長男の遺産の使い込みに関して

長男の方が被相続人の預金の管理者であり、相続発生後に多額の引き出しがなされたという前提で以下検討します。

１．刑事罰の可能性ですが、現時点（H28.12.10現在）の最高裁判例では、預金は法定相続分に応じた当然分割され、自己の法定相続分相当額について払戻請求権を有しますが（近々最高裁判例の変更の可能性がありますが）、通常は名義人死亡時には預金は凍結されるため、法定相続分超過分については、他の相続人から個別の委託がない限り払戻権限はないでしょう。
そうすると、金融機関との関係で、（１）ATMでの引出の場合は窃盗罪、（２）窓口での引出の場合は詐欺罪が成立する可能性があります。
ただ、この場合直接の被害者は金融機関であるところ、基本的には遺産分割の問題として、被害届の提出には慎重になるのではないかと思います。また、被害届を提出した場合であっても、捜査機関は「民事不介入の原則」により立件には慎重になるものと思われます。

２．長男の使途の調査については、（１）長男が預金の管理者であれば、まずは引出した金員の使途について説明を求めるべきでしょう。
説明内容が「怪しいが決定的証拠がない」場合には、（２）相続発生後、自動車や宝石、絵画等の高価品を沢山購入した形跡はないか、（３）キャバクラや競馬・パチンコ等に頻繁に行っている形跡はないか、等、長男の「金回りがよくなった」ことを立証する方法があります。
ただ、（２）についてはそのような証拠を残していない可能性がありますし、（３）については「多少は行ったが多額の費消はしていない」とか「ギャンブルは行なったが、ある程度勝っている」等の弁解が考えられます。
訴訟等の法的手続を行なう場合には、「長男が正当な理由なく費消したこと」まで立証する必要があるため、何らかの形で金員の流れを立証する必要があります。