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相続と贈与における土地の価格を出す「路線価」とは?

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更新日:2021年10月27日
相続と贈与における土地の価格を出す「路線価」とは?のアイキャッチ

「路線価」って何?

実は土地の値段は、売買される取引時価(実勢価格)、公示価格、路線価、固定資産税評価額などのいくつもの価格が存在します。そのため、土地は一物四価の商品と言われることもあります。

そこで今回は、相続と贈与の財産となる土地の評価額を決める重要な要素である国税庁が定めている「路線価」について紹介していきます。

土地の価額と相続税評価額

まず、土地には時価というものがあります。相続税や贈与税の計算でも時価は使われています。時価と相続税評価額は違うものです。相続や贈与で用いられる時価は恣意的な要素がないその時の取引価額ということになっています。では恣意的な要素がないその時の取引価額というのはどういう価額でしょうか?

※「恣意的」とは、その時の思いつきや勝手気ままなことを=自由に値段設定出来ることを指しています。

一定のルールで土地を算出する価格

・国土交通省が発表する公示価格

・不動産鑑定士による土地の価格

・実際に近辺で取引されている相場価格

これらをもとに算定された時価は恣意的要素は入っていない時価と言えます。

恣意的な要素がはいっている時価というのは、土地の売買などで不動産会社が設定する、いわゆる実際に取引される価額のことです。

相続税や贈与税の課税価額を算出するときは、土地はじめ財産の価額は相続税評価額で評価するので上記の3つの時価は使いません。

土地の相続税評価額は、市町村が公表する固定資産評価額や国税庁が公表する「路線価」をもとに算定されます。

国税庁が発表する路線価データ

建物の前には道路があります。ですが隣り合う建物の間には道路がない場合があります。「路線価」というのは、道路に面している建物の敷地1平方メートルあたりの価額のことです。

国税庁のホームページ


から調べることが出来、毎年1月1日が評価時点となり、8月上旬ごろに公表されます。

路線価の計算方法は大きく3つに分類される

正面路線価:一辺だけが道路に面している土地

路線価 1辺だけ道路に面している場合

出典:http://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prc.pdf

図は一辺だけが道路に面している土地です。

300Cというのは、300千円、Cは借地権割合が70%という意味です。つまり、この路線に面する土地1平方メートルあたりの土地の路線価が30万円という意味になります。

土地の相続税評価額の要素として、路線価とともに用いられるのが補正率です。例えば、同じ道路に面していても、奥行の長さが建物によって違います。この奥行にかかわる補正をするための率が奥行価額補正率です。

図のように、正面に道路が面している場合の路線価のことを正面路線価といいます。奥行価額補正率は正面路線価に垂直で測定した奥行の長さによって変わる率のことで、奥行が長くなるほど補正率は小さくなっていきます。図の場合は奥行が35メートルあるので、その分だけ正面路線価は当初の30万円よりも小さく評価されます。

補正率は割合が1以下なので、補正率が適用できる道路に面した土地は道路に面していない土地よりも低い評価額になり相続税評価額も低くなります。相続税評価額が小さくなるということは、課税価格が下がるので、相続税や贈与税で適用される税率が小さくなり税額も少なくなると考えられます。

路線価という1平方メートルあたりの価額は、補正率で修正した地点で決定されるので、この価額(路線価の修正額)に土地の面積を乗じれば土地の相続税評価額が算出されます。このときの価額のことを自用地の価額と言います。自用地の価額に借地権などのさらなる修正のあと、相続税評価額が決定します。

ここまでをまとめてみます。

【土地の路線価での相続税評価額の基礎ができるまで】

路線価

→ 補正率を使った路線価の修正

→ 道路に面する1平方メートルあたりの価額が決定

→ 面積分で拡大

→ 自用地の価額の決定

→ 借地権などの修正

→ 相続税評価額の決定

いうことになります。

側方路線価:正面+側面も道路だった場合

路線価 側面も道路だった場合

出典:http://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prc.pdf

角地などがそうなのですが、正面だけでなく、側方も道路に面している土地の相続税評価額はどうなっているのでしょう?

