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【弁護士監修】【アナタの田舎も同じ?】意外と多い!昔からの慣習で長男が全ての遺産を相続?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2018年12月29日
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兄から相続放棄を迫られています

1ヶ月前に母が亡くなりました。父親は、20年程前に亡くなっています。母の葬儀の時まで優しかった兄から、最近になって相続の件で連絡があり「お前は嫁に行った者なのだから相続する権利はない」と、突然言い出しました。

兄は母親と同居しておりましたが、私は遠方に住んでいたため、母の面倒を看ることはできませんでした。その件についても厳しく叱責を受けています。

実家がある場所はまだまだ田舎であり、昔からの慣習で、長男が全てを相続するものだという考えが今でも根強く残っているようで、長女である私に、相続放棄をするよう迫ってきています。そのことを叔母に相談したところ、「私も同じように相続放棄をしたのだから、あなたも相続放棄するべきだ」と言われてしまう始末です。

この度亡くなった母の法定相続人は、兄と私だけです。

  1. 遺言書はありません。
  2. 兄は生前、母親から多額の援助を受けていました。
  3. 今後の法事の費用や固定資産税の支払いを求められています。
  4. 相続財産が幾らあるかわからないが、不動産については相続分を放棄しても構わないと思っている。しかしながら、預貯金については、きちんと分割してほしいと思っています。

このような状況ですが、私はどのようにしたらよいのでしょうか。このまま相続放棄をしなければならないのでしょうか。

相続放棄と遺産分割協議

相続放棄をするためには、相続の開始されたことを知った時から、3か月以内に、故人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄する旨の申立てをする必要があります。

相続放棄の申立てが家庭裁判所で正式に受理されれば、申立てを行った相続人は、相続開始の時に遡って相続人でなかった、という扱いになるのです。

ご相談内容からでは、上記のとおり家庭裁判所に相続放棄の申立てをすることを要求しているのか、若しくは、遺産分割協議を行った上でお兄様が全てを相続することで要求が満たされるのかは分かりませんが、いずれにしても、相続分の放棄をするか否かは、誰かが決められるものではなく、相続人であるご自身がお決めになることです。

お兄様の主張で納得ができるのであれば、相続開始から3か月以内に相続放棄の申立てをするのか、お兄様と話し合って、全てをお兄様に相続させる旨の遺産分割協議書を作成するのか、いずれかの方法でお兄様に単独で相続させることは可能です。

しかしながら、お兄様の主張にご本人が納得できなければ、お兄様と話し合う必要があるでしょう。当事者同士での話し合いで解決ができなければ、弁護士などに代理交渉を依頼したり、家庭裁判所での調停制度を利用したりするなどの方法で、解決を目指していくことになります。お兄様の一方的な主張だけでは、原則、相続の手続きを進めることはできないのです。

「遺産相続」と「家督相続」

明治31年7月16日に施行された旧民法では、「遺産相続」と「家督相続」の2つの形態を認めていました。

「遺産相続」が戸籍上の「戸主」以外の者の死亡によって開始し、子は男女を問わず共同して相続をする建前になっていたことに対し、「家督相続」は、戸籍上の「戸主」の死亡、隠居などによって開始し、兄弟が何人いようと、基本的には長男が家督相続人となり、家の財産をすべて受け継ぐということとなっていました。前戸主の身分や財産をすべて受け継いだ家督相続人は、家の財産を守り、一族の面倒をみる立場に立たされるため、戸主となる者はとても強い権限をもっていました。

その後は、相続の開始時期によって法律が異なっているのでご注意ください。

相続開始時期による法律の違い

昭和22年5月3日~昭和22年12月31日までの間に相続が発生した場合

昭和22年5月3日、日本国憲法の施行に伴い、旧民法が新憲法の精神に反することから、応急措置を講ずる目的で制定された「日本国憲法の施行に伴う民法の応急措置に関する法律(応急措置法)」によって、昭和22年5月3日から同年12月31日までの期間は、家督相続に関する規程は適用されず、法定相続分は以下のとおりとされました。

