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平成27年に贈与税はどう改正された?6つの改正点とは

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更新日:2018年12月29日
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皆さんは贈与税”というものが平成27年に改正されたというのをご存知でしょうか。何となく覚えている、まったく知らないという方、様々だと思います。

しかし、年数的にも記憶に新しい出来事であるはずなのに、ほとんどの方が正しく認識していない様に思います。正直、皆さんの中では「関係ないからどうでもよいという」考えが頭を占有していることでしょう。

ですが、贈与税とはご自身の実生活に密接に関わり、お金にまつわる大きな損得を左右する税法です。しかも贈与税が顔を出す時というのは往々にして金額の大きい時です。

そこで今回は平成27年の6つの改正点とポイントを紹介いたします。親のお金で人生安泰、と考えている方は必見の内容です。

そもそも贈与税とは

贈与税とは、名前からもある程度想像の付く通り、贈られた金銭的授受に対して掛かる税金です。

わかりやすく言ってしまうならば、200万円を贈与された場合は一部の20万円を国に納めなさいというシステムになっています。

似た様なシステムとして相続税があります。世間では混同されがちな両者ですが、贈与税は主に生前、相続税は死後に関係する税法です。

ちなみに贈与税を利用される方=財産を贈る人間の多くは、死後の遺産相続争いなどが起きぬように生前に財産を整理することが目的です。

そうした点を踏まえて6つの改正点を見ていきましょう。

改正点1:贈与税における税率上限が55%にアップ

平成27年度贈与税の改正

まず改正に伴って贈与税の構成は大きく変化しました。

税率や上限部分である金額、もしくは新設された区分など、改正された項目は多岐に渡ります。

改正点の一つに贈与税の上限幅が変わったという点があります。改正前は50%が税率の上限でした。

つまりは受け取り側からすれば最悪の場合、半分の贈与しか受け取れないということです。

逆を言えば改正前は必ず半分以上は贈与を受け取れていたということになります。

それでは、改正後はどうなのでしょうか。改正後は55%と上限が高くなっています。

たかが5%、されど5%。

5000万円規模の贈与であれば5000万×0.05=250万円も多く取られてしまいます。この改正に関しては贈与する側も受け取り側も受け取れる最高額の比率という点では好ましくない改正と言えるでしょう。

ちなみに以前にも平成15年に改正されており、その際は最高税率が70%から50%に引き下げられました。

今回の改正は以前の改正に逆行するような形になっていると言えます。

なんとも高齢化社会、政府の財源確保など、時代背景の見え隠れする改正ポイントではないでしょうか。

改正点2:税率の区分が細かくなった

これは言うなれば段階が細かくなったと考えていただいて結構です。つまり、贈与税が掛かる贈与額の条件が細分化されたと認識してください。

例えば、200万円以下から1000万円以下での税率は変更ありませんが、1500万円以下から4500万円以下まで同率だった税率が3つに条件付けされています。

上限が上がった分、1500万円以下付近の税率は軽減されているので、中規模程度の贈与に関しては利点のある改正点と言えるのではないでしょうか。

また、この8つの税率区分は2通りに分かれており、贈与の受取人が20歳以上でなおかつ直系尊属にあたる人物からの贈与では、全体の税率がさらに変化します。

基本的には税率が少し軽減されることになるようです。直系尊属とは、何も難しいことはなく、自分の両親、両祖母のことを指します。残念ながら叔父、叔母や妻の両親などはこの直系尊属にはあたりません。

改正点3:贈与税における特例対象地の増加

この改正点は下地なしにご説明するのがやや難解なのですが、贈与税を差し引きする要素として小規模宅地というものがあります。

この小規模宅地は、事業の運営に使っている土地や、生活の拠点になっている土地などを指し、生活の基盤になっている者に関しては考慮して税金を掛けようというものです。

詳しくはこちら

小規模宅地の特例で最大80%評価減で相続税が減税される?

物を売り買いするときには定価に沿って金銭を支払います。1000円の商品であれば同額を支払うはずですね。

しかし、1000円の商品が...

誤解を恐れずにわかりやすく言うのであれば、そもそも生活の軸として使っていたものを贈与するからと言って100%税金を取るのはおかしいよね、という考えです。

特例対象地にあたる事柄は大幅な減税率が見込め、200㎡、400㎡と面積制限があり、用途や大きさで税率も変化します。

こうした特例措置、対象(面積範囲)が増加した改正点だと思っていただければ結構です。

改正点4:相続時精算課税の適用対象者が広がった

まず相続時精算課税とは、ある一定の歳の父親や母親が、ある一定の子供に贈与を贈る場合に選択出来る税率のことです。

主に贈与を考えた際には、暦年贈与相続時精算課税を選択することになるのですが、相続時精算課税を選択できる人の範囲が拡大したということになります。

暦年贈与は聞きなれないでしょうから少し説明すると、一般的な贈与体系のことです。つまり、今まで説明してきた贈与体系を選ぶか、この相続時精算課税を選ぶかと言うだけです。

改正前は、65歳以上の父、母と20歳以上の子が条件でしたが、改正後は60歳以上の父、母と20歳以上の子、または孫と条件が緩和されています。

少なくとも選択肢の増える人が多くなることは良いことですし、これは大手を振って喜べる改正点ではないでしょうか。

改正点5:教育資金の非課税ケースが増えた

結論から申しますと教育資金を拠出して贈与する場合に選択出来る非課税方法が増えた改正です。

改正前は、教育資金として孫のいる子供にお金を渡そうとするのであれば、支払いのたびに贈与税の非課税を利用するしかありませんでした。

しかし、改正によって新たに銀行を通して最大1500万円まで非課税で贈与することが可能になりました。(教育資金贈与制度

こちらも毛色の違う非課税贈与方法が増設されたと考えて問題ないでしょう。この方法を利用するには受け取り側が直系卑属の30歳未満であり、その資金の用途が教育目的に限られる場合のみという条件があります。

直系卑属とは、直系尊属とはまた違い、贈与する方の子供、孫、ひ孫のことを指します。

分かり辛ければ贈与シーンでは、直系尊属は主に贈与される方自身の上世代を指し、直系卑属は贈与される側の下世代を指すと覚えてもらっても良いでしょう。

こうした教育資金にまつわる一括贈与の非課税措置は、噛み砕いてまとめるならば若い親世代の両親が教育面を援助する目的ならば課税は掛けないよ、というシステムです。

改正点6:未成年や障害者の控除額の増加

  • 最後の改正点は単純明快で、純粋に平成27年の改正で控除額が増加しました。
  • 未成年者の控除額は、6万円→10万円へ。
  • 障害者の控除額は、通常の障害者は6万円→10万円と未成年者と同等の上げ幅です。
  • 次いで特別障害者にあたる方は、12万円から20万円へと控除額が増加しました。

シンプルで素直に嬉しい改正点です。

こうしてみると税金を掛ける側となるべく税金を支払いたくない側とのメリット、デメリットがない交ぜになった改正点6つでした。

こうした改正点は相続的な生前贈与という面もありますが、教育面に関しても関連の深い事柄です。自分のご両親、もしくは子息に何かあった時のため、または手助けするために必要な知識として、ぜひともインプットしてください。

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相続相談弁護士ガイド 編集部

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