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【弁護士監修】贈与税の配偶者控除の特例を活用して財産を妻に渡したい!その条件とは?

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弁護士 古閑 孝 アドニス法律事務所

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更新日:2018年12月29日
贈与税の配偶者控除の特例を活用して財産を妻に渡したい!その条件とは?のアイキャッチ

配偶者(奥さん)に財産を渡したい(贈与したい)ケース

私には、結婚して25年になる妻がいますが、既に子供も親元を離れて、現在2人暮らしです。定年を間近に控え、私は長年の夢であった海外移住を考えていますが、妻は猛反対で、離婚の話まで出ています。私は夢を諦めきれない事から、しばらくの間妻と別居して海外でのボランティア活動をし、残りの人生を謳歌しようと思っています。

私の好き勝手にさせてもらうこともあり、また、これまでの妻への感謝の気持ちをとして私の財産の一部を贈与したいと考えています。

しかし、贈与となればそれなりに税金が課せられてしまうことを懸念しており、長い間考えあぐねていましたが、「配偶者控除」という制度があることを知りました。もし、この制度が利用できるのであれば、余計な税金を支払わずとも妻に財産を譲り渡すことができます。

私の場合、この制度を活用することができるのでしょうか。

因みに私の資産は、自宅不動産が約2800万円、貯金が1500万円、退職金の見込み額が1800万円の計6100万円です。

では、まず簡単に贈与について簡単に説明していきます。

「贈与税」とは

そもそも贈与税とは、「個人」から財産を譲り受けたときにかかる税金です会社や法人から財産を譲り受けたときは、贈与税ではなく、所得税が課せられることになります。

他には、生命保険などの契約者が自分以外の者、つまり自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合にも、贈与を受けたとみなされて贈与税が課せられることになります。

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2通りがありますが、一定の要件を満たす場合にのみ「相続時精算課税」を選択することができます。

「暦年課税」とは

原則、贈与税とは、一個人が、その年の1月1日から12月31日までの1年間に譲渡された財産の合計額から、基礎控除とされる110万円を差し引いた残りの金額に対して課せられる税金です。つまり、1年間に譲渡された財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は課せられず、申告も不要となります。

「相続時精算課税」とは

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人となる子または孫に対して財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。贈与者である父母または祖父母は、贈与をした年の1月1日の時点で60歳以上であることを要し、同様に、受遺者である子または孫は、贈与を受けた年の1月1日の時点で20歳以上で、且つ、推定相続人でなければなりません。

この制度を選択しようとする受贈者は、その選択をした最初の贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、「相続時精算課税選択届出書」を、受贈者の戸籍謄本など一定の書類とともに、贈与税の申告書に添付して提出しなければなりません。

この制度は、受贈者(子や孫)が贈与者(父母や祖父母)ごとに選択することができますが、一旦この制度を選択すると、その贈与者から贈与を受ける財産については、亡くなる時まで継続して適用されることとなり、暦年課税へ変更することができない点に注意が必要です。

相続時精算課税制度を利用した場合の税額の計算方法

贈与税額の計算

相続時精算課税制度の適用を受ける贈与については、その選択をした年以後、その制度の適用にかかる贈与者以外の者からの贈与分とは区別して1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。

贈与財産の価額の合計額から、特別控除額(限度額2500万円。複数年にわたり利用できます)を控除した後の金額に対して、一律で20%の税率が課せられます。この計算の際には、暦年課税の基礎控除110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があるので注意が必要です。また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。

なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、その制度の適用にかかる贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、暦年贈与と同様に、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除した残りの金額に対して贈与税の税率を適用して計算することとなります。

相続税額の計算

相続時精算課税にかかる贈与者が亡くなった場合、その制度の適用を受ける受贈者にかかる相続税額については、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と、相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に支払った相続時精算課税にかかる贈与税相当額を控除して算出します。

なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。

夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除について

次で述べる条件を満たしている場合に、居住用の不動産または居住用の不動産を取得するための金銭の贈与があった場合に、贈与税の基礎控除110万円の他に、最高2000万円まで控除できるという特例です。つまり、下記の条件を満たした贈与であれば、合計2110万円までは贈与税が非課税となるのです。

