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平成29年度税制改正大綱(資産税関係)の変更点と注意点

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更新日:2018年12月29日
平成29年度税制改正大綱(資産税関係)の変更点と注意点のアイキャッチ

【概要】

平成28年12月8日に決定した平成29年度税制改正大綱のうち、資産税関係の主な改正内容を要約して補足説明します。

【非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について】

災害等を受けた場合には、被害の態様に応じ、雇用確保要件の免除等、被害を受けた会社が倒産等した場合には猶予税額を免除する等の見直しを行います。
相続時精算課税制度に係る贈与を贈与税の納税猶予制度の適用対象に加えます。
平成29年1月1日以後に相続等又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用します。

<補足>

災害等の場合や災害等で破産した場合には要件の免除や猶予税額の免除をするなど緩和される形での見直しになっているようです。

【納税義務者について】

国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前10年(現行は5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととします。
在留資格をもって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在をいう)をしている場合等の相続等に係る相続税については国内財産のみを課税対象とします。
国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が国内に住所を有してない者であって相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在をしていたものを除く。)から相続等により取得した国外財産を、相続税の課税対象に加えます。
贈与税の納税義務も同様とします。
平成29年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用します。

<補足>

制限納税義務者の範囲について、平成25年4月1日以降から日本国籍のない相続人等が国内に住所を有する被相続人等から相続等により取得した財産について国外財産にも課税されることになりましたが、今回の見直しで相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等からの相続等により取得した財産ついても国外財産に課税されることからさらに制限納税義務者のハードルが高くなりました。
また、「5年以内」の期限が「10年以内」となったため、海外を利用した節税がさらに難しくなりました。
逆に在留資格をもって一時的滞在をしている場合の相続等については国内財産のみに課税のため、国外財産に課税されなくなりました。

【タワーマンションの固定資産税について】

高さが60mを超える建築物のうち、複数の階に住戸が所在しているもの(居住用超高層建築物という)については、その居住用超高層建築物全体に係る固定資産税額を各区分所有者にあん分する際に用いるその各区分所有者の専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差異による床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率により補正等を行います。
居住用超高層建築物の専有部分の取得があった場合に課する不動産取得税についても見直しを行います。
いずれも平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物について適用します。

<補足>

タワーマンションを利用した節税(階層の差異が固定資産税評価額に反映されていないことから、取引単価の高い高層階では実勢価額との乖離が多額になる)が多く利用されていると思いますが、居住用超高層建築物の固定資産税額について、今までは階層の差異による取引単価の差異を反映していませんでしたが、補正率により取引単価の差異を反映させてあん分することで、より実勢価格に近い形であん分されることになります。

【取引相場のない株式の評価における類似業種比準方式について】

類似業種の上場会社の株価について現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加えます。配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1とする等の見直しを行い、評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大します。
平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用します。

<補足>

類似業種比準方式については、利益金額が重視されていましたが、配当金額、利益金額及び純資産価額の比重を1:1:1(現行は1:3:1)とすることで、配当金額、利益金額及び純資産価額を均等に比重して評価されるようになります。
また、取引相場のない株式の評価は評価会社の規模区分が大きい方が有利になりますが、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大することで、規模区分が大きく判定されやすくなります。

【広大地の評価について】

現行の評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化します。
平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用します。

<補足>

現行の広大地は適用要件が曖昧で判断が難しいことから税務訴訟に発展しやすい項目となっています。
適用要件の明確化は大きく望まれているでしょう。
また、評価方法については面積のみに着目して減額しているため、同じ路線価で同じ面積の場合には、形状などの各土地の個性を度外視して評価されるため、使い勝手の良い長方形の土地と使い勝手の悪い不整形地で同じ評価額となってしまう不合理な部分がありました。
今回の見直しでより合理的な評価方法になると思われます。

【株式保有特定会社の判定基準について】

株式保有特定会社の判定基準に新株予約権付社債を加えます。
平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用します。

注意点のまとめ

今回の改正項目(税制改正大綱のためまだ確定ではないですが)のなかで特に多くの方に影響のある項目は広大地の評価ではないでしょうか?
現行の広大地の要件は判断が難しく税務訴訟に発展しやすい論点となっています。
そのため保守的な税理士は税務署からの否認を恐れて広大地を適用していないケースが多々あり、相続税の還付請求では広大地があるとそれだけで数百万円から数千万円の還付につながることもあります。
適用要件が明確化されることで、当初申告の段階から相続税に慣れていない税理士でも広大地の判定がしやすくなると思われます。

タワーマンションについては固定資産税額のあん分について、実勢価額に近い形であん分されることになりますが、固定資産税の「評価額」は変わらないようです。
そのため、相続税のタワーマンション節税封じにはなりません。
ただし、いき過ぎた節税は財産評価基本通達6項(相続税評価額が時価と乖離する場合には時価で評価されてしまう)で否認されるリスクがあるため注意が必要です。
今回の税制改正大綱ではタワーマンションの評価額までは見直していませんが、引き続き財産評価基本通達の見直しを検討しているようです。

会社を経営している方は非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度、取引相場のない株式の評価における類似業種比準方式等で見直しがあるため、株価対策をしている方は対策内容の見直しも必要になると思います。

また、納税義務者については今までにも海外を利用した節税封じの改正がされてきましたが、さらに制限納税義務者(国外財産に課税されなくなる)になるための要件が厳しくなりました。
海外に財産を移している方もいると思いますが、制限納税義務者にならない限り海外の財産にも課税されてしまいますので、節税を狙うのは非常に困難になるといえます。

この記事の著者

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佐藤和基 (税理士)佐藤和基税理士事務所

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