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【弁護士監修】共有名義の不動産の相続での注意点・問題点は?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2022年10月19日
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共有名義の不動産の相続相談

ご相談者は長男で、母と妹(長女)が1人います。
現在、相談者夫婦が住んでいる自宅の建物は長男夫婦の名義で、母も同居していますが、土地は、もともと父と母の共有名義(父:母=9:1)だったところ、10年前に父が亡くなった際、父が遺言書を遺しており、かかる遺言書にしたがって長男が取得しました。現在の土地の持分は、長男:母=9:1となっています。

母は、自分が亡くなったときには、自分の持分は長男に相続させる旨を話しています。価値としてはあまり高くない不動産であり、母の持分も僅かに10分の1だけであるので、相続で揉めることはないと思っています。母が亡くなった際に、どのような手続きをすれば、不動産の名義を長男名義に変えることができるのでしょうか。兄妹間の仲も順調なので、揉めることはないと考えています。

弁護士からのアドバイス

不動産の所有者の相続が発生した際、不動産の名義変更については、相続を原因とした所有権移転の登記が必要となります。

本件の相談事例で、将来、お母さまが亡くなられた際の法定相続人は、ご相談者(長男)と妹さま(長女)の2人になります。お母さまの持分である10分の1について、法定相続分で相続するにせよ、相談事例のようにご長男が単独で相続するにせよ、法定相続人全員の協力が得られないと、相続登記を行うことはできません。

仮に、被相続人の持分であった10分の1を、法定相続分である2分の1ずつの20分の1ずつで登記をするのであれば、相続人それぞれの戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)及び、住民票が必要になります。

また、本件のように、長男が単独で相続する場合には、上記戸籍謄本と住民票の他に、遺産分割協議書及び遺産分割協議書に押印した印鑑の印鑑登録証明書が必要となるのです。

その他、何れのケースでも、被相続人の出生から死亡までの経過の記載が分かる戸籍謄本、若しくは除籍全部事項証明書(除籍謄本)は添付する必要がありますし、課税標準額に1000分の4を乗じた額の登録免許税を収めることになります。加えて、登記を司法書士や弁護士等の専門家に依頼する場合には、別途費用が発生します。

相続人間で何ら争いもなく、手続きへの協力が仰げるのであれば、上記書面や費用を準備することでスムーズに手続きはできるでしょう。

しかしながら、生前、何ら問題がなかったにもかかわらず、相続が始まったことを契機に争いに発展するようなケースは多いようです。

残された遺産を複数人の相続人で分割する場合、分割しやすい金銭などで残されていれば遺産相続は比較的スムーズに進むのではないでしょうか。しかしながら、不動産が遺産として残されていた場合、不動産を売却するなどして金銭に代えない限りは分割しにくく、また、本件のようにその不動産を共同相続人のうちの一人が単独で相続したいというような場合は、その不動産を相続した人だけが利益を得てしまい、不平等となってしまう可能性もあります。そのような状況で利用される遺産分割の方法が「代償分割」です。

遺産分割の方法の1つ「代償分割」とは

「代償分割」では、複数人いる相続人の中で特定の相続人が遺産を相続する代わりに、他の相続人に対して、相続分相応の金銭などを提供する方法で、たとえば、本件のように遺産となっている不動産に相続開始前から住んでいるなど、特定の相続人が遺産を必要としているような場合などに利用されるようです。

不動産などは単純に分割することが難しく、平等性だけを考えて法定相続分の割合で財産を共有にしてしまうと、後に売却するときなどに不都合が生じるようなこともあります。そこで、代償分割では、特定の相続人がこれらの遺産を一人で相続する代償として、他の相続人に対して相応の代償金を支払うという方法が採用されるのです。

たとえば、本件の場合、遺産である土地全体の金額が2000万円だったとします。被相続人の持分は10分の1なので、遺産の額としては200万円です。法定相続分で相続したとすれば、長女の法定相続分は2分の1となるため、不動産を単独で相続したい長男が、長女に対し100万円を代償金として支払うということになるのです。

また、生前に遺言書を作成しておくのも、スムーズに手続きを進めるための一つの方法です。
たとえば、お母さまがご長男に不動産は相続させたいのであれば、その旨を遺言しておきます。その際、できれば公証役場で公正証書遺言にしておくことをお勧めします。
勿論、自筆の遺言でも、書式や内容に不備がなければ、有効となりますが、自筆証書遺言の場合は、必ず家庭裁判所での検認の手続きが必要になります。

遺言書(公正証書による遺言を除く)の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。

遺言書の検認とは

検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

一方で、公正証書遺言は、遺言者が、公証人の面前で、遺言の内容を口授し、それに基づいて、公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。

公証人とは、裁判官、検察官等の法律実務に携わってきた法律の専門家で、正確な法律知識と豊富な経験を有しています。したがって、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。

また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。さらに、原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。

たとえば、本件のように、複数いる相続人のうち、特定の相続人が相続する旨が記載された公正証書遺言があれば、他の相続人の戸籍謄本や住民票、印鑑証明書等の添付がなくても、相続開始後にスムーズに所有権移転登記をすることができるのです。

ただし、いずれの遺言の方式で行うにせよ、特定の相続人が単独で相続する場合には、遺留分に対する対応も検討しておかなければならないでしょう。上記の例であれば、法定相続分である2分の1の、更に2分の1の4分の1相当である50万円の金銭を遺留分相当額として準備しておく方がいいでしょう。

最後に、意外に誤解されている方が多いようですが、法定相続分とは、あくまで相続人同士の話し合いで解決がつかないような場合を想定して規定しているため、ご相談者が言うとおり相続人同士の仲も良く、取り分が少なくなる人が一切文句を言わないようであれば、そもそも法定相続分などを無視して遺産分割をしても何ら問題はありません。

重要なことは、「法定相続人全員の合意」がとれているかどうかだけなのです。

相続に強い弁護士

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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