配偶者控除を受けるための要件

  1. 夫婦の婚姻期間が20年を経過した後に行われた贈与でなければなりません。

    内縁関係は婚姻と認められないことから、この条件には当てはまりません。
  2. 贈与される不動産は自分で住む為の不動産であること。また、住む為の不動産を購入する金銭であることに限ります。
  3. 贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与によって取得した不動産、または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産(いずれも日本国内に限る)に、受贈者が現実に住んでいて、そしてこれからも住み続ける予定であること。
  4. 配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
  5. たとえ、一度の配偶者控除の金額が2110万円以下であるからといって、残りの金額分まで再度控除することは認められていません。配偶者控除の制度は、控除額ではなく一度だけという規定のもと適用されています。当然、同一人物と離婚、再婚を繰り返した場合の配偶者特別は法律で禁じられています。しかし、別の相手と再婚した場合には、上記の要件に当てはまれば再度の配偶者控除を受けることは可能です。

相続開始前の3年以内の贈与について

親子間でも財産についての話をすることには遠慮する風潮もあり、言い出せないまま、なんの対策もしなかった為に、莫大な相続税を支払うことになったり、その相続税を支払う為に、大切な財産を手放したりすることも少なくありません。

誰しも、少しでも支払う税金は低く抑えたいと考えています。

そのため、思い立って慌てて贈与を行う人も少なくないようです。

しかしながら、そのようないわゆる「駆け込み贈与」についても、相続税の加算対象とされてしまう場合があるのです。

相続によって財産を取得した人が、被相続人からその相続が開始される3年以内(亡くなった日から遡った3年前の日から亡くなった日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、原則、その生前贈与を受けていた相続人の相続税の課税価額に、贈与を受けた財産が贈与されたときの価額を加算して計算することとなります。

3年以内であれば、贈与税か課税されていたかどうかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算されます。

その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。つまり、既に贈与を受けた際に支払った贈与税は、相続税から差し引く事ができるため、二重に税金を納める必要はないということです。

税金の仕組みは実に上手くできているので、まずは無理なく、相続について話し合いのできる、円満な人間関係を築くことが何よりの節税対策であると考えても過言ではありません。

また、残念ながら病気や思わぬ災害や事故で死亡した場合、決して「駆け込み贈与」でなくとも、あくまでも相続開始前の3年以内の贈与に該当している場合には、例外なく相続財産と見なされるため、税金の見直しが必要となります。

ただし、贈与税の配偶者控除については、相続開始前の3年以内の贈与という規定から除外されているので、既に贈与済みの財産については例え3年以内であっても相続税の対象とはならず、よって新たな税金が課せられる心配はありません。

なお、配偶者控除の特例を受ける際は、戸籍謄本、不動産登記簿謄本、住民票などの書類を税務署に添付することが義務付けられています。その点については、手続きを行う際によく確認して下さい。

8.まとめ

今回のご相談者のケースで、贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、現在お住まいの不動産を贈与するか、奥様が新たに居住用の不動産を購入するための資金としての金銭の贈与のいずれかになると思われます。

仮に、自宅不動産を贈与した場合は、不動産の価額2800万円から、贈与税の基礎控除110万円と配偶者控除の最高額2000万円の合計2110万円が控除され、残りの690万円に対して贈与税が課税されることになります。

一方で、居住用の不動産を購入するための資金としての金銭の贈与については、2110万円の控除額合計を鑑みて贈与を行うことも可能です。

ただし、不動産の贈与にしても購入にしても、所有権移転登記が必要となり、この登記をする際には登録免許税がかかるだけでなく、その後は不動産取得税等も必要であることを計算に入れて、計画的な配偶者控除の手続きを行って下さい。

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古閑 孝 (弁護士)アドニス法律事務所

相続は、どなたにも身近で起きる出来事です、しかし、感情で揉めてしまったり話し合いで解決出来ないことも少なくありません。 相続時には色々なトラブル・悩みが発生するものです、私の40年間という弁護士経験のを元に事例や状況に沿って対処法を電話でも解説可能...

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