正面の場合は、正面路線価(正面路線に面する土地の1平方メートル当たりの価額)をもとに補正率を使って修正した土地1平方メートルあたりの価額に、土地の面積を乗じました。それでは正面と側面に道路がある場合の土地の相続税評価額をみていきましょう。

こんな風にイメージしてください。上記の参照図の土地は透明の2枚の紙がかさなって出来ていると考えます。透明のカードを重ねた感じです。カードをスライドして2枚に並べたとき、2枚のうち、1枚は正面路線価と土地だけが描かれた図、残りの1枚は側方路線価と土地だけが描かれた図に分かれるとします。これらを2枚重ねると上記の参照図になるというイメージです。ここで、2枚のカード(図)のうち、正面路線価のある土地は、最初に正面が道路に面する土地の評価額の説明でお伝えさせていただいたので、とりあえず横に置いておきます。残りの1枚である側方の道路と土地が描かれた透明の図で、側方が道路に面する土地部分についての額についてお伝えいたします。

側面のどちらか一方が道路である土地について、側面の道路に接する土地についての1平方メートル当たりの価額を、側方路線価と言います。

側方路線価の場合も、正面路線価をもとに計算した先ほどの額のように、補正率があります。側方路線価の場合、補正率は2つになります。1つめの補正率をみてみましょう。側方路線価を正面と見立てた場合、奥行があります。まずは奥行価額補正率が1つ目の補正率です。これは最初の図の、正面が道路の場合の土地の評価額のときも出てきた補正率ですね。側方路線価に垂直な距離を奥行と考え、1つ目の補正率である奥行補正率が側方路線価に加味されます。

側方のうちどちらかが道路の場合の、2つ目の補正率についてみてみましょう。土地は道路に面しているほうが利用価値が高いということで、補正率が本来の路線価に加味されて、相続税評価額が低く評価されます。

側面に道路があるということは、正面だけに道路があるよりも、それだけ土地の利用価値が高いということになります。2つ目の補正率である側方路線影響加算率が出てきます。これら2つの補正率を側方路線価(側方に道路がある場合の、1平方メートルあたりの土地の価額)に乗じます。この価額が側方路線価額をもとに算出した、側方の左右のうち、いづれかが道路に面している場合の、土地1平方メートルあたりの価額(側方路線価の修正額)となります。

ここまでをまとめてみます。

「側方路線価(側方が道路に面した土地1平方メートル当たりの価額)の修正額は、側方路線価(側方のうちの一方に道路がある場合ついての1平方メートルあたりの価額)に奥行にかかわる補正率(奥行価額補正率)と、側方に道路があることによる補正率(側方路線影響加算率)を側方路線価に乗じてを修正するということです。」

先ほど一旦横に置いておいた正面に道路がある場合の透明の紙に書いた図(正面路線価と土地の図のみ)と、今の図(側方に道路がある場合の側方路線価と土地だけが書かれた図)を重ね合わせます。すると参照の図のようになりますよね。つまり、正面路線価、側方路線価で修正した土地1平方メートルあたりの価額を合算し、合算額に土地の面積を乗じた価額が、参照図の公式の正面と側方に道路がある場合の自用地の価額となります。これに借地権などの修正を加えて、相続や贈与の土地の相続税評価額となります。

三方路線影響加算:三方向の道路がある土地

路線価 3面道路に面している場合

出典:https://www.nta.go.jp/taxanswer/hyoka/4604.htm

では、正面のほかに、裏も道路に面している土地の評価額はどうなるのでしょうか?裏に道路があるということは、それだけ土地の利用価値が正面と側面だけに道路がある場合よりも、さらに高くなるので、本来の路線価に裏の道路にかかわる補正率を加味して1平方メートルあたりの土地の価額を下げることができます。このとき路線価に乗じる補正率のことを、二方路線影響加算額といいます。

側面に道路がある場合と同じように、裏に道路がある場合も、裏の道路に垂直な距離は奥行とカウントされます。奥行にかかわる補正率(奥行価額補正率)、そして裏に道路があることによる土地の利用価値があがることへの補正率(二方路線影響加算額)の2つを裏面路線価に乗じて、裏面路線価の修正額(裏に道路がある場合にかかわる土地1平方メートル当たりの価額を補正率で修正した価額)を求めます。これに正面路線価の修正額(正面にかかわる土地1平方メートル当たりの価額を補正率で修正した価額)、側方路線価(側面にかかわる土地1平方メートルあたりの価額を補正率で修正した価額)と合算した路線価の価額に土地の面積を乗じれば、裏に道路がある場合の土地の自用地の価額(図参照)となります。

まとめ

いかがでしょうか?専門用語も多数出てきてしまい非常に複雑ですが、相続税や贈与税では路線価というもので、相続税評価額を算定します。土地についていくらで相続税や贈与税が課税されるのかなど迷ったときは、ぜひとも税理士や不動産鑑定士にご相談されることをおすすめします。

相続に強い弁護士

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相続相談弁護士ガイド 編集部

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