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【弁護士監修】【経営者必見!】生命保険で事業承継対策するとき4つのポイント

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2019年05月13日
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2015年(平成27年)1月の相続税法改正を受けて、事実上の増税となり、生前に自身の相続について考え対策を打つ「生前贈与」が広がっています。生前贈与の代表的な方法が「生命保険の活用」です。この方法は、個人間の相続対策はもちろん、中小企業で臨んだ後継者に株式を移す際の有力な方法として、注目されています。

中小企業の事業承継と生命保険

中小企業を経営するAさん。長男のBさんと次男のCさんがいます。Aさんは長男Bさんに会社を継がせたいと考えています。この場合、Bさんが会社を継ぐのには、Aさんによる「次期社長はBだ」という後継者指名が重要。ただ、それ以上に重要視されるのが「Aさんが所有していた株式」です。この株式があると「株主総会」の場で、会社の意思決定を主導する(議決権を持つ)ことができます。この株式を、Bさんが51%以上持つ(過半数)ことにより、Bさんが社長として経営を担うことができるということです。

長男のBさんに過半数以上の株式を渡すためには、Cさんに同等分の「資産」を渡す必要があります。この資産をつくるため、生命保険が役に立つのです。この場合の「生命保険の活用」について考えてみましょう。

Aさんを生命保険の被保険者として、Aさんが亡くなった時に備え現預金を準備します。保険金支払者は会社とすることで、保険料は「損金扱い」となり、会社の会計上においてもメリットが発生します。

法人の生命保険料は損金になる

損金とは

会社に対しての税金である「法人税」を算出する際の費用のことです。実際の会計上会社にかかったお金のなかでも、法人税としては「費用として認められない」ものがあります。これを専門的な言葉で「損金不算入」といい、一方で認められるお金を「損金算入」といいます。

会社の支払う生命保険料は、この損金に全額を算入することができます。これにより、生命保険料は法人としての費用になり、法人税の課税対象額を圧縮することができます。個人会計の、収益と費用の関係を、法人に当てはめたものと考えてください。

そして、Aさんが亡くなった時、Bさんには株式を、Cさんには株式の代わりに、生命保険金により会社に入った現預金を譲渡する、という仕組みが成り立つのですね。

自社株対策ってそんなに重要?

中小企業の経営者に対し、この自社株の話をすると、概ね返ってくる反応が、「そういっても(自社の)株がそんなに高いわけがない」という反応です。証券取引所に上場したあとの公開株ならともかくと、自社の(非公開)株の値段を気にしていない経営者もたくさんいます。

非公開株は基本的に売買されるものではないため、リアルタイムで株価を知っておく必要はありません。ただ、株価を低く見積もっていて、相続の際に計算してみると、驚くような算定額だった、という話も多く聞きます。長年にわたって好業績を続けていると、増大した内部留保(会計上、会社が所有しているお金)や不動産の価値によって含み益が生まれ、額面の100倍以上の自社株評価になるケースもあるようです。

それでは、自社株の評価はどのようにして算出するのでしょうか。自社株の評価は、「税理士」に依頼して算出することができます。計算方法は複雑なため、詳しくは割愛しますが、「類似業種から」「純資産から」そして「配当額から」算出する方法がとられます。

生命保険金は全額貰えるわけではない

「生命保険は死亡後に受け取るものだから、相続資産にならないだろう」というのは誤解です。生命保険は「みなし相続財産」といい、ほかの相続財産と合算したうえで、受け取る相続人には相続税が加算されます。

ただ、ここで重要なのが「生命保険の非課税枠」です。死亡保険金は遺族の生活費としての考慮がなされ、すべてについて相続税はかからず、非課税限度額が設定されています。

非課税限度額 = 500万円×法定相続人の数

法定相続人とは、その相続において、財産を引き継ぐ相続人のことです。この法定相続人が何人いるかによって、生命保険の非課税枠は変わります。たとえば、法定相続人が3名の場合、非課税枠は500万円×3=1,500万円となります。この金額までの生命保険金は課税対象となりません。

まとめ

ここまで、生命保険で事業承継するときの4つのポイントをお伝えしました。生命保険は個人の保障として大きなツールになる一方で、このように法人の事業承継においても代表的な方法となっています。

もちろん、この場合「どのような生命保険でもいい」というわけではありません。保障内容が家族に合っているのか。株を渡す相続人と、現金を渡す相続人は一時の感情ではなく、総合的に決めたものなのか。専門家である税理士には、自社株の評価という手続きのみを依頼するのではなく、客観的に生命保険を活用した事業承継の全体像を見て貰うことが、最大のポイントといえるのではないでしょうか。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

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