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同性パートナーシップ制度が拡大中!同性愛者が抱える相続問題の現解決策とは?

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更新日:2018年12月29日
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LGBTは、近年社会的に注目されており、東京都の渋谷区・世田谷区に続き、2/16に三重県伊賀市も「同性パートナーシップ制度」導入することを発表している。ただ、現在の制度も生命保険の受け取りが出来る程度に留まり、相続などでは一切考慮されません。

そこで、弁護士の方に同性パートナーに出来る相続対策を教えて頂きました。

公正証書遺言の活用

遺言がない場合、相続は法律の規定に従って相続されることになります。

具体的に言うと、①法律上の結婚をして配偶者がいる場合には配偶者は常に相続人になり、

親族は②子、子供がいない場合は直系尊属(父母、祖父母)、直系尊属がいない場合には兄弟姉妹の順で相続人になります。

同性のカップルで配偶者がいない場合、何の対策もしていなければ、親や兄弟が相続をすることになるでしょう。

このような事態を避けるためには、遺言を作成しておくとよいでしょう。遺言には、自分で書く自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。法律上は効力の違いはありませんが、公正証書遺言は、公証人が証人立会のもとで作成するため遺言者の真意に基づいて作成されたことが証明しやすく、パートナーと親族の間で紛争が生じることを未然に防ぎやすいといえます。

遺言でパートナーに財産を取得させる(遺贈といいます)ことのメリットとして、税金の関係や、いつでも撤回できることなどがあります。

生前にパートナーに財産を譲る(生前贈与といいます)ことはもちろん可能ですが、その場合、贈与税がかかります。他方、遺贈の場合は相続税がかかるのですが、基礎控除があるなど贈与税に比べて納める税額が少なくなります。

また、(あまり想定したくないケースかもしれませんが)生前贈与をしてしまうと、贈与後に何らかの理由で関係を解消する事態に陥ったとしても、贈与したものを返せとは当然には言えません。他方、遺言の場合、前に作成した遺言と異なる内容の遺言を作成すれば、前にした遺言は取り消されたものとされるので、簡単に撤回できます。

遺留分の制約

遺言の作成で注意が必要なことに、遺留分というものがあります。

遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められる権利で、これに反する遺言があっても相続財産の一定割合を取得することができるというものです。

多くの同性カップルは法律上の配偶者はいないでしょうから、父母か、父母がすでに亡くなっていれば兄弟姉妹が相続人になることが多いでしょう。

父母が存命であれば、パートナーに全ての財産を遺贈するという遺言をしても、父母には遺留分があるため、パートナーが全ての財産を取得出来るかどうかは父母次第ということになります(もっとも、遺留分は権利ですので、父母が権利を行使しなければパートナーが全て取得することが可能です)。

他方で、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、パートナーに全ての財産を遺贈するという遺言を作成しておけば、遺言どおりパートナーが全ての財産を取得することができます。

養子縁組とその問題点

また、養子縁組を利用するということも考えられます。

法律上、養子と実の子で違いはありませんので、養子縁組をすれば、養子は法定相続人になります。

注意点としては、法律上の親子関係をつくることになるので、年長者を養子にすることはできないこと(カップルの年上の方が養親になる必要があります)、養子は養親の姓を名乗ることになるということがあげられます。養子縁組で姓が変わることが、職場をはじめとしてそれまでの社会生活に影響、支障がないかを考える必要があるでしょう。また、法律上は養親と養子だけにとどまらず、養親の父母等との間にも親族関係が生じることにも注意が必要です(例えば、養親が自分の父母より先に亡くなり、その後に養親の父母がなくなった場合、法律上「孫」にあたる養子が、養親が相続するはずだった父母の財産を養親に代わって相続することになります)。

なお、養子縁組をしても、実の親との親子関係が切れるわけではありません。

養子縁組をした後に養親が亡くなった場合、(配偶者や他に子がいなければ)養子となったパートナーだけが法定相続人になります。したがって、特に遺言を作成しなくても、パートナーが全ての財産を取得することになります。

他方、養子が先に亡くなった場合(年齢の近いカップルなら十分にあり得るでしょう)、直系尊属である親が相続人となりますが、ここでいう親とは、養親だけでなく、実の親も含みます。したがって、養子がなくなったときに養親、実の両親が存命とすると、法定相続分は各自3分の1となります。これを避けたいと思えば、やはり遺言が必要になってきます。

生命保険の活用

法律上の婚姻をした夫婦の場合、一方がなくなれば他方が遺族年金を受給することができますが、同性カップルにはそのような制度がありません。

そこで、残されたパートナーの生活保障として、生命保険を活用することが考えられます。

以前は保険会社が死亡保険金の受取人を親族に限定していたので、パートナーと養子縁組をしたり、遺言で保険金の受取人をパートナーに指定するといった手法がとられてきましたが、最近、契約時から死亡保険金の受取人として同性パートナーを指定することができる保険会社が出てきました。

任意後見の活用

任意後見契約とは、本人が判断能力のある間に、将来自分の判断能力が低下した場合に自分に代わって財産等の管理をする後見人を予め決めておく契約のことをいいます。

同性カップルの一人の判断能力が低下して自分で財産の管理ができなくなったり、高齢等の理由で施設等への入所が必要になったとしても、他の一人が当然にパートナーに代わって財産を管理したり、施設の入所契約を結ぶことができるわけではありません。

任意後見がない場合には、裁判所に後見人を選任してもらう手続を利用することが必要になりますが、その場合、誰を選任するかは裁判所の判断にゆだねられており、パートナーが選ばれるとは限りません。

ですから、将来一方の判断能力が低下した場合には他方のパートナーに財産管理等を任せたいという希望を持っているのであれば、各自が任意後見契約を結び、お互いを後見人に指名しておくといいでしょう。

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相続相談弁護士ガイド 編集部

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