まず、配偶者は常に相続人となり、第1順位:直系卑属、第2順位:直系尊属、第3順位:兄弟姉妹、となります。

また、配偶者と各順位の相続人が共同で相続する場合は、

A 配偶者と子の場合     配偶者1/3、子2/3

B 配偶者と父母の場合    配偶者1/2、父母1/2

C 配偶者と兄弟姉妹の場合  配偶者2/3、兄弟姉妹1/3

※但し、兄弟姉妹には代襲相続は認められません。

と、なります。

昭和23年1月1日~昭和55年12月31日までの間に相続が発生した場合

昭和23年1月1日から昭和55年12月31日までの間に相続が発生した場合、昭和23年1月1日に施行された民法が適用されることとなり、法定相続分は以下のとおりとされました。

まず、配偶者は常に相続人となり、第1順位:子(昭和37年6月30日以前は「直系卑属」)、第2順位:直系尊属、第3順位:兄弟姉妹、となります。

また、配偶者と各順位の相続人が共同で相続する場合は、

A 配偶者と子の場合     配偶者1/3、子2/3

B 配偶者と父母の場合    配偶者1/2、父母1/2

C 配偶者と兄弟姉妹の場合  配偶者2/3、兄弟姉妹1/3

※兄弟姉妹の直系卑属も代襲相続人となることが認められ、且つ、制限は設けられていません。

と、なります。

昭和56年1月1日以降に発生した相続の場合

昭56年1月1日以降に相続が発生した場合は、昭和56年1月1日に施行された現行の民法が適用されます。法定相続分は以下のとおりとなります。

まず、配偶者は常に相続人となり、第1順位:子、第2順位:直系尊属、第3順位:兄弟姉妹、となります。

また、配偶者と各順位の相続人が共同で相続する場合は、

A 配偶者と子の場合     配偶者1/2、子1/2

B 配偶者と父母の場合    配偶者2/3、父母1/3

C 配偶者と兄弟姉妹の場合  配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

※兄弟姉妹の代襲相続については、一代限り認められる、とされました。

と、なります。

6 権利は主張しなければ実現することはできません

遺言書がなかったのであれば、法定相続人の2人で話し合いをした上で相続する割合を決めて遺産分割を行うか、法定相続分に基づいて遺産分割をすることになります。

嫁に行った者であるという理由のみで相続分の放棄を求められたのであれば、当然に、法定相続分を主張することが可能であり、お兄様と同等の権利を有していることとなります。

そこで、まずは、どれだけの相続財産があるのか確認するためにも、お兄様に財産目録(財産の内訳)を出してもらうことが先決です。故人がどのような財産を所有していたのか、負債はなかったのか、などを知ることから遺産分割協議は始まります。

その後、お母様の存命中に為されたお兄様への多額の援助の件や、お兄様が主張されている法事費用、不動産の固定資産税の支払いの件について、改めて権利を主張されればよいかと思われます。お兄様が、財産目録の開示をしないのであれば、一方的な要求に応じる必要はありません。

故人からお兄様へ何らかのかたちで援助がされていたのであれば、場合によってはそれが「特別受益(相続人間における不公平を是正し、平等を計るために設けられた制度。被相続人から、生前、あるいは遺言によって何らかの特別な財産を受け取った相続人のその財産も、相続開始時の相続財産に含めた形(みなし相続財産)で遺産を分割すること)」に該当し、相続財産への持ち戻しを主張できることもあるでしょうし、固定資産税の支払いについては、不動産を相続された方が負担することが一般的です。

いずれにしても、権利は主張しなければ実現することはできません。相手方からの申し出に納得ができないのであれば、きちんと資料の開示を求めた上で話し合い、その中でご自分の権利を主張することが肝心です。兄妹だからこそ、ご自分ではうまく話し合うことができないということであれば、是非とも弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、あなたの代理人として、相手方と交渉することができるのです。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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