相続人の手に渡るのでしょうか。

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